第24回 政治家の世襲多すぎ問題には選挙区の改定?

この対談について

国を動かす役人、官僚とは実際のところどんな人たちなのか。どんな仕事をし、どんなやりがいを、どんな辛さを感じるのか。そして、そんな特別な立場を捨て連続起業家となった理由とは?実は長年の安田佳生ファンだったという酒井秀夫さんの頭の中を探ります。

第24回 政治家の世襲多すぎ問題には選挙区の改定?

安田
以前、コネのない人が新しく政治家になるのは難しい、というような話をされていましたけど。だからなのか、最近は二世とか三世の議員ばかりですよね。

酒井
ええ、国政選挙のたびに問題になってますよね。
安田
世襲議員が増えすぎないように、「親と同じ選挙区からは出られない」というルールにしたらどうかなと思うんですけど、どうですか。

酒井
海外でそういうルールにしているところもありますよ。やるべきかどうかと言うと、私はやるべきだと思いますね。
安田
やっぱりそうですよね。政治家のお子さんで有能な人もいるとは思うんですけど、そうでない人と比べ優遇されすぎているというか。もう少し公平なところからスタートしてもいいんじゃないのかなと思うんですよね。

酒井
とはいえ、世襲は政治家自身の問題でもあるんですけど、周りにいる後援会とか取り巻きの問題でもあって。例えば最近だと安倍さんの後に誰が出るかで、昭恵夫人だったら後援会も協力するけど、別の人だったら雲散霧消するわけです。
安田

ははぁ、そうなんですか。昭恵さん以外の人が「私がこの地盤を引き継ぎます!」と言っても応援してくれないんですね。


酒井
まあ、やっぱりいろんな考えの方がいる中で、「この人の旗のもとに集まろう」っていう話で集まった人たちなので。別の人が出ると後援会の力がなくなってしまうというか。
安田

なるほど、だから昭恵さんは「私はこの人を推薦します」ってわざわざ言ってるわけですね。亡くなった総理の奥さんがなんでこんなこと言うんだろうと不思議だったんですけど。


酒井
後援会としても、自分たちが一枚岩で団結できる候補を選びたいんですよね。その時にわかりやすいのが先代の子供なんです。
安田
ははぁ、確かに。でも、経営者の息子だからって優秀だとは限らないように、政治家の息子だから政治ができるとは限らないと思うんですけど。それでもやっぱり子供がいいんですかね。

酒井
例えば「先代に世話になった番頭さんが、出来の悪い新社長(息子)をサポートする」みたいなことは企業でもあると思うんですけど。外から来た人が社長を継いだ場合、「私は先代と心中するのでこの会社辞めます」なんて言って離れてしまう。
安田
なるほどなぁ。でも、そういう番頭さんみたいな人もだいぶ減ってきましたよね。そんなにオーナー家に忠誠尽くすのかっていうと、実は損得で見てるような気もしますし。

酒井
そうですね。政治家の話に戻すと、最近は公募が増えてますし、あとは小選挙区の区割りが変更されて「10増10減」になるんですね。うすると、今まで自民党が出てない新しい選挙区ができるわけです。
安田
ほうほう。今までのしがらみがない選挙区ができると。

酒井
ええ。そういう選挙区には実力のある候補が立候補するんです。なので定数をこまめに変えて選挙区をどんどん改定していけば、今の問題も起こらないのかもしれません。
安田
なるほど。選挙区がどんどん新しくなれば、新しい人が出てこないという問題は起こらないと。

酒井
あとは今回、「選挙区が減ることで後継が出せない」というケースも出てきています。だからこの調子で地方の選挙区がどんどん合区になっていったら、世襲政治家は減るんじゃないかなって気はします。
安田

なるほど。企業の場合、能力のない親族が継いだら業績が悪くなって会社がなくなるだけですけど。でも政治家が扱うのは国だから、なくすわけにはいきませんもんね。そんな大切な国を運営する人を、単純に世襲で決めるのはどうなんだろうかと思うんですよ。


酒井
仰るとおりですね。以前、政治家を「数年に一度の選挙のたびに会社がどうなるかわからない中小企業の社長」に例えたことがありましたけど。
安田
ああ、政治家は「国の立場を考えなきゃいけない国会議員」でありながら、秘書や後援会を抱えた「10人ぐらいの中小企業の社長」のような立場でもあると。

酒井
ええ。それが後者に偏りすぎてしまうと「政治屋」と揶揄されるわけですよね。
安田
確かに。しかも昔のようにフィクサー的な「政治屋」ではなく、本当に中小企業の社長みたいな。選挙に向かって身内が食べていくための商売みたいになっている気がして。

酒井
身内を守ることを最優先に考えるようになると、必然的に世襲も起きやすくなりますよね。
安田

選挙のたびに話題になっているのに、野党も何で掲げないんですかね。我々の党が与党になったときには、地盤の引き継ぎを禁止しますとか。


酒井

例えば維新とかはそういうことを言えるんですよね。

安田

ああ。少ないですもんね、二世三世が。


酒井

ええ。過去のしがらみがある会社だとなかなか新規事業はできないけど、できたばかりのベンチャーなら関係ない、という感じで。

安田
そうか。野党の政治家にも二世三世がいっぱいいますからね。引き継ぎ禁止を掲げても、お前が言うなと言われちゃいますね。

酒井
そう考えると、政党にも賞味期限があるのかもしれないですね。民主党も初期の頃は、役所の立派な方や有名な学者の先生が活躍していたのが、党ができて10年、20年も経つとしがらみの方が大きくなってしまって。
安田

野党でも「やっぱり自分の息子に継がせたい」となって世襲は起きてくると。


酒井
そうですね。あるいはゼロベースで新しい政党ができて、「僕たちは世襲しません」と宣言しても、その人たちが歳を取ったときそれを貫けるかどうか(笑)。
安田
笑。仕組みから変えないといけないのかもしれませんね。世襲にしない分、秘書や後援会などの抱えている人たちを守れるようにもう少し予算を増やして、安定して生活できるようにするとか。
酒井

そういう取り組みも必要でしょうね。公募で若い人を積極的に出したり、自民党も少しずつ変えようとはしてるんですけど。これだけ世襲議員が多い中で、世襲を禁止したり、既に世襲議員がいるところに別の人を置いたりという意思決定はなかなか通らないですよね。

安田
そうですよね。なかなか一筋縄では行かない問題ですね。

対談している二人

酒井 秀夫(さかい ひでお)
元官僚/連続起業家

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経済産業省→ベイン→ITコンサル会社→独立。現在、 株式会社エイチエスパートナーズライズエイト株式会社株式会社FANDEAL(ファンディアル)など複数の会社の代表をしています。地域、ベンチャー、産官学連携、新事業創出等いろいろと楽しそうな話を見つけて絡んでおります。現在の関心はWEB3の概念を使って、地域課題、社会課題解決に取り組むこと。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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