第97回 「政治家」もひとつの職業に過ぎない

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第97回 「政治家」もひとつの職業に過ぎない

安田
先日、前澤友作さんが出版された『国民総株主』という本を読んだんですが、そこに面白いことが書かれていたんですよ。

鈴木
ああ、その本、僕もちょっと興味があったんです。どんなことが書かれていました?
安田
「政治家が経済を動かしているように見えるけれど、実は逆で、経済が政治家を動かしているんだ」というようなことです。世の中が思っているのとは逆なんだよと。

鈴木
へぇ。確かに政治をやるにしてもお金が必要ですもんね。そういう意味では政治も経済活動だと。
安田
そうそう。でもね、それって政治家以外も同じじゃないですか。何になるにも、何をするにもお金がかかる。つまり世の中の仕組みは「経済だけ」しかないんじゃないか、という気もしてきたんですよ。

鈴木
ほう。つまり「政治」も存在しないっていうことですか?
安田
政治自体はあるんです。でもそれは、「経済」という仕組みの中の一部であって、そこを担う「政治屋さん」という人たちがいるだけだと。

鈴木
ははぁ、面白いですね。弁が立ったり人望を得るのがうまい人が、「政治家」という商売をやる。するとそこに国や自治体というスポンサーがついてお金が出てくると。…まるで力士とタニマチとか、アイドルとファンみたいな関係ですね。
安田
確かに(笑)。いずれにせよ、そこには大きなお金の流れがあり、場合によってはお金が政治の方向性を決めている。つまり政治家の仕事も結局は「お金を動かす」という経済活動なわけです。

鈴木
「国民のため」とか「国を豊かにするため」みたいなことを皆さん言うけど、そういうことを言ってお給料をもらうのが「政治屋さんの仕事」だと(笑)。
安田
そういうことです(笑)。そしてそれは政治家だけじゃなくて、ほかも同じなんです。例えば医者もそうですよ。人の命を助ける崇高な人たちって思われているけど、実際は数ある「職業」の中のひとつに過ぎない。だからじゃんじゃん金儲けしたっていいわけで。

鈴木
むしろ「商売」として成り立たせるなら、しっかりと稼げないといけませんもんね。一見無駄に思えるような治療でも、それを必要だと思う患者さんがいて、ちゃんと売れているなら、それはビジネスとして成り立っているわけで。
安田
そうなんです。そこに正当性がなかろうが、あるいは無駄なものに見えようが、誰かがお金を出して買うならそれは商品として成り立っている。例えば我が家にある一番無駄なものって、amazonで買った水晶玉なんですけど(笑)。

鈴木

水晶玉?! そんなもの持ってるんですか(笑)。

安田
はい(笑)。水晶玉をずっと見ていると、水晶玉の中に未来が見えてくるっていう話を聞いたので、試してみたくなったんですよ(笑)。まぁ、2回くらい見つめただけで、その後は部屋の隅に放置されているんですけど。

鈴木
そりゃそうなるでしょうね(笑)。確かにそれは無駄な買い物だ(笑)。
安田
でしょう?(笑) だけど私は確かにお金を払って買ったわけだから、「商売」としては成立しているわけですよ。だから皆さん政治家のことをすごく叩いたりしますけど、純粋に「経済活動なんだ」と思えば、別に怒るほどのことでもないと思っちゃって。あなただってお金のために仕事しているでしょ? 政治家も同じですよって。

鈴木
ふ〜む、確かにそうですね。そういえば僕らの仕事も、昔はよく「人の死で儲けるんか」なんて言われたもんです。そうは言っても僕らだって食べていかなあかんしな〜という話で(笑)。
安田
笑。とにかく、人間社会のベースにあるのは「経済」なんだと考えるとストンと理解できる。政治も医療もただその枠組の中のひとつなんだと思えば、腹も立たなくなりますよって話です。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

感想・著者への質問はこちらから