第309回 働かない日本人の未来

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第309回「働かない日本人の未来」


安田

中国の自動車メーカーではエンジニアが毎日14時間働いるそうです。土曜出勤は当然で日曜出勤も多いとか。

久野

70時間から100時間は残業してるって書いてありますね。

安田

トヨタは20時間以下らしいですが。これ大丈夫なんでしょうか?生産性が低い割に日本人は休み過ぎでしょうか。

久野

昔は「エコノミックアニマルだ」「働きすぎだ」って言われてましたけど。今や先進国の中でも日本の労働時間はかなり短いですね。

安田

生産性が低い上に労働時間も短い。「貧乏になっていくのは当然だ」なんて言われてます。

久野

確かにそういう部分はあると思います。労働時間が短くて、その分稼げない国になってる。

安田

労働時間はスキルアップに比例すると思いますか?

久野

残念ながら比例するでしょうね。

安田

ということはこの先益々生産性が下がっていくと。

久野

単純作業だけをやっているとそうなっていきます。クリエイティブなことを1.5時間やった人と1時間の人だったら、2年後に1.5倍ぐらいの能力差がつきます。

安田

休みの日にメールを送るだけでもダメって言われる時代じゃないですか。月曜日の飛行機の手配を週末にメールで頼んでおくことすら憚られる。

久野

繋がらない権利というのがヨーロッパで流行ってるんですけど。日本もヨーロッパ型の労働環境を取り入れて「権利が侵害されてるんじゃないか」という論調の人が増えてます。

安田

そこまでやらないとパワハラとかブラックとか言われちゃうわけですね。

久野

そういう傾向ですね。

安田

会社としては「決められた業務を時間内に」ちゃんとやってくれれば問題ないと思うんですが。本人のスキルアップ的にそれでいいんでしょうか?

久野

会社で仕事してるだけで身に付くスキルって限界ありますからね。海外では休みの日でも勉強してますけど日本人はやらないから。

安田

なぜ日本人はやらないんですか。こんなに勤勉な民族なのに。

久野

いや、私が教えてほしいですよ(笑)なんでやらないのか。

安田

そういう習慣が身についてないんでしょうね。

久野

やらされ文化がすごいんですよ。日本だけらしいですよ、会社がここまで教育しなきゃいけないのは。

安田

自分の収入がかかってるんだから、自分でスキルアップすりゃいいのに。

久野

大学の違いが大きいと思います。海外では大学でちゃんと力をつけて「働ける状態」で会社に入ってくるじゃないですか。

安田

そのための大学ですからね。

久野

だけど日本では「できません」って状態で入ってくる。できるようになってから入ってこようって人と、会社ができるようにしてくださいっていう日本人と。スタートがぜんぜん違う。

安田

大卒というだけで高い初任給をもらえちゃいますから。

久野

半年ぐらい研修しても「研修が足りないんだ」とか言われて。どこまで甘やかしたらいいのか。

安田

時間外に研修させるとブラックと言われるし。日本の生産性が下がっていくのも当然と言えば当然ですね。

久野

経営者はもっとAIに投資して「能力のない人は使わない」って決めないと。

安田

AIはどんどん勉強して進化してます。保険の営業なんてもう逆転してるそうです。人間よりAIの方が成績がいいんですって。AI相手だと本音で話ができるし。人間相手にリアルな相談ってしにくいらしいんですよ。

久野

確かに。しかも夜中でもいつでも受けられるじゃないですか。24時間。

安田

そうなんですよ。人間は夜中に仕事をさせられないし、頑張りすぎると鬱になったりする。でもAIは病まないから。気づいたら人間よりも売ってる。

久野

どんどん置き換わっていきますよ。最近はメールで送る文章をAIが書いてたりするし。

安田

働く時間が減って余暇は確実に増えてるわけですが、お金がないと余暇も楽しめないですよね。「余暇を利用してスキルアップする」なんて人は増えないでしょうし。

久野

あまり聞いたことないですね。やっててほしいなと思いますけど。

安田

給料を増やしてほしいという割にスキルアップする気はないっていう。考えてみたらすごいことですよね。同じスキルのまま給料だけ上げてほしいってことですもんね。

久野

実際に人不足で上がっちゃってるから問題ですよ。

安田

そうか。実際上がっちゃってますからね。

久野

転職するだけで上がっちゃってるので。能力アップと勘違いしちゃいますよ。

安田

ますます能力が伸びなくなっていきそうですね。

久野

能力開発を頑張るよりも、転職活動を頑張った方が給与が上がるんです。

安田

人件費だけが増えていって。「もう人間はいいや」ってなっちゃうかも。

久野

二極化していくと思います。本当に能力が高い人だけ残って、それ以外はAIに取って代わられる。社長も例外ではない気がします。

安田

AIが社長を務める会社ですか?それって社員はどう思うんでしょう。

久野

AI社長の会社に就職する人が増えたりして。

安田

あり得ますね(笑)

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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