2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第108回「採用事業はここが激変する」
採用業界について、今日はちょっと掘り下げて聞いてみたいんですけど。
はい。僕でよければなんでも聞いてください。
まずビフォーコロナとアフターコロナについて。採用マーケットは激変すると言われてますけど、どう思いますか?
間違いなく激変するでしょうね。
リクナビやマイナビのような就職サイトの役割も変わりますか?
ナビが変わるというよりも「採用情報を掲載してお金を取る」というモデルが終わると思います。無料化の波がどんどん来てるので。
求人情報を掲載して「企業からお金を取る」というモデル自体が終わると。
もう事実上終わってますけどね。
いやいや。何百億円という売上が実際にあって、莫大な利益をあげてる会社があるわけですけど。
でもその売上って、企業の不安や不満を解決してくれたり、「ありがとう」っていうものの集積ではない。単に既得権益から生み出される構造的な差益。
まあ確かに。「人が採れないほど儲かる」という非常に珍しいビジネスですよね
コロナで業績が悪くなる。悪くなると支出に厳しくなる。そうすると採用も「なるべく金かけずにいい人連れてこい」っていう指示が出始める。
そんなのコロナの前からありましたよ。
あったけど切羽詰まってなかった。もう待ったなしなので。
じゃあ石塚さんの予想では求人メディアはなくなると?
なくなりはしない。ただお金を払わないってだけ。
掲載が無料化するってことですか?
そういうことです。もうひとつの大きな市場変化は、転職市場に参加し始める年齢が大幅に下がるってこと。
ほう。
転職を受け入れる年齢って、これまでは40歳ぐらいで線が引かれてたんですよ。それが30歳未満になる。
30代での転職が厳しくなっちゃうってことですか?
30代はもう「誰かにリファラル採用してもらいなさい」って話になる。
それは紹介会社を通じたものではなく?
紹介会社は30歳以上が来ても「ごめんなさい。もしいい案件があったら紹介しますんで」ぐらいな感じで、お茶飲んで終わり。
30代って、私のイメージでは「脂がのってるいい年頃」だと思うんですけど。30代こそ狙い目って気がする。
安田さん、僕らがいま大学2年生だとして、きっとお互いにネットを絡めて商売を始めてますよね。
まあ、何かしらやってるでしょうね。何もやってないってことはないと思います。
それを2年3年やったらどうですか?就職したとしても、たぶん2年もやればだいたい「会社のことはわかったよ。俺、自分で始めるから」ってなりますよね。
そうなる可能性は高いかもしれません。
昔、それこそ安田さんが起業した頃と比べて、起業に対してのハードルはどれぐらい下がりましたか?
当時は起業するって言ったら「人生を捨てたのか?」って言われましたね(笑)
いまはまったくそんなこと言わないですよね。
確かにそうですね。心理的なハードルはかなり下がったと思います。
下手したら18歳19歳からビジネスシーンに参加してるわけですよ。で、5年くらいSNSやメディアを一生懸命やったら、どうなります?
まあ、そこそこにはいくでしょうね。
そしたらもう、27歳ぐらいには半ば完成させることができますよね。
なるほど。現代はスキルのピークが早いってことですか。石塚さんの予想では。
おっしゃるとおりです。
たしかにそうかもしれません。スキル取得に20年もかかるような分野って、かなりレアですもんね。
伝統工芸品とか、溶接技術とか、研磨とか。やってもやっても奥の深い、日本の伝統的な技術は年数が必要だと思います。
そういう分野も減ってきてますから。
普通のビジネス・商売の感覚で言えば、営業ひとつとっても3年も真剣にやれば頭1つくらい抜ける。情報はいくらでもあるし、YouTubeにもいくらでも素材あるし、webなら有名な人にも会えるし。
そうですね。
安田さんだって、面識なくたって会うでしょ?webなら。
webならほぼ断らないですね。
だから3年もやれば十分モノになる。
たしかに。
そうすると、22歳23歳で就職して、7~8年以内には行動を起こしますよ。
ある程度優秀な人は早く転職するか、自分でやっちゃうと。10年も20年もひとつの会社にしがみついてる人は魅力がない?
アクセスがしやすいこの時代には、もっと早くに声がかかるはず。みんな見てるので。
今の時代はできる人を見つけやすいですもんね。誰でも発信できるし。
そもそも発信しない人はもうダメでしょ。働き手も経営者も。
ですね。
だから第3の形というか、採用と起業を足して2で割ったような形が増えると思う。
そうかもしれません。
私の経験則上、「経営者のそばで経験したい」「経営者のそばでキャリアをつくりたい」って人は大概ダメです。経営って、経営者にならない限りわからない。
それは間違いないですね。
「君さ、資本金500万出すから、うちでやりなさい」っていう、採用と起業を足して2で割った形が増えていく。
なるほど。経営者になりたい人を、最初から経営者として雇っちゃうと。
おっしゃるとおり。そもそも経営を学ぶのに「おまえが金払えよ」「なんで俺が金払わなきゃいけないんだ」って話じゃないですか。
その通りですね。
当たり前の話なのに、経営者のそばにいれば学べると思い込んでる人が多い。けどそれでモノになった人なんてほとんどいませんよ。モノになったのはみんな自分で始めた人。
石塚さん自身のお仕事はポストコロナでどう変わりそうですか?求人のプロファイリング。その企業に「最もマッチする人材を絞り込んでいく」というお仕事ですよね。
私の仕事に影響が出るのはたぶん、ワンテンポかツーテンポ遅れてだと思います。
それに向けて、何か変えていこうとしてる部分はあるんですか?
いまみたいな話を理解できる経営者に向けて、サービスをつくってます。
いきなり経営者を雇うってことですか?
経営者に限りません。「雇用契約じゃないカタチ」で人を集めるやり方を考えてます。
おお!いいですね。私もそれは大賛成なんですけど、ハローワークというメディアで「雇用じゃない募集」をするって可能なんですか?
結論から言うとダメなんです。なので、いまやり始めてるのは1年間の契約社員。「1年後に選択権があります」という新しいカタチをつくってます。
それはOKなんですか?
それはOKです。そもそも「人を紹介して35%」というモデルはまもなく終わると思います。採用と事業投資は間違いなくボーダレス化してくるので。採用事業そのものが根本から変化しますよ。
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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。