さよなら採用ビジネス 第107回「なくなる採用・生まれる採用」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第106回『飲食の境目はどこにある』

 第107回「なくなる採用・生まれる採用」 


安田

久しぶりに採用の話をしたいんですけど。

石塚

はい。いいですよ。

安田

中小企業の採用現場は80〜90%止まってるらしいですね。石塚さんの実感としてはどうですか?

石塚

もうちょっと少ないんじゃないですかね。どこまで含めるのかによりますけど。

安田

どこまで含めるか?

石塚

冷静に仕分けしなきゃいけないのは、本当にコロナが影響してるのか、それとも単なる様子見の中断なのか。

安田

一時的な様子見だということですか?

石塚

急激に業績悪化した会社があるのは事実です。たとえば自動車依存が強い業界とか。あとBtoCとか。だけど安田さんもよくご存じのとおり、中小企業さんって様子見するじゃないですか。

安田

しますね。周りの流れに合わせる経営者がほとんどですから。

石塚

いい意味でも悪い意味でも慎重だから。「ちょっと世間的にまずいな」と思うと何でも止めてしまう。広告も、採用も、新規開拓も、新規事業も。いったん見合わせちゃう。

安田

そんな感じですね。

石塚

横並び感があるんですよ。

安田

でも、それやっちゃうと絶対に勝てないですよね。他社に。

石塚

そうなんですよ。それも含めて8割ってとこじゃないですか。

安田

じゃあ2割は逆張りしてる経営者ですか。

石塚

逆張りというか、ぜんぜん影響受けてない会社はむしろチャンスなので。

安田

だけど、まだコロナの収束も見えないですよ。

石塚

「うち、ぜんぜん関係ないんだよね」って会社は結構強気です。

安田

業績が伸びてる会社もありますからね。とはいえ経済全体がシュリンクしてくると、必ずどっかで影響受けるわけじゃないですか。

石塚

長期的には。

安田

「いま、うちは伸びてるから」って理由で、どんどん人を採用するって怖いですよ。

石塚

言い方は悪いけど、僕はどんどんけしかけてます。本当にチャンスなので。業績やビジネスモデルにあまり影響しないのであれば、いい人材を採って攻めるべき。

安田

逆張りするならチャンスですけどね。他の会社は採らないでしょうから。

石塚

はい。ひとり勝ちできるチャンスです。

安田

もちろん先が見えない恐怖はあるんでしょうけど。

石塚

会社がつぶれない程度にお金があるのなら、考えるべき戦略ではあります。

安田

そういえば福岡の高級クラブのママさんがニュースに出てました。「夜の街は必ず復活する」「だからこのチャンスに人気ホステスを採りまくる」って。

石塚

強気な方ですね。でもそういう人が成功するんですよ。

安田

確かに。長い目で見たらそういう人が勝つんでしょうね。いい人材っていつでも採れるわけじゃないから。

石塚

「自然は真空を嫌う」という有名な格言があります。絶対にゼロにはならないんですよ。どの業界・職種でも。外食業もそう。絶対ゼロにはならない。

安田

確かに。ゼロにはならないですよね。

石塚

ゼロにはならないけどプレーヤーは減る。ということは、残った人間には「福がある」ということ。つまり残存者利益が集中するわけです。

安田

なるほど。

石塚

そこを取りにいくのであれば、こんなに絶好の機会はないわけです。100軒あったクラブが5軒ぐらいになるかもしれないけど、残った5軒は間違いなく勝ち組。

安田

そうですよね。他の店に行ってたお客さんがみんな来るわけですから。

石塚

総取りできたりするわけじゃないですか。100分の5って、これ、おいしいですよ。

安田

人気のホステスさんには優良顧客もついてますし。いまのうちに口説いて、休みの間も給料をちょっと払っとけば、休み明けに一気にお客さんを連れてきてくれるかもしれない。

石塚

おっしゃるとおりですね。人間って調子のいいときに近づいても仲よくなれない。けど、不遇のときや傷ついてるときにしっかりつながると短期間で絆ができます。

安田

いままで動かなかった優秀な人材が、これを機に動く可能性もあると。

石塚

そうなんですよ。安泰と言われてた会社で本線を行ってる人が、根本的な構造変化によって動かざるを得なくなるとか。そういうケースは少なくないと思う。

安田

なるほど。

石塚

もうヘッドハンターはやめましたけど、今やってたら相当忙しいはず。毎日メールやLINEを入れてると思います。

安田

リモートワークとかやっちゃうと、環境が変わって「何かちょっと新しいことやるか」みたいになりやすいですし。

石塚

安田さんは今すごく忙しいでしょう?

安田

相談はいっぱい来ますね。

石塚

いや、そうだと思いますよ。経営者も考える時間ができたから。

安田

「何か新しいことをやりたい」って経営者が増えました。

石塚

二極化するんじゃないですか。ジリ貧なところは残念ながらクローズせざるをえないけど。余裕があれば新しいことをやってチャンスに変えられる。

安田

コロナが終わっても元に戻るってことはないでしょうから。

石塚

マーケットは100には戻らない。ただその分、まったく新しい何かが出てくるでしょうね。コロナ前にはなかった新しい業態みたいなのが。

安田

それをやるためには人材が必要になってくると。

石塚

おっしゃるとおりです。どんな事業も「頭1つ抜けた優秀な人」がいないと立ち上がらないですから。

安田

いまは優秀な人材を囲い込んでおくチャンスだと。

石塚

千載一遇のチャンスですよ。

安田

石塚さんもこれを機に「ヘッドハンターに戻る」なんてことはないんですか?

石塚

200パーセントないです。

安田

ないですか(笑)

石塚

ご相談はたくさん来ますけどね。アドバイスはしますけど紹介業には戻らないです。

安田

仮に、もしやるとしたら、石塚さんなら「どういうアプローチ」をするんですか?

石塚

う〜ん。ここから2、3年は業界がますますボーダレスになる。そしてそれがどんどん加速する。だから「業界の境目」をまたぐ人材を発掘すると思います。

安田

面白いですね。

石塚

コンビニでコーヒーを売り出した、あれです。業界をまたげばそういうアイデアがたくさん出てきますから。

安田

業界のボーダーがなくなるってことは、人材のボーダーもなくなるってことですからね。

石塚

そうです。今までの業界で必要なスキルはAだったけど、それをA’に変えてあげる。そうすれば驚くような活躍をする人が出てくる。

安田

なるほど。そこを見極めて、業界を越える可能性のある人材を口説きにいくっていう。

石塚

それはたぶん本人じゃわからないはずなんですよ。

安田

確かに。自分では分からないでしょうね。

石塚

優秀なヘッドハンターは俯瞰・鳥瞰するから。「ここが境界線だから、この人をここに移籍させたら絶対にいい」ってことが分かる。だからどちらにも提案できるわけです。

安田

「働く業界を変える提案」と「業界をまたぐ採用の提案」ですね。

石塚

そうです。そこを繋げるロジックを組み立てれば、動かない人が動く。まだないマーケットが生まれる。

安田

それすごいじゃないですか!やっぱ、もう一度やりましょうよ。紹介事業。

石塚

いえいえ!もうこりごり(苦笑)

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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