2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
前回は 第281回「二刀流の時代」
第282回「今採るべき50〜60代の人材」
69歳で保育園に再就職した元営業マンが話題になってます。今まで子供のオムツを変えたこともなかったみたいです。
こういうケースはこれから増えていくと思います。
それは定年を過ぎても稼がなくちゃいけないから?
それもあります。現実的に年金だけじゃ生きていけないので。ただお金だけが理由でもないんですよ。
お金以外の理由って何ですか?
この方は69歳ですけど、65歳を過ぎると社会との接点がなくなってくるんです。時間も持て余すようになるし。「生きがいのために働きたい」という方が増えてます。
石塚さんは「55歳以上の人を積極採用しろ」と言ってますよね。こういう現実を踏まえてのことですか。
そうです。一応60歳定年がスタンダードじゃないですか。けど実際は役職定年で「事実上終わり」みたいになってる人が50代後半に多いわけです。
55歳でしたっけ?役職定年は。
役職定年は会社によって違います。「早ければ50過ぎてすぐ」という銀行みたいなところもあるし。
そうなんですね。50歳で定年って早いなあ。
「安田さんは部長の定年を迎えたので、今日からラインに戻ってください」みたいな。
生々しい(笑)給料も下がるんですよね?
もちろん大幅に下がります。やることがなかったり。上りのエスカレーターを降りた瞬間に「そこで終わり」というのが日本の会社には多いです。
今の50代って若いじゃないですか。マラソンや筋トレをガンガンやってる人もいて。
そうなんです。みなさん高齢者って一括りにしがちですけど今はいろんな人がいる。
引退するには早いですよ。
定年前後は奥さんとすれ違っている人が多くて。地域でのつながりもほとんどない。そういう人が仕事を外されると「自分は何のために生きてきたんだろう」ってことになる。
居場所がなくなっちゃうわけですね。
そう。だけど60以降の再就職ってやっぱり難しい。「俺は明日仕事だから早く寝るぞ」って家族に言えないから間が持たない。
今さら家事手伝いなんてできないし。奥さんにしたら足手まといというか。
この保育園に再就職した人も多分やることがなくて、「あなた孫の保育園の送り迎えでもしてよ」って奥さんから尻を叩かれたんだと思う。
なるほど。
それで送り迎えをやってるうちに「これってサラリーマン時代のノウハウが活かせるかも」って再就職に向かったんじゃないかな。
石塚式プロファイリングですね(笑)
高齢化している日本で60〜70代をどうやって戦力化するか。これってすごく重要で。
「うちの仕事は体力がないと無理」とか決めつけてますよね。今の50〜60代って人によって全然違いますけど。
全然違う。だから「ターゲットによって求人を変えなきゃいけない」って常々言ってる話で。60を過ぎても現場で使える人は使った方がいい。
人不足だって嘆く割にはそこを活用しないですよね。
日本人の悪い癖ですね。一律に年齢で切る。今55歳以上の求人は狙い目なんですけど。
今ならトップ層が採れますか?
ちゃんとターゲットを絞れば上位20%から採用できます。僕のオススメは40代以降に冷や飯を食わされ続けた人。挫折が多い人って活躍するんですよ。
それはどうして?
柔軟性があるから。
社内で評価されて出世し続けて来た人はダメなんですか。
そういうタイプはこれまでの成功体験をなかなか捨てられないです。あとは40歳を過ぎて転職経験が1回もない人。新しい職場に馴染むのが本当に難しいです。
1回ぐらいは転職してた方がいいと。
むしろ何回もしてくれてた方がいいです。自分の力量や適性をわかってるから。変にマウントを取らないし、新入社員として振る舞うことができる。
新入社員として?
何歳になってもその会社では新入社員じゃないですか。「今さら俺に何言ってるんだ」って人はダメなんですよ。ポイントはいくつになっても頭下げられる人。キャリアや肩書きだけで採用したらえらい目に遭います。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。