第349回「ワタミはタイミーで成功するのか」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第348回「女子大工学部の裏事情」

 第349回「ワタミはタイミーで成功するのか」 


安田

ワタミさんがサブウェイを買いましたよね。

石塚

はい。買収しました。

安田

そのサブウェイをタイミーだけで成り立つように考えているそうで。

石塚

バイトが全部タイミーという店をまず作ったわけです。それがうまくいったから第2弾として「社員もひっくるめて全部タイミー」という店を作ろうとしている。

安田

これはタイミーの社員ってことですか?

石塚

タイミーは社員を派遣していないので。要するに評価の高い人をタイミー経由で雇用するってことでしょう。

安田

つまりタイミーが紹介事業をやるってことですか。

石塚

そういうことですね。バイトから社員から全部タイミーがお手伝いする。フルタイミー店舗を開始するってことです。

安田

すごいですね。

石塚

経営者らしい考え方というか。全ての人件費を変動費化させたいんですよ。

安田

人件費を変動費化させる?

石塚

必要な分だけ人を置く。自社で採用するんじゃなく、タイミーからどんどんマッチングしてもらう。うちはフルタイミーのお店ですから働きやすいです。そしてよかったら、うちで社員になりませんか?って。

安田

うまくいくと思いますか?

石塚

うーん。僕はすごく懐疑的ですね。

安田

ほう。どういうところが?

石塚

人件費を極力変動費化させたいっていうのは分かるんですけど。たとえば食中毒が起こった場合とか原因解明が難しくなりますよね。

安田

人がどんどん入れ替わっているわけですからね。

石塚

飲食店って、一定期間働く人には検便による菌の検査が義務付けられていまして。

安田

そうなんですか。

石塚

はい。だけどそれをタイミーのスタッフにできるのかなって。無理ですよね。そういう衛生的な疑問が1点目。

安田

他にもありますか。

石塚

2点目は税制の問題で邪魔されないだろうかっていう。日雇いで税金処理しているとしたら源泉漏れを起こしますから。

安田

なるほど。税務署が黙っていないと。

石塚

脱税ですって言われた時に「いや、めんどくせえな、そういう話」ってなりそう。

安田

現場的にはどうなんですか?タイミーだけで本当に人が確保できるんでしょうか。1年間通してちゃんとシフトが埋まるのか。

石塚

いや、難しいでしょうね。サブウェイって働き手にとってそんなに楽しい店でもないので。

安田

ですよね。

石塚

仮にゴンチャだったらフルタイミーでも成り立つでしょうけど。サブウェイは思ったほど集まらない気がします。微妙な人ばかり集まってきて評判が下がるのは怖いですよね。

安田

商品が手作りサンドイッチですからね。変な人につくられるのは嫌ですよ。

石塚

商品クオリティも人によって差が出るだろうし。

安田

絶対に出ますよ。ドレッシングも人によって匙加減が違うし。

石塚

そうなるとブランドが保てるのかどうか。

安田

そもそもタイミーで働く人って縛られたくないイメージですけど。わざわざワタミが運営するお店で社員になりますかね。ブラックと言われていた会社で。

石塚

1店舗、2店舗だったら可能でしょうけど。全国に3000店舗ありますからね。

安田

成り立つイメージが湧かないですよ。とはいえ現場スタッフは絶対に必要だろうし。

石塚

大手はその対策としてグループ内でタイミー的なものを構築し始めてます。

安田

自社運営のタイミーですか?

石塚

そう。グループ内タイミーみたいなもの。ワタミもタイミーを取り込みたいんだと思います。スタートはサブウェイだけど「ミライザカで働かないか」「ワタミ宅で働かないか」って。グループ内で回していく感じ。

安田

そんなにうまくいんでしょうか。

石塚

しんどいと思う。だけどやるしかないって感じ。必死になって手を打ってきてる感じがしますよ。居酒屋の先はもうないから。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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