「なぜ人はメンタル不調になるのか」|センパイ先生と対談シリーズ

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上谷 実礼(うえたに みれい)
・平成12年(2000年)3月千葉大学医学部医学科卒業
・千葉大学医学部附属病院などで臨床研修
・平成16年4月千葉大学大学院医学研究院助手(環境労働衛生学)
・平成19年4月千葉大学大学院医学研究院助教(環境労働衛生学)
・平成22年労働衛生コンサルタント(保健衛生)試験合格
・平成22年5月千葉大学大学院医学研究院講師(環境労働衛生学)
・平成23年4月ヒューマンハピネス株式会社設立 代表取締役就任
・令和3年 公認心理師 試験合格

なぜ人はメンタル不調になるのか

安田
安田

感情にフタをしないと上にいけない会社は、持続可能ではないと。

上谷
上谷

そう思いませんか?

安田
安田

でも割り切った言い方をすれば、お金さえ回っていれば会社は持続しますよ。

上谷
上谷

中にいる「人間の心」が壊れちゃったら、持続可能ではないでしょう。

安田
安田

社員が心を壊しながら、大きな利益を上げている会社もあるわけで。

上谷
上谷

そんな会社が持続可能だと思いますか?

安田
安田

私は思いませんけど。そんなことを言ったら「あなたみたいな産業医はけっこうです」ってなりませんか?

上谷
上谷

「健康経営」が注目されていることもあって、いまのところは、どこに行っても大事にされています(笑)

安田
安田

そうなんですね。会社って利益重視のイメージですけど。

上谷
上谷

会社としても行き詰まり感があるんだと思います。メンタル不調で倒れる人はバタバタいるし「どうしたらいいんだろう」って。

安田
安田

メンタル系の研修が増えてますもんね。

上谷
上谷

だけど、どれだけ研修しても変わらないじゃないですか。私も研修講師なのに「研修だけで変わるわけないじゃない」って言ってるんですよ(笑)

安田
安田

言っちゃうんですね(笑)

上谷
上谷

心理的安全性のためには表面的な理解じゃなく、人間の体を理解する必要があります。

安田
安田

人間のカラダ?

上谷
上谷

たとえばスポーツカーはスポーツカーなりの、軽自動車は軽自動車なりのメンテナンスをして、車体に合った走り方をしたほうがいいわけですよ。

安田
安田

そりゃそうですね。

上谷
上谷

車に対しては、ちゃんとそうやって理解してるわけです。

安田
安田

はい。

上谷
上谷

機械に対しては分かるのに、人間に対する理解はすごく少ない。

安田
安田

会社は「成長が止まると死ぬ」って言われてますから。みんな怖くてブレーキなんて踏めませんよ。

上谷
上谷

だから壊れちゃうんだと思う。

安田
安田

産業医さんは「お酒飲むのを控えようね」って言いますよね。「会社の成長をちょっと控えよう」とはさすがに言えないんでしょうか。

上谷
上谷

言うときありますよ。あまりに出店ペースが速くて現場が疲弊している時とか。

安田
安田

言うんですね。

上谷
上谷

はい。私の立場で言うのもなんですけど、「ちょっと無理がありますよ。そもそも人も育っていないのに形だけつくって、意味ないですよね」って。

安田
安田

そこまで言いますか(笑)

上谷
上谷

はい。「閉店していくことが必要なこともありますよね」って。

安田
安田

みんながスポーツカーじゃないし、むしろ「成功して金持ちになりたい」って人は減ってますもんね。

上谷
上谷

そうなんです。

安田
安田

むしろ今は多くの人が軽自動車に憧れていて。「そんなスピード出なくてもいいし、リーズナブルで、快適にちゃんと移動できて、壊れなきゃいいよ」っていう。

上谷
上谷

ほんとそんな感じですよ。

安田
安田

だけど会社は何とかして、スピードを出させようとするじゃないですか。

上谷
上谷

そこに無理がある気がします。

安田
安田

とは言え、スポーツカーに憧れる人もゼロではないし。

上谷
上谷

だから「選択肢をつくろうよ」って話なんです。このスクール(BFS)のコンセプトも同じじゃないですか。

安田
安田

はい。同じです。私も働く人の選択肢を増やしたいです。

上谷
上谷

スーパーカーでいたい人もいるし、「そこまで頑張らなくていいや」って人もいますから。

安田
安田

「好きなことをやりながら平和に暮らしたい」って人が増えてる気がします。

上谷
上谷

私もそう感じますね。

安田
安田

だけれど日本社会では「社員じゃなくなったら生きていけない」と思っている人が多いじゃないですか。

上谷
上谷

だからメンタル不調になるんです。

安田
安田

ですよね。

上谷
上谷

「もう、しがみつくしかない」「選択肢がない」と思ったら、我慢するしかなくなりますよ。

安田
安田

まさに今がそういう状態なんでしょうね。

上谷
上谷

我慢しないで自分の好きなことをする練習って、してませんよね。日本人は。

安田
安田

してませんね。「嫌なことをいかに我慢して生活していくか」という訓練しかしていない。

上谷
上谷

外側の状況に自分を合わせるということばかり、ずっと求められてきて。

安田
安田

だから病気になっていくと。

上谷
上谷

はい。

 > 第8回「 好きと得意の関係 」へ続く

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