なぜ人はメンタル不調になるのか
感情にフタをしないと上にいけない会社は、持続可能ではないと。
そう思いませんか?
でも割り切った言い方をすれば、お金さえ回っていれば会社は持続しますよ。
中にいる「人間の心」が壊れちゃったら、持続可能ではないでしょう。
社員が心を壊しながら、大きな利益を上げている会社もあるわけで。
そんな会社が持続可能だと思いますか?
私は思いませんけど。そんなことを言ったら「あなたみたいな産業医はけっこうです」ってなりませんか?
「健康経営」が注目されていることもあって、いまのところは、どこに行っても大事にされています(笑)
そうなんですね。会社って利益重視のイメージですけど。
会社としても行き詰まり感があるんだと思います。メンタル不調で倒れる人はバタバタいるし「どうしたらいいんだろう」って。
メンタル系の研修が増えてますもんね。
だけど、どれだけ研修しても変わらないじゃないですか。私も研修講師なのに「研修だけで変わるわけないじゃない」って言ってるんですよ(笑)
言っちゃうんですね(笑)
心理的安全性のためには表面的な理解じゃなく、人間の体を理解する必要があります。
人間のカラダ?
たとえばスポーツカーはスポーツカーなりの、軽自動車は軽自動車なりのメンテナンスをして、車体に合った走り方をしたほうがいいわけですよ。
そりゃそうですね。
車に対しては、ちゃんとそうやって理解してるわけです。
はい。
機械に対しては分かるのに、人間に対する理解はすごく少ない。
会社は「成長が止まると死ぬ」って言われてますから。みんな怖くてブレーキなんて踏めませんよ。
だから壊れちゃうんだと思う。
産業医さんは「お酒飲むのを控えようね」って言いますよね。「会社の成長をちょっと控えよう」とはさすがに言えないんでしょうか。
言うときありますよ。あまりに出店ペースが速くて現場が疲弊している時とか。
言うんですね。
はい。私の立場で言うのもなんですけど、「ちょっと無理がありますよ。そもそも人も育っていないのに形だけつくって、意味ないですよね」って。
そこまで言いますか(笑)
はい。「閉店していくことが必要なこともありますよね」って。
みんながスポーツカーじゃないし、むしろ「成功して金持ちになりたい」って人は減ってますもんね。
そうなんです。
むしろ今は多くの人が軽自動車に憧れていて。「そんなスピード出なくてもいいし、リーズナブルで、快適にちゃんと移動できて、壊れなきゃいいよ」っていう。
ほんとそんな感じですよ。
だけど会社は何とかして、スピードを出させようとするじゃないですか。
そこに無理がある気がします。
とは言え、スポーツカーに憧れる人もゼロではないし。
だから「選択肢をつくろうよ」って話なんです。このスクール(BFS)のコンセプトも同じじゃないですか。
はい。同じです。私も働く人の選択肢を増やしたいです。
スーパーカーでいたい人もいるし、「そこまで頑張らなくていいや」って人もいますから。
「好きなことをやりながら平和に暮らしたい」って人が増えてる気がします。
私もそう感じますね。
だけれど日本社会では「社員じゃなくなったら生きていけない」と思っている人が多いじゃないですか。
だからメンタル不調になるんです。
ですよね。
「もう、しがみつくしかない」「選択肢がない」と思ったら、我慢するしかなくなりますよ。
まさに今がそういう状態なんでしょうね。
我慢しないで自分の好きなことをする練習って、してませんよね。日本人は。
してませんね。「嫌なことをいかに我慢して生活していくか」という訓練しかしていない。
外側の状況に自分を合わせるということばかり、ずっと求められてきて。
だから病気になっていくと。
はい。
> 第8回「 好きと得意の関係 」へ続く