この対談について
株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。
第79回 生前に葬儀や墓を決めておくのは、遺族にとって助かること?
第79回 生前に葬儀や墓を決めておくのは、遺族にとって助かること?

ご葬儀の依頼って御遺族からされることがほとんどでしょうけど、生前に本人が申し込む場合もあると聞いたことがありまして。実際『のうひ葬祭』さんでは、どうなんですか?

うーむ、そりゃそうか。ちょっと不思議な感じがしますけど、おそらく本人は「自分の死後、家族に迷惑をかけたくない」という思いで事前準備するわけですよね。とはいえ遺族からすると、変に事前に決められてしまっているとやりにくい、みたいなこともあるんじゃないですか?

これに関しては、御遺族の意見を尊重します。というのも、いくら故人が質素でいいと言っていたからとは言え、「あんな寂しい葬式をあげるなんて…」って言われてしまう可能性があるのは、御遺族なわけですよ。それは避けてあげるべきなんじゃないかなと。

そうなんです(笑)。遺された方はこれからも親戚づきあいなんかが続いていくわけですよ。だから「いいお葬式をあげられたね」って言ってもらえるように、「御遺族が納得できるご葬儀」を優先するようにしています。

つまり「ご葬儀=遺された人のための儀式」だと。ちなみに生前に本人から「質素な葬儀にしてくれ」って相談を受けた場合、「ご家族ともちゃんと話し合ってから最終決定をしましょう」というアドバイスってされたりもするんですか?

いえ、基本的にはご本人の意向をそのまま受けておきます。それで実際にご葬儀を執り行う段階になった時に、「故人様はこう仰っていましたけど、どうされますか?」とお聞きする。そうやって故人の意志も汲みとりつつ、御遺族の意見を反映していく、というような提案をしていますね。

それでいうと、私がよく聞くのが「お墓問題」で。親としては「子どもに迷惑をかけないように」とお墓を建てるんだけど、管理させられる子どもにとっては「なんでこんなところに建てたの…」と、かえって迷惑をかけている状況になるって。

だと思いますね。どちらかというと今の「親世代」って、さらにその上の世代からの「しがらみ」のようなもので苦労していた世代だと思うんです。だから「子ども世代」のためにもその「しがらみ」を断ち切ろうとしているのかなという印象ですね。
対談している二人
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。