地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。
第103回 「良いお客さん」に囲まれるための近道とは

以前、どういう人が良いお客さんかみたいな話をしましたけど、自分のお客さんに対して、「この人あまり好きじゃない」とか、「なんでそんな偉そうなんだ」って思ってる経営者は意外と多いと思っていて。

そうそう。仕事では「もっと良い客に来て欲しい」と思いつつ、いざ自分がお客さんになったときにちゃんと「良い客」でいられているのか。その視点で言えば、良い客に来てほしいならまず自分が良い客であるべきなんじゃないかと。

ええ。そしてそれは意識次第で全然可能だと思うんです。「良いところがあったら褒めよう」と意識しているから良さがわかる。で、「なるほど、こうするとお客さんは良い気分になるのか」という知識にもなって、自分のビジネスに活かすこともできるわけで。

そうそう。裏を返せば、「給料のために割り切って仕事してます」っていう働き方をしていると、「お金を払ってるからいいじゃないか」みたいなお客さんばっかりになるんじゃないかと。よく「類は友を呼ぶ」って言いますけど、こういうことなんだろうなと思うわけですよ。

面白いですね。今の話を聞いてちょっと思ったんですけど、従業員を抱えている立場としては、自分が働く側に立ったときに「本当にこの会社で働きたいか」という視点を持つのが結構難しくて。自分が従業員だったらこうしたいなと思う感覚と、今の社員が求めているものがマッチしていない気もするんです。

なるほどなぁ。実際、「自分だったらこういう働き方がしたい」と設計しても、それが社員にとってメリットにならないケースもありますもんね。まさに僕も今そのあたりのギャップに悩んでいるというか、従業員の子たちの価値観にちゃんとアクセスできていないんだろうなという感覚があるんですよ。

わかります(笑)。一方で、中にはもっとやり方を決めて欲しかったり、言われたことだけをしっかりやりたい人もいる。よかれと思って自由度を高めても、それが必ずしも彼らにとっての快適な職場ではないというギャップに悩まされています。

今振り返って思うのは、自分だったらというよりも、「長く働く人にとって快適な職場」を作った方がよかったのかなと。とはいえ「自分が社員だったら働き続けられないような職場を作るのか」という葛藤もあって。

まぁそもそも「従業員」という仕事はないんですよね。会社という制度ができる前は、自分の得意なことを生業として商売して、頼ってきてくれる人にサービスを提供して喜ばれるというシンプルな構造だったわけで。

そう思います。昔は買う側も「売ってもらってありがとう」とお礼を言っていた気がするんですけど、今はお金払ってる側が偉いみたいな風潮になっているし。従業員側も、給料と引き換えに決められたことを淡々とこなすのが仕事だと思っている。本来の「仕事」からだいぶ外れている感じがします。
対談している二人
スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役
1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。


















