第62回 「〇〇年卒業モデル」の理想形

この対談について

住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。

第62回 「〇〇年卒業モデル」の理想形

安田
前回、新卒を5年で卒業させる前提で採用する「5年ローテーションモデル」についてお話させていただきました。渡邉さんとしては、どう思われました?

渡邉
いや〜、すごくおもしろかったです。定着率だけでなく採用力まで上がるというのが画期的ですよね。
安田

そうなんです。そのためにも「辞めていった人=卒業生を活躍させる」ということが大事で。


渡邉

ははぁ、なるほど。これから働く人にとっては、卒業生の活躍が未来の自分像なわけですもんね。

安田
そうそう。だから転職先を紹介してあげたり、せめて推薦文を書いてあげるくらいはやった方がいいと思います。ちなみに、それですごくうまくいってるのがリクルートなんですよね。

渡邉
ああ、リクルートはたしか「35歳卒業モデル」と言われてましたよね。35歳になったら独立するか転職するかという。
安田
そうそう。リクルート内で役員になるような人はもちろん残りますけど、基本的には転職していく人が多い。例えばリクルートでクリエイティブの能力を付けてから電通に入ったり。

渡邉
へぇ。確かに現役で電通に入るなんて、何かしらのコネがないと難しいですもんね。それをリクルート時代の実績でクリアすると。
安田
そういうことです。そうやっていわゆる「卒業生」が活躍すればするほどリクルート社の採用力は上がっていくんですよ。

渡邉
なるほどなぁ。その人の市場価値を高めてあげて、稼げるようにしてあげる。「自社の採用力を上げるため」と思えば、卒業生を活躍させることにも違和感なく注力できそうですよね。
安田

そうそう。それがうまく回るようになれば、もう人不足に悩むことはなくなるでしょう。


渡邉
ちなみにどんな職種でも当てはまるものなんでしょうか。例えば建築業界だと、現場系の仕事なんかは特に、一人前になるのに10年15年とかかる職種もあるんです。5年勤務で市場価値を上げるのはなかなか難しいんじゃないかと。
安田
うーん、確かにそういうケースには合わないかもしれない。ただ逆に言えば、そもそも「15年いてくれる人を採用する」ことが至難の業じゃないですか?
渡邉

確かに。と考えると、5年以上かかる職種に関しては、既に経験やスキルを持った人を中途採用するのがいいかもしれませんね。

安田

そうですね。これからは各年代の転職者がマーケットに出てくるようになるので、その中で即戦力を見つけることも可能だと思います。


渡邉
昔と違って「新卒で入ってその会社で最後まで」っていう人は相当レアな存在になりましたもんね。
安田

ええ。20代30代は既に、キャリアづくりのためにどんどん転職していくのが当たり前です。一方でこれからは55歳以上の転職者も狙い目かと。


渡邉
ははぁ、なるほど。経験やスキルは申し分ないですもんね。しかもその層を積極的に採りに行く大企業は少ないでしょうから、競争率も高くない。
安田

ええ、まさに。さらに言うと、「稼がなくちゃいけない年代」をちょっと過ぎているので、能力のわりにそこまで報酬が高くないんですよ。大谷翔平選手も今はバリバリ全盛期だから契約金も1000億とかですけど、「最後にのんびりやりたい」という55歳以降だったらけっこう安くなると思いますよ。


渡邉
なるほど、わかりやすい(笑)。実際イチローも最後の方は安かったですもんね。「やりがい」と「時間の自由」を求めている年代だから、「報酬」のプライオリティが下がるわけですね。
安田

そうそう。気持ちに余裕があるので、教育側に回ってもらうのもいいと思います。実際60代と20代ってすごく相性がいいんですよ。ある程度年齢が離れていることで、変な反発心も生まれないし、60代からすると孫世代なのでめちゃくちゃかわいいわけで。


渡邉
ああ、確かに。5年6年教えてもらって世代交代していくみたいな感じで、ちょうどいい期間ですよね。20代未経験者と50~60代の経験者をセットで採るのはよさそうです。
安田

終の棲家ならぬ「終の仕事」として、「この仕事とこの会社が大好きだから、死ぬまで頑張りたい」という愛社精神の高い人が採用できたりするんです。

渡邉
なるほど〜。でも一方で、年齢を重ねることで考えが凝り固まっている人もいますよね。その辺の見極めが重要になりそうです。
安田

いますねぇ。でもその見極めさえしっかりすれば、応募者が来ないということはないので、いい人は採れると思いますよ。

渡邉

なるほどなぁ。いろいろお話を聞いていると、「辞める前提で組織を作る」くらいの方がいいのかもしれないと思えてきました。そういえばワイキューブも独立志向の人をターゲットにしてましたけど、近い考え方だったんですかね。

安田

うーん、近いようで遠いというか。独立志向の人を採ってる割に、卒業していく人を応援する感じでもなかったですから。「独立志向の人を採用して、できれば定着してほしい」という感じだったんじゃないかと(笑)。

渡邉
いいとこどりだったわけですね(笑)。ちなみにこの5年ローテーションモデルは建築業界に近いような、現場中心の業種でも実践されてるんですか?
安田

私が今対談している広島のケーキ屋さんは「3年卒業制」にしてうまくいってますね。

渡邉
3年ですか! さらに短いんですね。
安田

そうなんです。皆専門学校を出てパティシエになるんですけど、実際働きだすと同じ作業の繰り返しだったりで、めちゃくちゃ離職率が高いらしいんです。下手すると半年とかで辞めちゃうくらい。

渡邉
ははぁ、建築業界より厳しいかもしれない。
安田

それを3年で転職してもいいし社内で異動してもいいし、どちらにしても応援しますよ、としたわけです。そうしたら定着率がめちゃくちゃ上がって、最低でも3年は続けてくれるし、その後残る人はしっかり残ってくれる。

渡邉
へぇ。まさに「卒業モデル」の理想形ですね。

対談している二人

渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役

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1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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