第361回「さよなら採用ビジネス」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第360回「クビにならない会社について」

 第361回「さよなら採用ビジネス」 


安田

この対談が始まってもう10年ぐらい経ちますかね。

石塚

確か2018年のスタートですから丸7年ですね。当時は私が人材紹介事業を辞めた直後で。

安田

そうでした。私も会社を潰した後で「さよなら採用ビジネス」というタイトルにして。

石塚

そうそう。「もう2度と人材紹介なんてやるか!」って決めたんですよ。

安田

なぜそう決めたんですか?

石塚

今だから言いますけど。紹介した人材が薬物事件で逮捕されちゃったんですよ。

安田

なんと。

石塚

しかも紹介先の会社は株式公開準備中で。もう鬼のように怒られて。なじられて。あれが1つはきっかけでしたね。

安田

それが大きな転機になったと。

石塚

警察でも4時間半ぐらい取り調べをされて。学歴も申し分ないし、面談してもすごく良い人材だったんですけど。自分の見る目の無さにがっかりしたんですよ。

安田

それだけで辞めちゃったんですか?

石塚

いえ。それは直接的な引き金でしかなくて。ホワイトカラーの優秀な人を探すのが「年々難しくなっている」という体感が強くなっていました。合わせて1本みたいな形で「もう辞めてしまえ!」みたいな。

安田

なるほど。そういう事情だったんですね。

石塚

まあ後付けかもしれないけど結果的には時代を先読みしてた気がします。

安田

辞めてよかったと。

石塚

はい。辞めてよかったです。

安田

実感がこもっていますね(笑)でも求人相談はずっと絶えないですよね。

石塚

そうですね。そこからハローワークを使ったピンポイント求人に移行して。

安田

ある意味それまでの自分を否定するようなやり方ですよね。

石塚

おっしゃる通りです。人材紹介業ってたくさんお金をもらうじゃないですか。だから「今度はその逆をやろう」と。なるべくお金かけないでいい人を採る方法ないだろうかって。ちょっと意地になってやってました。

安田

そして気が付けばその分野の第一人者になっていたと。

石塚

いやいや。安田さんに「求人プロファイラー」って付けてもらって。今に至る感じですよ。

安田

そんな中でまた新たな事業をやられるそうですが。

石塚

はい。今年の3月に会社を作って。6月に許可も取って、また人材紹介会社をやるんですよ。

安田

どうしてまた?

石塚

建設業に特化した人材紹介をどうしてもやりたくて。

安田

建設って今いちばん採るのが難しいと言われていますよね。

石塚

そうなんですよ。工事の仕事って土日は関係ないし、夜間工事はあるし、地方に赴任しなきゃいけないし。家族との間にすごい隙間風が吹いているわけですよ。

安田

まさにそういうイメージです。

石塚

今は夫婦共働きが当たり前だから。そこのバランスが取れなくなって不協和音が出て悩んでいる人が多い。そういう方にぴったりな会社だけ紹介する、ということがやりたくて。

安田

そんな会社あるんですか?

石塚

通常の転職って会社のランクを上げたり、年収を上げたり、ポジションを上げたり、っていうのが目的なんですね。

安田

今より良い条件を求めて転職しますからね。

石塚

普通はそうなんですけど。社格を下げて、年収もちょっと下がって、でも幸せになる。仕事のやりがいを感じられる、家族も笑顔になる。そういう転職支援です。

安田

わざわざ社格や給料を下げて転職するんですか?

石塚

この業界っていい会社がほんと少ないんです。だからいい会社だけを選んで「ごめんなさい、ちょっと年収は下がります。だけど間違いなく幸せになります。家族も幸せになります」って。

安田

理屈は分かるんですけど。本当に転職しますかね?

石塚

すると思います。建設業界って非常に人を粗末に使っている業界で。数は少ないけど本当にいい会社ってあるんですよ。そういう会社に人が集まるようにしたくて。

安田

ちなみに転職者はどうやって集めるんですか。

石塚

まずは泥臭くリファラルで集めていこうと思います。ある程度軌道に乗ったらSNSもガンガンやろうと思っていまして。それも思いっきりネガティブに回してやろうと。

安田

ネガティブに?

石塚

「こういう会社はすぐ辞めるべきだ!」とか「こういう転職エージェントには気をつけろ!」とか「こういう求人票に騙されるな!」みたいな。

安田

敵が増えそうですね(笑)ターゲットはどんな人ですか。

石塚

20代後半から40代前半の施工管理をやる現場監督さんに特化します。現場が良くなるにしても悪くなるにしても現場監督の腕一本ですし。この人たちが幸せかどうかが業界のこれからを変えると思っているので。

安田

いま日本中の建設現場で人が足りなくて大変なことになっていますからね。

石塚

そうなんですよ。そこを変えていきたい。

安田

「こういう会社なら俺に任せてくれ」という特徴を教えてください。

石塚

まず業績、収益率が良いこと。次に本社と現場の情報共有がよく出来ていること。そして協力工事会社の評判がいいこと。

安田

この条件に当てはまる会社ならいい人材が採れると。

石塚

はい。間違いなく採れると思います。

\ これまでの対談を見る /

石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

感想・著者への質問はこちらから

CAPTCHA