7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
前回は 第48回「社員教育は有料化する」
第49回「徳政令「ごめん!」は出るのか」
いま、再雇用制度があるじゃないですか。
はい。大手はだいたいありますね。
60歳定年だったけど、65歳までは雇い続けろと。で、いずれこれが70ぐらいになってくる。
間違いなく、なるでしょうね。
つまり年金が支給される年齢がどんどん上がっていくと。
その通り。「企業がなんとか面倒見ろよ」ってことですね。
一方で企業側は「もう終身雇用は無理だ」って言ってるじゃないですか。
はい。もうはっきり、そう言ってます。
すごく矛盾しているように見えるんですけど。これは成立するんですか?
無理でしょうね。
ですよね。
無理です、無理です(笑)
たとえば50歳で「できない人は出ていってね」となった時に、50歳で年金なんか絶対に出ないですよね。
安田さん、そもそも年金が出ると思います?
出なくはないんじゃないですか。
じゃあ安田さん、何歳で年金が出ると思います?
65歳で出るんじゃないかなと。期待してますけど。
現状65じゃ出ないでしょ。70過ぎてからでしょう?いま72ぐらいでしょう?
金額は減りますけど、一応もらえるじゃないですか。
すごく少ないですよ。ラーメンも食えないかもしれない(笑)
ですよね。だから70まで待とうかなと思ってます。けど、待ってるうちに死んじゃいそうです。
僕はもらえないと思ってますよ。僕の世代はみんな「年金もらうの無理だよね」って言ってます。
でも、結構な金額を払ってますよね。
しょうがないじゃないですか(笑)。どっかで徳政令ならぬ「ごめん!」っていうのが来ると思います。
来ますかねえ。解雇規制が緩和されたとしても、さすがに「年金ごめん」はないと思うんですけど。あり得ますか?
いやぁ、あり得るでしょう。
でも「年金ごめん」って言っちゃった時点で、現役世代が払わなくなりますよね。
払わんでしょうね。
そうすると、上のほうの面倒を見れないじゃないですか。
だから、税金が上がるでしょうね。
まだ上がるんですか?
「年金払う分、間接税払ってね」って、消費税が上がると思います。
生きていけますかね。それで。
そこは真剣に考えないようにしてます。この国の将来が不安になるので。
でも石塚さんは、年金なんてなくたって余裕で生活できるじゃないですか。
いやいや(笑)。でも「自分のことは自分でなんとかしよう」って思ってますよ。
やっぱり最後は「自己責任で」ってなるんでしょうか?
だって国が全部面倒見るんですか?そんなの無理でしょって話ですよ。
私は、国が面倒を見ざるを得ないだろうと思ってます。ただ「財源をどうするのか」が問題。
まさにそこですよ。どうするんですか。
耐えるんです。
耐える?
どうやって?
そりゃあ、借金ですよ。
さらに増やすんですか?借金を。
増えるんですけど、死んじゃった人たちのタンス預金がありますから。
それで穴埋めすると。
はい。相続税を100%にして穴埋めする。何しろ高齢者はお金持ちですから。
まあ、ひとつ言えるのは、歴史が始まって以来、遭遇したことのない壁にぶち当たるってこと。
ですよね。人類史上初めての壁。老人だらけの国。
でも、そういうことでもない限り、大きな変化って起きないですからね。
社会の仕組みが劇的に変わるかもしれませんね。
間違いないです。トヨタが「終身雇用無理」って言い出す時代ですよ。
ちなみにトヨタと“日本株式会社”では、どっちのほうがしんどいんですか?いま。
日本株式会社のほうがしんどいでしょうね。
ということは、トヨタが倒れる前に、日本が倒れちゃう?
トヨタは結局商人だから、「本店所在地移す」っていったら、それで終わりですよ。
危なくなったら日本から出ていくと。
LIXILだって、本社をシンガポールに移すって言ってるじゃないですか。
どんどん財源が減っていきますね。
だから、どう考えても年金は出ませんよ。
「ごめん!出せないわ」となる?
事実上そうなる。
事実上?
僕、役人の考えそうなことって、だいたい分かるんですよ。
どうしますか。役人は?
「いやいや、払わないなんて言ってないよ。85から払います」とか。
ひどい。
「べつに法的には問題ないでしょう?」って。
払わないとは言わないけど、事実上払わないと。
「70代でも取れるけど、そのかわり、ものすごい安いよ」って。
「10分の1になるよ」みたいな。
そう。
ひどい国ですね。
いろんな手を使って「なんとかフレームを維持していこう」っていうのが役人の考えること。
じゃあ80歳までは自力で生きていくしかないと。
そういうことです。
どういうやり方があるんですか?サラリーマンにアドバイスするとしたら。
ないですよ、そんなの(笑)
え、ないんですか!?
無理でしょう、そんなの。僕は、早い段階で手に職をつけることをお勧めします。
やっぱり最後はそこですか。手に職。
「給料くれ」とか言わずに2年だったら2年、本当にゼロイチで食える職業のトレーニングをする。覚悟と体力さえあれば何歳からでもいけますよ。
たとえば?
給湯器の取り付けとか。
そんなので一生食えるんですか?
安田さん何言ってるんですか。そういう職業が一番手堅く食えるんですよ。
どのぐらいですか?年収400万ぐらいはいける?
500~600万は余裕です。稼ごうと思えばもっと稼げます。
もっといくんですか!?
もっといく。工事詰めれば1000万円でも。
じゃあ大学出てても、そういう職人になる道もあるってことですね。
もうすでに出始めてますよ。
出始めてますか?
職人になってガンガン稼ぐ人が出始めてます。これ、すごくいい傾向なんですよ。
切り替えられない人が多そうですけど。
日本人は江戸時代をもっと学ぶべき。自分の職能っていうか、要するに食うために腕を磨くっていう。それが営業だったら営業でいいし。
営業でもいいんですか?それも職人?
もちろん。いちばん良くないのは「株式会社〇〇の何々です」みたいな。こうなるとだめ。所属してることにはもはや意味がない。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。