第331回 会社は育休とどう向き合うのか

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第331回「会社は育休とどう向き合うのか」


安田

育児を理由に退職を検討した人が4割いるそうです。

久野

まだまだ多いですね。

安田

正直私はもっと多いと思っていました。見方を変えれば「育児しながら働き続けたい」という人の方が多いってことですよね。

久野

現実問題として働かざるを得ないというのもあると思います。

安田

妻が正社員として働くことを希望する男性は7割もいるそうです。これは20〜40代の平均値ですから、20代に限ればもっと多いと思います。

久野

ほぼ全員じゃないですか。男女ともに働かないともう成り立たないってことですよ。

安田

経済的に成り立つとしても、そっちの方が健全な気がします。1本足で家庭を支えるって不安すぎますよ。何があるか分かりませんし。

久野

女性もキャリアを積めなかったら将来的に不安になりますし。

安田

経済力がないという理由で離婚したくても出来なかったり。

久野

そういうケースも当然出てきますよね。

安田

ワンオペってほんと大変ですもん。奥さんの実家が近くにあればまだマシですけど。

久野

今は男女共に子育てしやすい会社を選ぶ傾向ですね。男性の育休取得率はまだ低いですけど高くしていかないと定着してくれない。

安田

海外ではそれが当たり前ですから。

久野

大谷選手でも休んでいましたからね。

安田

公式戦を休むってすごいですよね。

久野

会社で言えば大きな商談の日に休むみたいなもんですよ。3億の商談あるけど「明日休みます」みたいな。

安田

海外はその優先順位が明確ですね。日本男性は子育てを「義務」だと感じていますが、欧米の人は「父親の権利」だと思っているそうです。

久野

根本が違いますね。

安田

出産に立ち会う権利を「俺から奪うな」ってことだと思います。

久野

土日に子育てをやって「頑張ったぜ」みたいなのは最低なわけですね。

安田

「やらなくちゃいけない」という発想なんでしょう。

久野

日本人男性はまだまだってことですね。

安田

今変わりつつあるんじゃないですか。20代男子って中性化しているイメージなので。

久野

中性化ですか?

安田

中学生ぐらいから脱毛とか考えるんですって。

久野

それは女子ではなく?

安田

女子が脱毛するのはもう当たり前で。男子も全身脱毛するそうです。脱毛していないと女子から気持ち悪がられたりして。

久野

すごいですね。

安田

だんだん中性化している気がします。「男が働いて女が家庭を守る」なんて時代にはもう戻らない。

久野

今が過渡期なんでしょうね。昭和の人たちが管理職をやって平成・令和の人が働いて。

安田

共働きを前提とした職場にしないと20代が定着しないです。奥さんに重要な仕事がある日は旦那が休めるとか。

久野

そうなったら凄いですけど。男性育休すら少ないのが現状ですから。育休を取ろうとすると「お前が産んだわけじゃないだろ」って社長が言っちゃったり。

安田

男性に限ると育休3ヶ月未満が7割だそうです。3ヶ月以上休みを取る人は3割もいない。

久野

いないでしょうね。取っても2週間ですよ。

安田

いずれは男性も3ヶ月以上休むのが普通になるんでしょうか。

久野

中小企業では難しいと思います。大谷さんだって3ヶ月も休んだらレギュラーから外されますよ。

安田

中小企業でも女性は年単位で休むじゃないですか。

久野

そうですね。女性は3年とか休めますね。

安田

だけど3年休むとキャリアが中断しちゃう。夫婦で交代交代に3ヶ月ずつ休むとか。

久野

その方が健全ですよね。

安田

共働きを決めている人たちには、そういう会社が人気になっていきますよ。

久野

でも現実的に考えて中小企業は難しいと思います。余分な人員が居ませんから。

安田

それくらいやらないと20代はもう採用できないですよ。実際、子育て時期に転職しちゃう男性がめちゃくちゃ増えているので。

久野

そういう時代なんでしょうね。中小企業は大変ですよ。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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