住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。
第85回 労働人口3000万人の未来に生き残る経営とは
今日はですね、渡邉さんと「日本の人口減少」についてお話してみたいんです。
それはまた大きなテーマですね(笑)。
ええ。こんな話を渡邉さんとするようになるなんて、ワイキューブで一緒に仕事をしていたころには考えもしませんでしたけど(笑)。それはさておき、これから人口は今の半分くらいまで減るらしいんですよ。
そうらしいですね。今が1億2000万人くらいだから、6000万人くらいまでは確実に減ると。
そうそう。つまり現在の日本のGDPを維持しようと思うと6000万人の移民を入れないといけない。でも反対する人も大勢いるし、国民の半分が移民になってしまったら、もはや日本と言えるのか、という観点もあるわけです。
うーん、確かに。そう考えると現実的には難しいですよね。かといって本当に人口が半分になってしまったら、経済が破綻してしまいそうです。今ですら社会保障費とか税金とかめちゃくちゃ高いのに…
そうなんです。だからこれからは人口減を前提として、日本の経済を組み立て直していかないといけない。そうなると、1人当たりの生産性を上げることは避けて通れないだろうなと。
なるほど。それは全国民が向き合わないといけない課題ですね。…とはいえ具体的にどうすれば生産性って上がるんですかね。
例えばアメリカとか先進国でも上位の方は、既に平均年収が1000万円を超えています。でもそれはお金持ちが引き上げているだけで、実際はかなり貧富の差があるわけです。その点日本だとそこまでの開きはなくて、かなり多くの人が会社員として平均的な収入で暮らしている。つまり逆説的に言えば、会社員の平均年収を1000万円にすれば、全体の生産性はかなり上がると思っていて。
ははぁ、なるほど。つまりたくさんいる会社員の皆が1000万円を超えるような設計をすると。でも経営者にしろ会社員にしろ、そういう意識でいる人って少ないんじゃないですか?
そうでしょうね。会社員の立場で年収1000万円なんて、夢のまた夢だと思っている人がほとんどでしょう。
キャリアの長いおじさん世代ほどそう思っている気がしますね。でも10代〜20代は、逆にそれが当たり前という意識で動ける可能性があるんじゃないでしょうか。
確かに。若い世代は「今まではこうだった」という固定観念がないからこそ、1人当たりの生産性を上げることに対して柔軟に考えられそうですね。むしろ自然に「1000万円稼げる環境」を目指して行動しているのかもしれない。
感覚的にもDXが当たり前に馴染んでいるというか。息子と話していても、「なんでそんな効率の悪いことをやってるの?」と言われたりしますから(笑)。
笑。そういう意味で言えば、上の世代は危機感が薄いのかもしれませんよね。人不足で嘆いていても、「他も大変だし仕方がない」とどこかで思っている。でも実際、今の時点で人不足になっている会社って、けっこう危機的だと思うんです。採用に関しては、これからどんどん厳しくなる一方ですから。
ああ、確かに。人口が減れば、労働人口も必然的に減っていくわけで、今よりさらに採用は難しくなっていくってことですもんね。
ええ。労働人口は今の7000万人から、半分以下の3000万人くらいまで減るらしいですから。「日本人は今後増えることはないんだぞ」という前提で経営しないといけない。でも中小企業で実際にそう思ってる人がどれくらいいるのかなと。
そこをわかってる社長が、初任給を30万円にしたりするんでしょうね。そういう意味では、安田さんの仰る「社員の平均年収1000万円」っていうのも、乗り越えないといけないハードルという感じがしてきますね。
そうなんですよ。ただね、やっぱりそれを実現するにはかなりの改革が必要で。今までのように「一人工いくら」みたいな計算をしてるうちは難しいんじゃないかなと。しかも当然のことながら、社員に年収1000万円を払った上で、かつ会社に利益が残るようにしないといけない。
そうそう。つまり今までは「人件費を抑えて利益を出す会社」がいい会社とされてましたけど、これからは社員に正当な報酬を支払い、さらに生産性を高められる会社こそが「いい会社」なんでしょうね。一斉に人が離れていってしまったら、対応すらできないわけで。
そうなんですよ。初任給30万円が当たり前になったら、当然学生は22〜3万円の会社を選ばなくなります。同じように、年収1000万円が当たり前になれば、そこそこ優秀な人は400〜500万円の会社には行かないでしょう。
そりゃ1000万円を払う会社に人材が集中するでしょうね。1000万円を払えない会社は、そこからはじき出された人を拾い集めて会社をやるしかない。厳しいなぁ。
それを考えたら、社員に高い給与を支払う仕組みを作るか、社員を雇わずにDX化して社長と家族だけで運営するか、もしくは完全にひとりビジネスにするか。そのどれかしか選択肢はない気がします。
確かに。でも今はそのむしろその逆の方向に進んでる気がしますね。応募してくれた人はとにかく採用してしまって、その人達でもなりたつ形に事業を変えていくような会社が増えている。
ははぁ、なるほど。まぁ、そうやって対処療法的に対応して、この苦しい時期をなんとか乗り切りたいという気持ちもわかります。でもそれではジリ貧というか、いつかは破綻する道ですよね。1000万円払う会社が増えて、どんどんそちらに人が集まっていけば、ますますレベルを下げるしかなくなっていくので。
そうですよね。どんどんレベルを下げ続けていくうちに、まともに出社すらしてくれない人たちでも雇わないといけなくなるかもしれない。
突然音信不通になったり、返事もしてくれないような社員で、どうやって商売するのっていう感じですよね(笑)。
いやぁ、恐ろしいですね(笑)。まぁそこまでは極端だとしても、給料分働いてくれればまだいい方なのかもしれませんよね。最近は給料分すら働きたくないっていう人も増えてるみたいですし。
そういう人たちに対応させると、仕事をすればするほどお客さんが離れていってしまうようなことも起こりうるわけです。そんなのやるだけ損というか、マイナスですよね。だったら無人化に舵を切った方がよっぽど楽だと思いますよ。
本当ですね。一切社員を雇わずに、必要があればうちのようなところで外部の人材に依頼すると。
仰るとおりです。そうすればあとは役員だけで全然回りますから。実際、役員5人と外注だけで100億円の売上を上げている会社もありますし。
役員と外注だけで成果を出せる仕組みを作ることができれば理想ですよね。特に今は外部人材の相場も上がってきていますから、その分のコストを回収できるビジネスモデルを構築するのが鍵になりそうです。
そうですね。いずれにせよ、人が絡むビジネスをやるなら、「儲かるビジネス」にする必要があるということだと思います。私自身、外注する時には「この単価で発注を続けたら、この人は年収1000万円を超えるのか」ってことを常に考えてますから。それ以下には絶対に値切らない。
ああ、なるほど。外注であってもその意識は大事ですよね。
ええ。「年収1000万円」を一つの基準として、そこを超えるビジネスモデルを本気で考えるか、そうでなければ早めに身内だけでやる方向に切り替えた方がいいでしょうね。
対談している二人
渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役
1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。