第315回「下請けが外資化する未来」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第314回「本当の人不足はまだ起こっていない」

 第315回「下請けが外資化する未来」 


安田

日本は加工貿易国ということで、車や家電を中心に輸出で稼いできましたよね。下請け企業も含めて日本全体が輸出で潤っている構造で。

石塚

かつてはそうでしたね。

安田

今も大企業は過去最高益を出してますけど。下請けはまったく潤っていない状況で。大手企業が日本経済を支える時代はもう終わりですか。

石塚

日本だけ取り残されちゃったってことなんでしょう。

安田

取り残されちゃった?

石塚

そう。取り残されちゃった。分かりやすい例で言うと大学の学費ですよ。もし息子さんをアメリカに留学させたら「30年でこんなに置いてかれたのか」ってぐらい学費が違う。

安田

スタンフォード大学は卒業までに5000万円かかると聞きました。

石塚

そう。学費も違うし、物価も違うし、家賃も違う。全部5倍から6倍離れちゃってる。

安田

ドジャースタジアムでは銀だこのたこ焼きが2000円するそうです。

石塚

正確に言うと2000円からでしょ。ちょっとトッピングしたらすぐ5〜6000円ですよ。

安田

家族でひとつづつ食べたら1万円ですよ。恐ろしい。

石塚

世界はそれが普通なんです。日本が遅れちゃってるだけで。

安田

確かに。私も安いのが当たり前になっちゃってます。「たこ焼きなんて数百円だろ」って。長いデフレの影響なんでしょうね。

石塚

もうずっと日本だけデフレを続けていて。それで円安だから。大手は当然儲かるはずなんですよ。

安田

なぜ下請けは潤っていないんでしょうか。

石塚

昔みたいに単純な図式じゃなくなってるじゃないですか。仕入れと組み立てがもう世界中に分散されてるから。取引がものすごく国際化して複雑になってる。

安田

だから国内の下請けには昔ほどお金が回らないってことですか。

石塚

はい。

安田

例えばトヨタ自体はものすごく儲かってますよね?

石塚

儲かってます。

安田

その利益を国内の下請け企業にもっと回せばいいじゃないですか。

石塚

それは言えますね。もうその通りです。

安田

なんで回さないんですか。

石塚

いや、ケチだから。トヨタは昔からそうだから。

安田

つまり大企業が儲かって「その結果として日本経済も潤っていく」という図式は、もう期待できないってことですか。

石塚

おっしゃる通り。

安田

とはいえ日本国内は下請け企業だらけですけど。これ、どうしたらいいんでしょう。

石塚

僕がもしその経営者の立場だったら、グローバルのグループに入るかもしれません。

安田

ほうほう。

石塚

海外に本社があって、海外で色々展開してるところのグループに入る。

安田

例えばドイツの企業の下請けをやるとか?ヨーロッパ企業のグループに入るとか?

石塚

ありえますね。台湾とか。

安田

それはどうしてですか。

石塚

適正な価格で買い取ってくれるから。

安田

日本の大企業ほど「下請け叩き」をしないと。

石塚

しない。適正な価格で買うし、契約も守るし。

安田

じゃあ国内の中小企業は海外大手と取引すりゃいいんですね。

石塚

ただし、そうなると日本の優良中小企業がどんどん海外企業になっていく。だから国としての数値はますます下がっていくかもしれません。

安田

でも中小企業は潤うじゃないですか。そこで働く社員も潤うし。

石塚

そうですね。海外企業になるかもしれないけど実質的にはその方がいいでしょうね。

安田

グループ企業にならなくても自分で海外に売り込むとか。

石塚

自力で世界と戦うには金融リテラシーが遅れすぎてます。今はあらゆる商品やサービスが金融商品化しているので。

安田

普通に販売するだけではもうダメってことですか?

石塚

たとえば美容整形の機械は完全に金融商品化していて。3〜5年で最新機種にどんどん入れ替えていくんです。

安田

入れ替えないとどうなるんですか?

石塚

どの病院に最新の機種があるのか消費者も分かっているから。どんなに腕がいい先生でも勝てないんですよ。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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