第151回 日本の銘柄米のターゲットは、誰?

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第151回 日本の銘柄米のターゲットは、誰?

安田
この対談でも何度か話題になりましたが、今回もお米問題について深堀りしたくて。この問題、なかなか出口が見えませんねぇ。

鈴木
そうですね。供給はだいぶ戻ってきているみたいですけど、値段が…。
安田
そうなんですよ。魚沼産コシヒカリのような銘柄米だと、5kgで4〜5000円もするのが当たり前になっていますから。

鈴木
ちょっと前だったら、その値段出せば10kgは買えてましたよね?
安田
そうなんですよ。だからそういう銘柄米が店頭に並んでいても、「買えない」んじゃなくて「買わない」人が増えているんですって。その代わり売れているのが、それほど味は変わらないけど安いという「古古古米」だとか。

鈴木
へぇ、そうなんですね。
安田
そうなると、せっかく美味しいお米を作っても売れないから、そのうち日本から銘柄米が消えていくんじゃないかって言われているんですよ。

鈴木
ふーむ。僕は「高いから買わない」なんて人は、そもそも銘柄米のターゲットから外せばいいと思っちゃいますけど(笑)。
安田
実は私も同感なんです。今や世界中で日本食ブームなので、「高くても美味しい日本のお米が食べたい」っていう人はいくらでもいる。

鈴木
以前にもお話ししましたけど、農家さんたちにとっては今くらいが適正価格なんですよね。農家を続けていくためには、5kg5000円というのは正当な値段なんです。
安田
そうでしょうね。とは言え日本だと「主食である米にそんなに高い金は出せない」っていう人も少なくない。私もまったく気持ちがわからないわけじゃないですが、ビジネス的観点で言えば、もうその層は商品ターゲットではないってことじゃないですか。

鈴木
仰るとおり、高く買ってくれる人向けに作るのが自然なんです。日本酒だって同じですよね。海外では評価が高いから、たとえ日本人が飲まなくなっていても、海外で高値で流通している。
安田
そうそう。ビジネス的にはそれが正しい形なわけで。

鈴木
ええ。お米にしろ日本酒にしろ、利益が出なければ品質の維持も難しくなっていく。だからこそ「儲かる層」にアプローチするのは当たり前です。
安田
イタリアの靴屋さんとかフランスのワインのシャトーとかも、世界中にファンがいるから価格が維持されているわけでね。

鈴木
地元の人はそんな高級な靴もワインも買ってないでしょうからね(笑)。
安田
そうそう(笑)。ただ日本で同じようなことをやろうとすると、途端に「日本人が美味しいお米を食べられなくなるじゃないか!」って文句が出る。…もう、どうしたらいいんでしょうね?

鈴木
「この味と品質を維持するためには、この価格でしか売りません。わかってくれた方だけ買ってください」って言っちゃえばいいんじゃない?(笑)
安田
いいですね〜(笑)。ホテルも同じですよね。東京のちょっといいホテルだと1泊10万円以下ではもう泊まれないって言われていて。「日本人が泊まれるホテルがなくなった!」なんて騒いでいる人もいますけど、結局は、そんなこと関係なく泊まる人は泊まっている(笑)。

鈴木
ですよね(笑)。10万円出しても泊まりたいと思う人だけが泊まればいいんですよ。
安田
私が思うに、日本でビジネスをやろうとすると「大衆の意見に合わせないと」と考えられがちなんですよ。でもどんな分野・業界でも、お客さんを選ぶ=ターゲットを絞るのって基本中の基本じゃないですか。

鈴木
仰るとおりです。高くても美味しいお米が食べたい、高くても良いサービスをしてくれるホテルに泊まりたい、そういう人たちが「お客さん」なんですよ。安くしろっていう人をお客さんにする必要はない。
安田
やっぱりそうですよね。そもそも日本の米作りって、田んぼが小さいからこそ精魂込めて作られているわけじゃないですか。だからコスパは悪いけれど、品質は高い。

鈴木
海外のようにヘリコプターから肥料を撒くくらいの大規模な農場とか、年間に数回も米が収穫できるような農場とかに、価格で勝てるわけがないんですよ。
安田
そうそう。だったら「安い米でいい」っていう人たちのために東南アジアとかから安いお米を輸入して、日本のこだわり米は今の価格の3倍で世界に売り出せばいいと思うんです。

鈴木
いいですね。しかも円安の今だったら、「こんなに激安で日本のブランド米が食べられるの?」って海外の人も大喜びだと思いますよ(笑)。
安田
本当にね(笑)。それにしてもなんで国は動かないんでしょうかねぇ。ブランド米に「農林水産大臣賞」みたいなお墨付きをあげて「今年のトップ10銘柄」という風にしたら、日本の高級米として話題にもなると思うんですけど…。

鈴木
フランスワインみたいにして売り出すわけか。それ、いいですね! …でも政治家が「米の適正価格維持」を公約に掲げちゃっている以上、なかなか積極的になれないんでしょう。
安田
やっぱりそうでしょうかね。いやぁ、日本の農業の未来のためにも、ターゲットを転換するなら今だと思うんですけどね。とにもかくにも、この問題は定期的に注視していく必要がありそうですね!

対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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