この対談について
株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。
第110回 会社には「恩返し」が必要?
第110回 会社には「恩返し」が必要?

へぇ、そうなんですか。じゃあ『鶴の恩返し』はあり得ないってことですね?(笑)

そうですよね。つまり恩を感じるかどうかは血の繋がりではなく、一緒に過ごした時間によるんですよね。ともあれ、それは子どもから親に対する感情であって、親からすれば「子どもに恩を返してもらおう」なんて思わないじゃないですか。

簡単に言うとそういうことです。というのも、よく「家族経営」とか「絆経営」って言いながらも、実際に社員がスキルアップして辞めていってしまうと「恩知らずなヤツだ」みたいに言う経営者がいるじゃないですか(笑)。

まさにそうなんです。経営する側の本音は、リターンを見込んだ「投資」として採用して育てているわけじゃないですか。それなのに、同時に社員からの「恩返し」を求めている。それは欲張り過ぎじゃないかと(笑)。

そういうことです(笑)。だってそもそも自分が社員だったら「スキルが身についたので、もっといい条件の会社に転職します」っていうのは理に適った判断ですよね。育ててもらった恩を返そうという発想には、なかなかならないと思います。

そうでしょうね。ちなみにウチの会社では、社員が辞めることを「卒業」と言っているんですよ。そうするとウチを「卒業」した子が次の会社で活躍しているって聞くと「あぁ、ウチでしっかり育成ができていたんだな」って思えるので(笑)。
対談している二人
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。