地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。
第49回 焼きたてチーズタルトから学ぶヒット商品の作り方

それは当然あったと思います。実際、同じように単一商品を売るスタイルの新しいブランドを次々立ち上げていらっしゃいますし。チーズタルトの次はザクザク食感のシュークリーム、続いてアップルパイと言った感じで。

そういうケースも多々あったでしょうね。それくらい「ベイク」は見事でしたから。バームクーヘン専門店とか、シュークリーム専門店なんかも増えていますが、それもどこかで「ベイク」の影響を受けたものかもしれません。

ああ、確かにそうですね。「ベイク」も今は売却されて別の会社が運営してますけど、スタート時のような爆発的な人気とまでは言えないですから。プロダクトライフサイクルでいうと、成熟期に入っているということなのかもしれませんが。

以前はすごく並んでましたけど、今はいつでも買える状況になっていますもんね。それだけ店舗数も増えて、オペレーションが円滑に回っているということでもあるんでしょうけど。ちなみに最初から売却を見据えていたんでしょうかね。

抜群のビジネスセンスですよね。とはいえ「売れ続ける」ということを考えると、ブランドの供給量を調整するのも大事ですよね。例えば「とらや」の羊羹がコンビニで気軽に買えたら、ブランド価値は下がってしまう気がします。

そのあたりのバランス感は重要ですよね。逆に「八天堂」のくりーむパンは、最初は並ばないと買えない商品でしたけど、今は通販や海外展開も始めていろんな場所で手に入るようになっています。

カルティエやロレックスなどのヨーロッパの老舗ブランドは、短期的なブームが来ても絶対に量産しないらしいですよ。200年、300年後を見据えているからこそ、ブランド価値を守ることを優先するんでしょう。
対談している二人
スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役
1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。