2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第216回「5%だけの大変化」
就活マナーが刷新されると聞いたんですけど。
そういう流れですね。
就活の面接は「こういう化粧で、こういう服を着て」みたいなことが、いまのジェンダー世代には「男女差別じゃないか」と。
どうなんでしょう。
企業側もそういうものを求めなくなってる、ということなんですけど。
業界にもよると思いますよ。
ですよね。社会に出たら、まったく同じように男女を扱うのも難しいわけで。女性ならではの仕事とか男性ならではの仕事とかもあるし。
おっしゃる通り。
「男性はスーツにネクタイ、女性はスカート」みたいなのはもう古いんでしょうか。
ビジネスをやる人の選考なんだから、「ふさわしい格好をして来てください。それも選考対象に加えます」とシンプルに言えばいいだけ。
自分で判断してくださいと。
だけど、それをやるのが日本人はいちばん苦手で。「そうはいっても基準を示してください。どこまではOKでどこからNGですか」って。
失敗したくないんでしょうね。
そうなんですよ。極端に失敗を嫌う傾向があるから。
リクルートスーツのような、決まった服装はなくなっていきますか。
会社ごとに選考基準が違っていいと思うんですよ。差別しているわけじゃなく。
でも企業って常識を求めるじゃないですか。金髪で就職活動する子はいないわけで。
そこも含めての選考ですよ。
つまり「女性はちゃんと就活用のメイクをする」ってことになりませんか?
今は男でも化粧する時代ですからね。
つまり女性がノーメイクであろうが、男性がメイクしてこようが、企業は気にしないってことですか。
そんなことはないと思います。
ですよね。マイナビさんは「そういう常識を撤廃する」と言ってますけど。
それを強制したり押し付けたりするのがダメだってことですよ。
押し付けなくても結局やるしかないでしょう。企業はそこを見てますから。
「自分はこれは譲れないんで」って金髪で受ければいいんですよ。
それで受かりますか?
その結果はぜんぶ自分にはね返ってくるんだから、自分で受ければいいだけの話。
つまり採用されないってことでしょ?それを受け入れるってことですか。
いやいや。金髪でも採用する会社はありますから。
ありますか。
その人の中身にもよるじゃないですか。
どんな中身ですか。
金髪だけどハーバードをすごい成績で出ているとか。
なるほど。
「自分はこれに関しては譲れない」って言われても、採用する会社はありますよ。
そりゃ、ハーバードならあり得ますけど。
そう。だから就職を希望する学生のレベルによりけりなんですよ。
いまの学生さんって、ジェンダーとか男女差別とか、いけないという常識で育っているわけですよね。
でしょうね。
「就活だから女性は化粧します」なんて、もう時代遅れだと思ってるんじゃないですか。それでもマナーどおりにやる人のほうが多いんですか。
「いままでどおりやらないと怖い。変に踏み外したくない」というのが95%だと思います。
やっぱりそうですか。
5%はちょっと変わっていて。そもそも就職や将来のキャリアに独自の考えを持っていて、「自分はこんなだから」みたいに割り切ってる。
へえ〜。
そういう変わった人は一定数いる。これは昔からですけど。
だけど大半の学生は企業ウケがいいようにやるだろうと。
おっしゃる通り。まあ5%が6%になるのか、ならないのか、ぐらいのレベルだと思います。
なるほど。
だって、そんなに腹の据わった学生、日本人にはそんないないでしょう。
確かに。企業側はどうですか。「それぐらい自己主張が強い子をとりたい」というのはないんですか。
それはどっちもどっちの話で。企業も「そんなストレンジャーな新入社員を採って、既存の組織で活かしきれるの?」というのもある。
金髪ハーバードも、ひとりぐらいだったらいいですけど。そんなのばっかり100人も採ったら大変なことになります。
100人採ったら大したもんなんですけど(笑)そもそも金髪のハーバードを戦略化できるだけのマネジメントがあるのかどうか。
なるほど。
下手したら半年ぐらいで、「なんかつまんねー会社だなあ。もう自分で起業したほうが早いな」とかって言われちゃう。
言われそう(笑)
だから本当の意味で才能、タレントを欲しているのか、「そうはいっても普通の人も必要だし」ということなのか。2層に分かれている気がします。
つまり表立っては言えないけど、企業は昔のように服装なり化粧なりも見ていると。
見ているけれど、もしノーメイクでも、めちゃくちゃできる子が来れば採るでしょうね。
へぇ~。やっぱり時代は変わりましたね。
それが仮にLGBTQだとしても採ると思う。本当に優秀なら。
それは、いわゆる大手でも。
社風の堅い柔らかいはあるでしょうけど。いわゆる日本のトップ100といわれている人気企業はみんな採りますよ。いま優秀な人はひとりでも欲しいから。
優秀であれば見た目は関係ないと。
関係ない。
逆に言えば「そこまで優秀じゃないなら、マナーを守ってやりなさい」ってことですか。
そうそう。そこまでの主張ができないのだったら、まあ無難なところに落として無難な就活をやらないと。行き先がなくなっちゃう。
つまり根っこは変わってないと。
5%のものすごく優秀な層に関しては、その争奪戦はちょっと異次元でやってます。
異次元で?
それこそジェンダーレス、あるいは着こなし・メイクなんて関係なく、企業は能力で測ってくる。その5%に限っては。
残り95%は今までと同じだと。
そう。いままでと一緒。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。