第366回「なぜ地方では採用が上手くいくのか」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第365回「理系女子の活用について」

 第366回「なぜ地方では採用が上手くいくのか」 


安田

この人手不足の時代に新潟でコールセンターを立ち上げた会社が話題になっていまして。

石塚

損保のいわゆるロードアシスタンス会社のコールセンターですね。

安田

ロードアシスタンスって何ですか?

石塚

車で事故ったり故障した時に、契約者の車を引き取ったり、代車を出したり、場所によってはホテルを用意したり、というサービスが保険に入ってるわけですよ。

安田

なるほど。それを手配してくれるオペレーターの会社ですか。でも、なぜわざわざ新潟に立ち上げるんですか?地方って採用が大変ですよね。

石塚

あえてそこを狙っているわけですよ。これはすごく上手いやり方だと思う。新潟の中でめちゃくちゃ待遇のいい職場を作って。

安田

確かに待遇は良いようです。「女性のパウダールームがすごく豪華」「1人で休める個室ブースや社内にカフェがある」と書かれていました。だけど300人規模のコールセンターですよ。それだけで採用できるんですか?

石塚

まず新潟市って100万都市なんです。地方って満遍なく減少しているわけじゃなく、地方も都市部に集中しているんですよ。

安田

地方の中の都心部は人が減ってないと。

石塚

そうです。地方にも必ず人口第1位都市、第2位都市ってあるので。新潟県でも新潟市に人口が集中している。

安田

それは新潟県の他の都市から流れてくるわけですか?

石塚

はい。たとえば東京の大学に子供を進学させられる親って激減してるわけですよ。

安田

それは経済的な理由で?

石塚

おっしゃる通り。親の収入が増えないし、学費は上がるっていう、この構図ですよね。

安田

東京で下宿なんてとんでもないと。

石塚

月10万の仕送りでは無理じゃないですか。

安田

大学に行くんだったら「地元で行ってね」ということになる。

石塚

そうなんですよ。そして新潟県に国公立大学って3校しかないんですよ。新潟大学と、上越教育大学と、長岡技術科学大学。定員が少ないから合格出来ない子は自宅から通える私立に行ってくださいって話になる。

安田

私立はいっぱいあるんですか?

石塚

実は新潟って私立が28校もあるんですよ。短大も含めると。

安田

そんなにあるんですか。

石塚

実はそうなんです。損保ジャパングループはそこに目をつけたわけで、「よくここに目をつけたな」って感心しました。

安田

何がそんなにすごいんですか?

石塚

新潟大学には入れなかった、自宅から通学せざるを得ない人って、そこそこ優秀な高校生だった割合がものすごく高いんです。

安田

大学偏差値は低いけど高校の偏差値は高いと。

石塚

そう。出身高校を見ればすぐ分かりますけど、本来なら東京の有名私立に入るような子達が県内の私立に通っているわけですよ。

安田

なるほど。そこに目をつけた採用だと。

石塚

おっしゃる通り。たとえば新潟経営大学って新潟大学を落ちた人が行くわけですけど。

安田

新潟大学と新潟経営大学では偏差値にだいぶ差があるってことですね。

石塚

申し訳ないんだけど新潟経営大学ってFランなんですよ。

安田

だけど中にいる学生さんはかなり優秀だと。

石塚

国立にギリギリ落ちた人もいるわけで。浪人もすごく減っていますし。いや、これは上手いところに目をつけたなと。実はこれ新潟に限らずどの県でも広がっていて。

安田

そうなんですか?

石塚

はい。実は地方は地元に18歳から20代前半の優秀な人材って多いんですよ。

安田

若くて優秀な子がみんな都心に行ったのはもう過去に話だと。

石塚

じつは今、東京23区の20代採用ってめちゃくちゃ大変なんですよ。あまりにも競合多すぎるので。

安田

つまり若くて良い人材を採用するなら、都内にオフィスを構えるより地方都市の方がいい。

石塚

そういうことです。だからこの会社は本当に素晴らしい目の付けどころで。センターを立ち上げてあっという間に100人規模を超えているわけですよ。

安田

そんなに採れるんですね。

石塚

みんな20代と若い。そしてけっこう優秀な人が採れる。

安田

待遇を良くして、オフィスも広くして、職場を快適にして。

石塚

都内でオフィスを構えることを考えたら安いもんですから。

安田

同じ給料でも地方で生活すれば生活費が全然違うし。

石塚

おっしゃる通り。新潟で東京水準の給与設定なんかしたら、もう人が群がりますよ。

安田

これから若くて優秀な人をたくさん集めようと思ったら、都内より地方都市にオフィスを構えた方がいいと。

石塚

はい。間違いなく。

安田

おすすめの都市はどこですか。

石塚

新潟はとてもいいでしょうね。あとは石川の金沢は狙い目ですね。優秀な高校がいっぱいありますし。

安田

でも地方の会社って採用に苦労していませんか?

石塚

地方の会社ってほんと採用が下手なんですよ。やり方さえ覚えれば確実にいい人が採れる。地方採用だったらいつでもお声がけください。必ず成功しますから。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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