第20回 生涯現役が幸せだと感じられる人たち

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第20回 生涯現役が幸せだと感じられる人たち

安田
「リタイアか、生涯現役か」。今日はこのテーマで進めていきたいと思います。

鈴木
いいですね。
安田
欧米では40代でリタイアして、その後は悠々自適に暮らすことが究極の幸福だ、と考えられているそうです。実は私も、小さい頃はそう思っていたんです。労働なんてしんどいだけだから、働かずに南の島で毎日アイスクリームを食べていたら幸せじゃないか、って(笑)。

鈴木
可愛らしいですね(笑)。
安田
でも大人になってみて、そんなの暇すぎて耐えられないぞと(笑)。鈴木さんは60歳で経営から退かれる予定だと伺っていますが、その後はリタイアですか? それとも生涯現役?

鈴木
生涯現役と言っていたいなと思います。それは必ずしも「仕事」の現役である必要はなくて。なにかしらの現役。
安田
ゴルフの現役とか?(笑)

鈴木
いいかもしれない(笑)。仕事の内容によって、生涯現役でいくかどうかは変わりますよね。少なくとも私は「今の仕事」で生涯現役は考えていないですから。
安田
「仕事=時間を売って、その対価として報酬を得る」ということであれば、みんな早くリタイアして年金もらって生活していきたいと考えるでしょうね(笑)。

鈴木
そういうことです。
安田
これは私が感じていることなんですが、経営者の方たちって「生涯現役」でいたいと考える方が多くないですか? それはやっぱり、仕事そのものが楽しいと感じているからでしょうか。

鈴木
ああ、確かに多いかもしれません。きっと「何かを我慢して仕事をしている」という感覚がないんですよ。だから「辛い仕事から逃れて、南の島でアイスクリームを食べたい」という発想にはなりづらいのかもしれません(笑)。
安田
なるほど(笑)。「辛い仕事」というワードで思い出したことがあります。私、以前にウエイトトレーニングをやっていたんですよね。15年くらい続けましたかね。

鈴木
へえ、そうなんですか。ずいぶん長い期間やられていたんですね。
安田
ええ。しかもパーソナルトレーナーをつけていたので、毎月の支払いが5万円くらい。

鈴木
それは……なかなか高額ですね(笑)。
安田
ですよね?(笑) で、その時にいつも思っていたのが、「どうして高いお金を払って、こんなにしんどい思いをしなくちゃいけないんだろう」ということだったんです。

鈴木
あはは! 本質的な問いというかなんというか(笑)。
安田
とは言え、自分でやろうと決めて、お金を払って辛いウェイトトレーニングをしているわけです。一方で、「重たいダンベルを上下する仕事」って、お金をもらってもやりたくないでしょう?

鈴木
確かにそうですね。趣味とか遊びでも、仕事としてお金をもらうようになった途端にしんどくなる気持ち、わかります。
安田
そうですよね? 南の島で毎日アイスクリームを食べ続けることが、報酬の出る「仕事」になってしまったら、ものすごく辛くなりますよ。

鈴木
ああ、それは嫌だなあ(笑)。
安田
つまり経営者の方たちが「仕事が好き」と言えるのも、それが「自分の意志で選んだ仕事」だからだと思うんです。

鈴木
仰る通りだと思います。「やらされ感」がないんですよ。同じ「重いダンベルを上下する」という行動でも、お金を稼ぐために仕方なくやっているのか、自分の意思でやっているのか。その2つには大きな違いがありますよね。
安田
それで言うと、仕方なしにやっているはずの前者は、人に喜ばれて報酬まで受け取れるじゃないですか。一方で後者は、自分の意志でお金を払ってウェイトトレーニングしても、誰にも喜ばれませんよね。

鈴木
確かに(笑)。そういう点では前者のほうがはるかに「やりがい」は感じられるはずなのに、実際は違うんですね。
安田
どんなことでも「自分が楽しいからこれをやっている」という捉え方ができる人であれば、生涯現役でいられることが幸せだと思えるのかもしれませんね。

鈴木
その場から逃げたい、早く辞めたい、という気持ちでリタイアしても幸せにはなれない。逆に「生涯現役のほうが幸せだよ」と思えるならば、何をしていても幸せになれる。そういうことなんでしょうね。
安田
仰る通りだと思います。でも今の時代、「仕事っていうのはやっているだけで楽しいものなんだぞ!」なんて社長が言おうものなら、大変なことになるんですよ。

鈴木
ブラック企業だ〜とかやりがい搾取だ〜とか、すぐに叩かれそうですね(笑)。
安田
そうなんですよ(笑)。そういえば昔の経営者って、よく「仕事の報酬は仕事だ」と言っていましたよね。

鈴木
ええ。仕事をすることで、お客さんに喜ばれたり自分が成長したりすることにつながる。それは金額的な報酬よりもずっと価値があるよ、ということですよね。
安田
はい。それってわりと本質的なところを突いていると思っていて。だから私は「フリーランス」という働き方を勧めるんですよね。

鈴木
ああ、なるほど。経営者のミニチュア版、といった感じですね。
安田
ええ。フリーランスって、仕事が増えれば収入もアップしますよね。それだけじゃなく、仕事で評価されると、さらに新しい仕事の紹介も増えるわけですよ。頑張りが収入に直結しますし、誰かに必要とされていることをダイレクトに実感することもできる。そういう素敵な働き方なんです。

鈴木
仕事の報酬として、お金ももらえるし、さらなる仕事ももらえる。いい働き方ですね(笑)。
安田
そうですよね? 鈴木さんもぜひ、フリーランスで生涯現役という道も候補に入れていただければと思います(笑)。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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