地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。
第94回 なぜ「体に悪いもの」ほど、美味しく感じるのか

そこで不思議に思うのが、野生の動物のことなんです。彼らは自分に必要な栄養素を本能的に摂取しますよね。塩分が必要なら岩や土をかじったりもする。あれは「美味しい」と思って食べているのか、それとも「まずいけど体に必要だから」食べているのか、どっちなんだろうと。

ですよね。神様が生き物を作ったとき、「体にいいもの=美味しく感じるもの」として設計したはずなんです。でも人間だけが、なぜか「体に悪いもの=美味しい」と感じるようになってしまった。これこそが、アダムとイブが食べた「禁断の木の実」の正体なんじゃないかと思うんですよ。

昔、仕事中にコーヒーとチョコをつまんでいたら、無意識のうちに大量に食べてしまっていて。体が痒くなって医者に行ったら「糖分の摂りすぎです」と怒られました(笑)。それで止めたんですが、止めた直後は禁断症状のように欲しくなるんですよ。

アルコールと同じですよね。しばらく飲まないと欲しくなくなるし、久しぶりに飲むと「あれ、そんなに美味しくないな」と思うのに、毎日飲み続けていると美味しくてたまらなくなる。あれは体が悪いものに侵されて、中毒になっている状態なんでしょうね。

そうなんです。例えばカラスミやイクラなどの魚卵もそうですよね。あんなにエネルギーの塊で、大量の命を奪っているようなものを食べて、体にいいわけがない。でも人間はそれを「美味しい」と感じてしまう。

まさにそこなんですよ。人間が知恵をつけて、「調理」や「加工」を覚えたことで、本来まずいものや食べるべきでないものを「美味しく」変えてしまった。その結果、本来備わっていた「体にいいものを美味しいと感じるセンサー」が狂ってしまったんじゃないかと。

お菓子やパンなんてその極みですよね。小麦粉なんてそのままじゃ食べられませんが、砂糖や油を混ぜて焼くことで、とんでもなく美味しいものに変わりますから。僕らはそれを仕事にしているわけですが(笑)。

笑。でも最近は一周回って、「添加物を入れない」とか「素材そのものを食べる」という健康ブームが来ていますよね。ナチュラリストの人たちがやっているように、これからは過度な調理をせずに原点回帰していく流れになるのかもしれません。

どうなっていくんでしょうね。考えてみれば畜産自体が自然とは言えないんですよね。牛が本来食べる牧草ではなく、輸入したトウモロコシを大量に食べて育っているわけですから。それを食べる人間も、間接的にトウモロコシを食べているようなものです。
対談している二人
スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役
1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。


















