地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。
第72回 勝ち残る飲食店は「ジャンル選び」から

同感です。「個人ブランディング」をどうするかが何より重要な気がします。…だってね、ここだけの話、焼き鳥で2万5000円のコースも何度か行ったことありますけど、味自体は大衆店と正直そこまで変わらないじゃないですか(笑)。

イタリアンもそうですよね。頭のどこかで「イタリアンでこの値段か…」と思ってしまう。ただね、フレンチや寿司だとちょっと変わってくる。もともと「相応の値段を出さないと美味しいものは食べれない」という先入観があるのか。

まさにそう思います。今後はブランド化できるものじゃないと厳しいと思いますね。…そう考えるとパンよりケーキの方がブランド化しやすい気がします。「◯◯シェフのケーキ」と言われると、ホールで1万円でもありかなと思ってしまいますから。

確かにパンで1万円ってなかなか成立しにくいですよね。一時期ネットで1斤6000円の食パン、みたいなのが流行ってましたけど、それでも6000円ですし。

ええ。寿司職人さんは世界に出たらいくらでも稼げますよ。店構えを日本風にこだわって作ればさらに人気が出そうですし。それに比べるとやっぱり焼き鳥ではちょっと難しいのかなと。相場感の金額がガクッと下がってしまう。

そうですね。「これ以上は出せないな」っていう価格の天井が寿司よりはかなり低くなる。そしてそういう意味で僕らの業態は焼き鳥に近いんですよね。パン屋やケーキ屋でも、「これぐらいが限界だよね」っていうイメージが付いちゃっている。ここをどう打破していくのかが重要なんだろうなと。
対談している二人
スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役
1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。