第100回 「人生のハードモード」は自分で設定している?

この対談について

地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。

第100回 「人生のハードモード」は自分で設定している?

安田

前回は生まれ変わりの話をしましたが、今回は「生まれる前」の話をしたいなと。よく「子どもは親を選んで生まれてくる」とか、「人生のシナリオは自分で書いてきている」なんて言うじゃないですか。


スギタ

ああ、そういう話もありますね。

安田

もしそれが本当だとしたら、スギタさんはどんなシナリオを書きますか? やっぱり苦労なしのハッピーエンドでしょうか。


スギタ

うーん、どうでしょう。やっぱり王道のシンデレラストーリーというか、最初は苦労しても最後はハッピーエンドになるような物語がいいですね。平々凡々で何も起きない人生よりは、多少のドラマがあった方が面白いとは思います。

安田

そうですよね。生まれる前に「今回はリスクゼロで、ただひたすら平穏無事に成功し続けるだけの人生にするぞ」と決める人は、あまりいない気がするんです。それって、ディズニーランドに行って「イッツ・ア・スモールワールド」にしか乗らないようなもので(笑)。


スギタ

確かに(笑)。あれはあれで平和でいいですけど、いつも行列ができているのはジェットコースターとか、ちょっと怖いアトラクションですもんね。

安田

そうなんです。何の恐怖心もない船に乗ってゆったり景色を見るだけじゃ、2回目は乗らない。みんな恐怖やドキドキを含めて「楽しみたい」と思って来ているわけですから。人生もアトラクションだとしたら、あえて「貧乏からスタートして大逆転」とか「山あり谷あり」のハードモードを選んでいるんじゃないかと。


スギタ

面白い視点ですね。「うまくいかない人生」の方が人気のアトラクションだから、あえてそれを選んでいる人が多いと。そう考えると、今抱えている経営の悩みとかお金の苦労も、自分が「楽しむため」に設定したイベントだと思えてきます。

安田

実際、後で振り返ると「お金がなくて大変だった時期」が一番楽しかったりしませんか?


スギタ

それすごくわかります。昔、兄と二人でタイに旅行に行ったことがあるんですけど、「1日1000円で過ごそう」と決めた極貧旅行で。死ぬほど狭い部屋で二人で寝て、切り詰めて切り詰めて(笑)。でもあれは本当に楽しかった。今、お金を持って快適な旅行をするより、あの時の体験の方が鮮明に覚えています。

安田

わかります。私もかつて一番儲かっていた時にスペインに行ったんですが、飛行機もビジネスクラスで現地では通訳も運転手もつけて人気の店に案内してもらって。という超贅沢な旅行をしたことがあるんですが、これが驚くほどつまらなくて(笑)。


スギタ

えっ、つまらなかったんですか?

安田

もう本当に、「なんでこんなにつまらないんだろう」って絶望するくらい退屈で。何の不自由もないことが、こんなに味気ないのかと。


スギタ

恵まれすぎていると物足りなくなってしまうんですかね。

安田

そうかもしれません。実際、そこから会社が潰れて自己破産したわけですけど、自己破産すると現金を99万円しか持てないんですよ。だから家を借りるのもやっとで。でも振り返るとあの頃はつまらなさは全然感じてませんでしたね。


スギタ

そういう不自由さの中で工夫するのがいいんでしょうね。僕も今年はもっと体を使って、あえてしんどい思いをして達成感を味わいたいなと思っていて。山登りとかマラソンとか。便利で快適すぎる生活だと生きている実感が薄くなっちゃう気がします。

安田

そうなんですよ。だから今もし「自分は恵まれていない」とか「人生ハードすぎる」と思っている人がいたら、それは自分が選んだ「一番スリリングで面白いコース」をプレイ中なんだと思ってほしいですね。

スギタ

死んだときに初めてネタばらしがあって、「ほら、あの時の骨折も自分で書き込んだ伏線だったでしょ?」って思い出したりするんでしょうね(笑)。

安田

そうそう。「ここで足の骨を折るって決めたのは自分じゃん!」って(笑)。子どもの絵日記みたいに大雑把なシナリオだけ決めてきて、細かいところはアドリブで楽しんでいるんだと思います。


スギタ

ディズニーランドのジェットコースターも、乗っている最中は怖くて記憶が飛ぶかもしれないけど、「絶対に最後は安全に降りられる」と知っているから楽しめるわけで。人生も「最後は絶対に大丈夫」だと魂のレベルでは知っているから、安心して波乱万丈を楽しめるのかもしれませんね。

安田

そう考えると、死ぬのがちょっと楽しみになってきませんか? 答え合わせができるという意味で。

スギタ

楽しみですねえ。死んだあとに「やっぱり安田さんの言った通り、自分で書いたシナリオだったな」って思い出すんでしょうね。

 


対談している二人

スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役

1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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