この対談について
株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。
第44回 困難をカバーするマーケティング手法
第44回 困難をカバーするマーケティング手法

前回もちょっとお話しした、チラシの裏で連載していた「葬儀の知識」のコンテンツの勉強会です。「亡くなったらまず何をするのか」とか「ご自宅では何を用意するべきか」といった実践的なお話から、「葬儀屋には夜中でも電話していいの?」といった疑問解消まで、多岐にわたっていましたね。

全然いいですよ(笑)。ちなみに今はコールセンターで受けていますが、昔は全て自社で電話を取っていました。僕ら兄弟3人で電話番を回していたんですよ。

ええ。そういった事も含めて事前に学んでおけば、いざというときに慌てなくてすみますよ、というのが勉強会の趣旨でした。で、敢えて露骨な言い方をすれば、この勉強会に来られる方というのは、我々にとっては「ホット顧客」なんですね。

いや、全然です(笑)。だから葬儀の勉強会を開くことで、お客様自らウチにやってきていただく、というマーケティング手法を取ったというわけなんです。

それを「式場」でやり始めたのが、のうひ葬祭だった、と。

いえ、実は最初にやり始めたのは、隣の可児市にある葬儀会社さんだったんです。最初は「自宅や寺以外の場所で葬儀をするなんて」と反発も大きかったようなのですが、1年後くらいには式場のよさが口コミで広がるようになっていて。

なるほど、徐々に市民権を得ていったわけですね。それでのうひ葬祭さんも式場でのご葬儀ビジネスに移行していったと。

ウチの場合は、土地は借りて、建物は地元建築会社のお金で建ててもらうという方式にしました。要は、式場に対してウチが家賃を払う形です。そうすることで初期費用がぐっと抑えられる。それによってスピーディーにドミナント展開ができたんです。

ああ、なるほど。すごいなぁ。鈴木さんは今も『相続不動産テラス』で空き家の利活用という新事業もされていますが、やっぱり当時から不動産経営の知識やアイディアが豊富だったんですね。

いえいえ、本当のところを言えば、自分たちで土地や建物が用意できなかっただけなんです。財務の状況があまり良くなかったから、銀行がお金を貸してくれなくて(笑)。それである意味仕方なくそうした次第で。

なるほど(笑)。でもそこで諦めなかったからこそ「土地も建物も借りる」というアイディアが出て、さらに式場のスピード展開も可能になったわけじゃないですか。やはりマーケティング力に長けていたんでしょうね。
対談している二人
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。