第36回 ジェネリックは本当に効くのか?

この対談について

国を動かす役人、官僚とは実際のところどんな人たちなのか。どんな仕事をし、どんなやりがいを、どんな辛さを感じるのか。そして、そんな特別な立場を捨て連続起業家となった理由とは?実は長年の安田佳生ファンだったという酒井秀夫さんの頭の中を探ります。

第36回 ジェネリックは本当に効くのか?

安田

今回は、医薬品について話したいと思います。いつもジェネリックを選んでいましたが、「実際には効き目が違ったり、中にはまったく効かないものもある」という話を聞いて心配になりまして。


酒井

成分が同じなので効き目がないということはないとは思うのですが、「本当に証明されているのか?」ということについて疑義を持つ人はいるようですね。

安田

お医者さんの中には、「絶対ジェネリックはすすめない」という方もいるようです。そもそも普通の薬と材料が違う場合もあるようですね。


酒井

安く製造するために工夫をした結果、問題が起きるケースもあるのかもしれないですね。ただ、ジェネリックかどうかに関わらず、日本は基本的に薬が安すぎるんですよ。結果、国が負担する医療費が増えすぎて大問題になっている。

安田

ああ、確かに。保険適用で買うために、皆わざわざ医者に行っているフシがありますもんね。


酒井

ええ。そして国は医療費削減のため製薬会社に「安く作れ!」と圧力をかける。その結果、品質に問題がある製品が出回るようになると。

安田

悪循環ですね。どれだけ安かろうが、効かないなら何の意味もないわけで(笑)。


酒井

仰る通りです。結局、薬価については、国の定める改定で毎年のように値段が下がり、特許が切れたら別のメーカーがさらに安く製造し、販売することを奨励しています。これでは製薬会社もなかなか大変で、品質の問題が出たりする。

安田

なるほど。経営者の立場では理解できますが、患者側からすると困りますね。個人的には、保険適用外でもいいからちゃんと効く薬を処方して欲しい(笑)。


酒井

まさに仰るとおりで、結局、医療費削減のために薬の値段を下げているので、究極的には薬代は全額負担にすればいいんです。ただ業界全体として「安くすること」が目的になっている感じですよね。さらに言えば、風邪薬なんて、気休めのために処方している場合もあるわけで。

安田

ああ、確かにそうですよね。ドイツのお医者さんに風邪薬をお願いすると「風邪に薬は必要ないよ」と笑われるそうです(笑)。命に関わるような場合を除き、そもそも意味があって熱や咳が出ているわけだから、本来薬は要らないはずなんですよね。


酒井

そうそう。でも患者が薬を欲しがるから、薬を出すことが目的になっているようにもみえますね。

安田

なるほどなぁ。そうやって「飲まなくていい薬」が大量に出回っていて、その莫大な費用を国が負担している。これって、すごく無駄な気がしますね。


酒井

そうなんですよね。例えば糖尿病の患者さんは毎日大量の薬を飲みますが、元の血糖値を下げると、その副作用があるので、その症状に対する他の薬を飲む。そうするとさらに別の副作用が出て……

安田

それに対する別の薬が処方されるわけですね。いったい何錠飲めばいいんだっていう(笑)。


酒井

本当にそう思います(笑)。妻は東洋医学関係の仕事をしているので思うのですが、対症療法はもう必要ないんじゃないかと思うこともあって。深刻な病気になったら別ですが、血糖値の不調や頭痛などについては、体質改善に向けた1種類の漢方を飲むとか、薬膳料理のように食事に気を遣うとかで充分なんじゃないかと。

安田

ああ、そうですよね。皆がそう考えれば国の医療費も削減できますし。そういえば、スウェーデンで子供の虫歯が減ったのは、「治療」ではなく「予防」に力を入れたからだと言いますよね。つまり日本もそっちに目を向ければいいと。


酒井

そう思います。結局「予防」が一番お金がかかりませんから。なのに今の日本は、むしろ「無理やり病名をつけて薬を処方している」ように見えてしまう。

安田

わかります。調剤薬局の数は、コンビニより多いと言われていますもんね。


酒井

そうなんです。もともとの理念としては、薬局が医者の処方をチェックするということだったはずなんですが、残念ながら、うまく機能しているとはいいがたいですね。

安田

確かに、本来の役割からズレていますよね。どれだけ無駄な薬が出ていようとも、基本的にはスルーですもんね。


酒井

そうそう。まぁ、そういう意味では先ほどの「薬は保険適用外」、つまり10割負担にすれば状況はガラッと変わると思います。患者自身が無駄な薬を買わないようにすると思うので。

安田

そうですよね。診察はともかくとして、薬代についてはそれでいいように思います。まあ、いきなり10割は難しいとしても、まずは4割負担にするとか。


酒井

そうですね。最近はやっと高齢者の医療費についての議論がメディアでもされるようになってきたので、5年後10年後には法律や制度が変わるかもしれない。

安田

それでも5年後10年後なんですね。『NHK党』みたいに『医療費負担を増やす党』を作ったらもっと早く変わりますかね。でも、人気はなさそうですけど(笑)。


酒井

そうですね。国民の負担が増えるから人気は出ないでしょう(笑)。

 


対談している二人

酒井 秀夫(さかい ひでお)
元官僚/連続起業家

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経済産業省→ベイン→ITコンサル会社→独立。現在、 株式会社エイチエスパートナーズライズエイト株式会社株式会社FANDEAL(ファンディアル)など複数の会社の代表をしています。地域、ベンチャー、産官学連携、新事業創出等いろいろと楽しそうな話を見つけて絡んでおります。現在の関心はWEB3の概念を使って、地域課題、社会課題解決に取り組むこと。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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