泉一也の『日本人の取扱説明書』第45回「天災の国」
著者:泉一也
日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。
クイズです。世界全体でマグニチュード6以上の地震は、年間で何回起こっているでしょう。※2000年-2009年における年平均とする。
答えは104回/年。3、4日に1回は世界のどこかで起こっている。
では同じ質問を「日本」に限定すると答えはいくつでしょう。
答えは、21回/年。17日に1回起こっている。
数打ちゃ地震の予言は当たる。
日本21回/年、世界全体104回/年からわかるように、中〜大型地震の20%が日本で起こっている。世界における日本の国土面積はたった0.25%にも関わらず。
では、台風は1年間で平均何回起こっているか(1970年-2011年において)。世界平均は87個/年。およそ4日に1個発生している。
各国の台風上陸回数でみると1位は中国の6.7回/年、2位はフィリピンの4.0回/年、3位に日本の3.7個/年である。国土面積で比較すると、フィリピンと日本が突出して多い。
こういった天災における経済被害額は、1979年から2008年までの世界合計で見ると1兆7361億ドル。そのうちの12%にあたる2068億ドルが日本の被害額である。繰り返すが、国土面積はたった0.25%にも関わらず。
ここでいきなり江戸時代。8代将軍徳川吉宗の時代である1721年には日本の人口が約3100万人、GDPは約254億ドル(一人当たり800ドル)であった。当時、他国はどうだったのだろう。大航海時代が始まった英国では人口が約925万人、GDPは約107億ドル(一人当たり1150ドル)。暴れん坊将軍の時代、人口は英国の3倍でGDPは2.5倍。国力では日本がだいぶ大きい。さらに当時、世界人口が6億程度だったので5%つまり20人に1人は日本人だった。
地震に台風といった天災は、地球48億年の話なので江戸時代も現代と同程度だったとみていいだろう。日本は世界的に見ても天災が異常に多いにも関わらず、人口が増え経済的にも豊かになったのはなぜか。それは、天災といったマイナス事象が、日本の豊かさに寄与しているからだろう。
先日亡くなった日本文学研究者のドナルドキーンさんは、東日本大震災の後、日本への永住を決めて日本国籍を取得した。被災した日本人の姿勢・生き方に感銘を受け、日本人になりたいと心の底から思われたそうだ。キーンさんは太平洋戦争の直後、日本を訪れたとき焼け野原から立ち上がる日本人たちの姿に魅了され、日本の研究が本格的に始まったという。