7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
前回は 第97回『大田区民ニュース』
第98回「捨てられないのは何?」
日本IBM社の再雇用が炎上してました。
はい。ネットニュースで見ました。
60歳定年で再雇用されたらしいんですけど。再雇用される前1,000万円あった年収が208万円になったって。
まあでも、そんなもんですよ。
この方いわく、現役のときとまったく同じ仕事で、同じように責任もあって、それで800万ダウンは違法だと。
訴訟になってるんでしたっけ?
「せめて前職の8割を払え」って、いま訴えを起こしてます。
まあ勝てないでしょうね。
「同じ仕事だったら払わないといけない」という意見もあるんですが。大多数は「それで契約したんだから自己責任。嫌だったら転職すりゃいい」みたいな。
僕もそう思います。「だったら転職すればいいのに」って。
やっぱそうですか。
はい。不満だったら自分が外出てチャレンジすればいい。
まあそうですよね。自分の仕事に1,000万円の価値があると思ってるなら。
人材ビジネスをやってた立場から言わせてもらうと、こういう人で優秀な人はまずいません。
いませんか。
いませんね。ホントに自信のある人はとっくに転職してる。
実際そうみたいです。定年になった数百人のうち8割は転職しちゃうらしいです。
そりゃそうでしょ。
転職したほうが収入増えるんだったら、普通はそうしますよね。
はい。
これだけ下がってなおかつ契約するということは、他に行き先がないってこと?
と思います。60歳まで1,000万円も払ってくれたIBMに、まずは「ありがとう」って言ったほうがいい。
ですよね。訴える前に。
「200万はひどすぎるんじゃないの?」ってことなんでしょうけど。
そんな感じです。
でもそれ、事前の説明がちゃんとあったはずですよ。
事前の説明があって、本人も納得して、いったん会社を辞めて再契約になったみたいです。
だったら何の問題もないと思います。
だけど同一労働同一賃金の考えでいくと、「なぜ同じ仕事なのに8割も減るの?」ってことになる。
60までIBMにお世話になったんだから、あとは後輩の球拾いをしようって気持ちにならないのかなあ。
60歳まで1,000万もらってたのが、すでに実力を超えて「もらい過ぎだった」ってことですよね。
そう思います。
元々200万の価値なのに1,000万もらってたと。
IBMの評価が間違ってると思うなら、よそで自分の適正な年収を得るべくやればいい。
IBMで定年までやったような人なら、オファーがありそうですけど。
300〜350万ぐらい払ってくれる会社はあると思います。あと、サラリーマンにこだわらず業務委託でやったっていいし。
IBM の社員でいたいんでしょうか。
じゃないですか。何れにしても一度説明を受けて契約している以上、いまさら訴訟っていうのはどうかと思う。
「実質的には体のいい解雇だ」と主張しておられます。
どうして解雇なんですか?
「8割減を受けないと辞めざるをえない」というのは解雇と一緒だって。
そもそも定年なんだから。訴訟にこんなエネルギーを使うんだったら、新たな可能性を探すほうにエネルギーを使ったほうがいい。
この方は転職活動をしたんでしょうか?それとも活動自体やってないのか。どっちだと思います?
してないと思います。
してないですか。それは「IBMに居たい」っていう思いが強いから?
もうちょっとねじれた感じがします。「IBMを信じてたのに」みたいな。
なるほど。
いい会社だったんでしょうね。だからこんなに甘えちゃう。
IBMって外資ですし、こういう方が出てくるのがとても不思議。
レアケースじゃないですか。8割は転職していくわけだし。
そっちが普通だと。
はい。
この訴訟で会社側が敗訴になる可能性もありますか?
ちょっと考えられないです。ただ日本の労働法令は会社に厳しいから。
もしこれで「残りの8割払え」ってことになったら、大変ですね。
企業はますます人を雇わなくなります。
そうですよね。
もう怖くてしょうがないじゃないですか。この訴訟次第では50歳以降の人、みんな迷惑しますよ。
下手したら50代から下げていかれる可能性がありますね。
いや、もっと早いと思います。
そうですよね。「辞めたときの給料を保証しろ」となったら下げておくしかない。
定年なんて、じつは何歳で設定してもいいんです。
そうなんですか!
はい。だから「42歳で定年」とか「45歳で定年」とか、出てきますよ。
雇用契約自体を変えちゃうと。
法定で「何年間の雇用契約をせよ」とは決まってないので。
なるほど。
あと、「うちは20年の契約社員採用です」「そのかわり給料が高いです」って会社も出てくる。
条件次第では最初からそういう働き方もありですよね。
ぜんぜんありですよ。お金もたまるし。
60歳で会社にしがみつくのは悲しいですもん。
この人はもう「IBM以外の人生」は考えられないのかもしれない。
ずっとIBMの名刺を持っていたいんでしょうね。
そう思います。
だったら訴訟なんて起こさなきゃいいのに。
ホントに。200万もらいながらIBMの名刺持てるんだから。それ以上望むと自分が不幸になりますよ。
個人で出来る、採用支援。
\ 石塚本人がスキルを伝える /
石塚求人大学開講 受講生募集中
詳しくはClick
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。