第70回 業務委託にも「ブラック」と「ホワイト」がある?!

この対談について

住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。

第70回 業務委託にも「ブラック」と「ホワイト」がある?!

安田

前回のお話では、「業務委託の方が経営者の考える“理想の社員”に近いんじゃないか」という話をしましたね。だからもっと積極的に業務委託を活用したほうがいいよと。これ、中小企業では特に重要だと思うんですよ。


渡邉

同感です。「その道のプロ」でプロ人材を紹介していても、「中小企業こそ業務委託の活用が欠かせないな」と感じますから。

安田

大企業であれば、ニッチな仕事でも量が多いので、スペシャリストを雇用してもペイできる。でも中小企業では現実的に難しいじゃないですか。そう考えると、スペシャリストほど業務委託にお願いする時代になっていくんじゃないかと。


渡邉

そうなんですよね。とはいえ、今中小企業で業務委託を正しく使えているかというと、そうじゃないことの方が多い気がするんです。例えば社会保険を払わないために業務委託契約にしていたり。

安田

いわゆる「ブラック業務委託」ですよね。でも中小企業が導入すべきは「ホワイト業務委託」の方で。


渡邉

「ブラック業務委託」と「ホワイト業務委託」ですか。なるほど、おもしろいですね。具体的にはどう違うんです?

安田

「ブラック業務委託」は、基本的には会社が管理する必要のある人です。中身は社員と同じなので、成果を求められない代わりに報酬も高くない。一方「ホワイト業務委託」は、仕事を自分で管理できて成果を出してくれます。その代わりに報酬が高い。


渡邉

ははぁ、なるほど。つまりいま中小企業で業務委託の話が出るとしたら、「ブラック業務委託」の方を指しているのかもしれませんね。

安田

そうでしょうね。社会保険を払わなくていいし、契約も切りたいときに切れる。短絡的にそう考えてしまうんでしょうけど、実際のところ管理が必要な場合は雇用契約を結ばなくてはいけないんです。労働法でそう決まっているので。


渡邉

業務委託だったら管理や指示命令をしてはいけませんもんね。…ふと思ったんですが、「雇用」と「業務委託」だけしかないから、「ブラック業務委託」みたいなものが出てきてしまうんじゃないでしょうか。中間の契約形態があればいいような気もするんですけど。

安田

法律的にはどちらかにはなりますからね。ただ会社の中の扱いとしてはできなくはないと思いますよ。例えば「週2正社員」なんかも今増えてますし。


渡邉

ああ、確かに。時間で管理しているのは普通の社員と一緒だけど、フル雇用に比べたら業務委託に近いというわけですね。確かにそれだと「業務委託っぽい社員」という感じです。

安田

ええ。あとは在宅リモート勤務だと、雇用であっても自己管理が不可欠なので、働き方としては限りなく業務委託に近くなりますよね。いずれにせよ「お互いが納得してその形態にしている」ことが必須だと思いますが。

渡邉

確かに、業務委託のような働き方をしたいけど、契約形態は雇用がいいという人もいますもんね。今は本当にいろんなスタンスがありますから。

安田

いろんな意味での過渡期ですよね。中でも社員側のモチベーションや考え方はこの4~5年でかなり変わったと思います。以前は会社と労働者の関係って明確に主従関係だったじゃないですか。今ほど簡単に転職もできませんでしたし。


渡邉

そうでしたよね。転職なんてリスクしかないから、一度就職したらなるべく長く同じ会社にいたいと考える人がほとんどだった。

安田

転職回数が多いと、それだけで再就職が難しくなったりしてましたもんね。今はむしろ転職した理由によってはプラスになることもあるくらいですから。それだけ人不足ということもあるんでしょうけど。


渡邉

うーん、確かに人不足と言われ続けてますよね。でももしかしたら、実はマッチングできていないだけで、人は不足していないんじゃないかという気もするんです。

安田

ああ、それはあるかもしれませんね。実際、「人不足ではなく時給不足だ」なんて言われることもあって、栃木県の那須にある遊園地が時給1,200円を2,500円にしてアルバイトを募集したら、100人くらい応募が来たんですって。


渡邉

ははぁ。ちゃんと給料を払えばいくらでも人は来るということですよね。それにしてもその遊園地、ずいぶん思い切りましたね(笑)。それだけの時給アップよくできたなぁ。

安田

「誰がやっても成果が変わらない仕事」だったらそんなに払えませんもんね。それだとどうしても、できるだけ時給を抑えてその分利益を出すという発想になってしまう。


渡邉

そうですね。どうやって価格を上げていくかを考えないと。

安田

でも100人も応募が集まるなら、その中でトップの2~3人を採用すればいいわけで。優秀な人を採用することで、生産性は上げやすくなるんじゃないでしょうか。

渡邉

確かに確かに。給料も高いから働く人のモチベーションも上がりますし、好循環が生まれそうです。でも逆説的に考えると、「中小企業は利幅の少ない商売をしたらダメ」だということになっちゃいますかね。

安田

絶対ダメでしょうね。社員1人あたりの収益をいかに最大化するかという発想にならないと。そのためにも値上げと賃上げを最優先に考える必要があると思います。

渡邉

社員にしても業務委託にしても、そこにかかる費用は値上げのための投資だと。

安田

ええ、全くその通りだと思いますね。

渡邉

考えてみれば、昔から伸びている会社は、人に対してかかる費用を投資と捉えてましたよね。社員=身内と考える会社と比べると合理的というか、ある意味ではドライなのかもしれませんけど。

安田

その方が採用力も定着率も上がると思いますよ。今はどちらかというとウェットな会社ほど人が辞めていきますからね。


対談している二人

渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役

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1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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