第318回 年収ピークが35歳になる時代

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第318回「年収ピークが35歳になる時代」


安田

初任給30万円が続々です。

久野

ほんとですよ。

安田

余裕がある会社は35万まで折り込み済みでしょうね。

久野

大手は40万でも全然いけちゃうでしょう。

安田

これ、いくらまで上がると思いますか?

久野

2年後には35万がスタンダードになると思います。

安田

上昇率がすごいですね。

久野

東証プライム企業はすでに33〜35万が当たり前になってます。恐ろしいです。

安田

初任給が上がりすぎて上の世代との逆転現象が起きてるみたいです。

久野

逆転現象が起こると既存の社員が辞めちゃいます。上げるなら全部上げるしかない。

安田

全部は上げないんじゃないですか。たとえば入社3年目と新卒が逆転したらまずいと思うんですよ。3年目が辞めちゃうので。

久野

そうですね。

安田

だから20代の引き上げは必須だと思います。でも全社員をベースアップさせるわけにはいかない。元々赤字の人もいますから。上がるのは30代半ばまでじゃないですか。

久野

30後半からは実力だよって話ですよね。

安田

そんな感じです。一律に上がるのは30代半ばまで。それ以降は上がる人は上がるけど、上がらない人もいる。

久野

なんなら下がる人も出てくるでしょうね。

安田

出てくると思います。

久野

現場を見ていてもそういう感じです。上の方は極めて実力戦に近い形になっている。力がない40代は全く上げる気がないですね。

安田

上げる気もないし「嫌なら辞めてくれてもいいよ」って感じじゃないですか。

久野

言葉にはしませんけど内心はそんな感じでしょうね。そこを抑えて20代の報酬を手厚くしているので。

安田

「言われたことを言われた通りしっかりやる」というだけで、給料が上がるのは30代半ばまでですよ。もしかしたら20代で終わりという会社も出てくるかも。

久野

そうですね。20代は転職しただけで上がっていきますけど。それがずっと続くわけじゃないってことです。

安田

大企業の年功序列報酬って55歳ぐらいがピークだったじゃないですか。役職定年とかもあって。

久野

そんな感じです。

安田

そのピークが35〜40歳になる気がします。もちろんスキルアップし続ける人は40以降も実力に応じて上がっていくでしょうけど。全員右肩上がりは30代半ばまで。

久野

現場はもう既にそんな感じですよ。私も氷河期世代なんですけど、この世代は大変ですよ。

安田

氷河期世代はちょっと不運ですよね。就職する時も大変だったのに今また大きな波が来ていて。ちょうど上がるタイミングなのに上がらなくなってる。

久野

もう割り切って考えるほかないですよ。会社も「不景気な時に作った方がいい」って言われるじゃないですか。長期的に見るとその方が安定するから。

安田

確かに不運ではありますけどね。40〜50代って、20代で抑えられていた分が遅れて支払われてきたわけで。

久野

そうなんですよ。20代で抑えられてきた氷河期世代がここにきて上がらなくなっていて。

安田

「40代からは実力主義だ」とか突然言われても困っちゃうと。

久野

突然ルールが変わっちゃったわけですから。

安田

稼ぎたいんだったら「自分でスキルを身につけてね」ってことですよ。

久野

若い世代もそこは気を付けなきゃいけないです。今は転職するだけで給料上がってるから、勘違いしないようにしなきゃいけない。

安田

彼らは分かっているんじゃないですか。今の20代って50年ローンで家を買いますから。

久野

75歳ぐらいまで働くのが前提なんでしょうね。しかも共働きで。

安田

仮に給料が上がらなくても払えるようにしてるんですよ。

久野

そうか。

安田

いずれにしても、これまでのような低賃金では20代人材は採用できないってことです。

久野

そうでしょうね。今までみたいに若い子を安く使うことはもう無理でしょう。

安田

20代にこだわるなら中小企業も年収500万円くらいは払わないと。

久野

中小企業はもっと上げないと採れないでしょう。年収1000万ぐらい出して本当に使える人材だけを採っていかないと。

安田

自社のビジネスモデルにマッチした人材だけを採るべきだと思います。数合わせの採用はもう終わりにしないと。

久野

雇わない株式会社の時代ですね。業務委託を活用して外に出せる仕事はどんどん出していかないと。

安田

付加価値を上げられる部署以外は全部外に出した方がいいです。総務、経理、人事は全部いらない。企画や営業もいらなくなるかも。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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