第145回 移住者に必要なのは、言語スキルだけ?

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第145回 移住者に必要なのは、言語スキルだけ?

安田
高市政権になってから、外国人の在留資格の審査が厳しくなりましたよね。収入もある程度なくてはならないし、日本語検定も受けさせるとか。このあたり鈴木さんはどう思われます?

鈴木
まあ、これまでがかなり緩かったみたいですからね。言葉も喋れないのに日本に来て、そのまま生活保護を申請して…なんてことを当たり前のようにされてしまうと、納税者の立場からするとちょっと複雑なわけで(笑)。
安田
本当ですね(笑)。だから長期の在留資格とか日本国籍を取るとかの場合、「日本語でコミュニケーションが取れること」が前提になるそうです。

鈴木
なるほどね。とはいえ、日本語検定ってそんなに重要なんかな? という気もしますけど。
安田
ほう。日本語のレベルチェックは必要ない、と?

鈴木
というか、最近って翻訳アプリなんかの精度がものすごく高いじゃないですか。だから難しい日本語を完璧に使いこなせなくても、なんとかなるんじゃないかなあと思うんですよね。
安田
確かに私たちも「海外に住みたいなら英語を完璧に学べ」なんて言われたらちょっと困るかもしれない(笑)。ただ、日本に永住するとか日本国籍を取るとかいう場合であれば、やはり日本語を使いこなせることは必須だという気がしますね。ちなみに鈴木さん、「国家」ってどういうものだと思います?

鈴木
国家ですか…。領土とか国民とか、ですかね?
安田
私も基本は「国民」だと思います。じゃあその「国民」が大事にする「国・国家」って、「同じ言語を話し、同じ歴史を共有し、同じ文化を大切にすること」を基盤にしていると思うんですよ。

鈴木
なるほどなるほど。そこがバラバラだと、国としての形を保てなくなってしまうというわけですね。
安田
そういうことです。同時通訳ができるんだから日本語ができなくてもいいよね、と文化や宗教なんかがバラバラのままで同じ国に住み続けていっても、それは果たして「国家」として成り立つんだろうか。そういう問題もあるみたいです。

鈴木
確かになぁ。そもそも日本語って、世界の中でもトップレベルに習得が難しい言語だと言われていますよね。それこそ生粋の日本人ですらわからない、すごく難しい言葉や言い回しもあったりするわけで(笑)。
安田
ですよね(笑)。ただ日本に来る海外の方って、けっこう一生懸命に日本語を勉強してきてくれる印象です。アニメやゲームの影響もあるかもしれないけど、それだけ「日本に来たい・住みたい」って思ってくれる人が多いのかもしれませんね。

鈴木
そうですね。たぶん今の日本って、昔みたいに「稼げる国」ではなくなりましたけど、住むには最高な国なんでしょうね。
安田
安全だし、清潔だし、食べ物は美味しいし、今はさらに物価も安い。最高ですよ(笑)。ちなみに鈴木さんは海外で永住権をもらえるとしたら、どこに住みたいですか?

鈴木
うーん、どうやろなぁ…日本と似たような国がいいかな(笑)。というか、そもそも海外に行きたいって願望がないかもしれない。
安田
ああ、それでいうと私も同じなんですけど、多くの海外移住希望者はタイ・マレーシア・ベトナム辺りのリゾート地を希望するそうなんです。

鈴木
ふ〜む、それは物価が安いから?
安田
そうそう。しかも治安もそれほど悪くない。これって今、海外の人から日本が選ばれている理由とすごく合致してると思いません?

鈴木
あぁ確かに! 海外の人にとってみたら、日本は「安くていい暮らしができるリゾート」という位置づけになってきているわけか。
安田
そういうことです。そうやって多くの人が海外から日本にやってきて「日本人」として馴染もうとしてくれるのであれば、やっぱり最低限、日本語や日本の歴史は知っておいて欲しいよね、ということだと思うんです。

鈴木
なるほどなるほど。とは言え、その人のアイデンティティや宗教観を変えろとか、歴史はこっちが正しいんだ、とかって言うのはかなり難しいですよね。
安田
そうですね。だからせめて言語だけでも共通の土台にしないと。コミュニケーションが取れれば、価値観が違っていてもある程度は歩み寄れるんだろうと思うんです。

鈴木
それで言うと、僕は「郷に入っては郷に従え」って言葉が好きなんですけど、移住希望者にはまず「郷」が何なのかということをわかってもらう必要があるのかもしれないですね。
安田
その土地毎のルールとかマナーとかですよね。特に日本人って「旅行者」には優しいですけど、いざ「隣人」になると急に排他的になったりしますから。だからこそ「日本のルールを知った上で来てくださいね」というハードルは、ある意味外国人の方への親切心でもあるのかもしれませんね。

鈴木
そうやって文化的な背景に共感できるのであれば、日本に移住してきても馴染みやすいんじゃないでしょうか。
安田
そうですね。「言葉」を共通の土台にしながら多文化の人たちを柔軟に受け入れていくことが、日本がこれから「国家としての新しい枠組み」を作っていくための課題になりそうです。

対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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