第93回 人が足りなくなる時代のビジネス戦略

この対談について

住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。

第93回 人が足りなくなる時代のビジネス戦略

安田

日本は人口がどんどん減ってるわりに、労働力自体はまだそこまで落ちていないと言われてますよね。とはいえそれも時間の問題だろうと思うんです。


渡邉

確かに。今は外国人労働者や定年過ぎてからも働く人が増えたり、共働きの一般化などの影響で、まだ本格化していないだけって感じですもんね。リクルートワークス研究所のデータにも「労働力の供給量が需要を大きく下回るだろう」とありましたし。

安田

そうそう。つまり本格的に減っていくのはこれからなんですよ。労働力の需要と供給のバランスが崩れて、必要な労働量に対して労働力が全然足りないという状況になってくる。


渡邉

そうですよね。宅配便やタクシーなどが機能しなくなると、生活もかなり変わってくるでしょうね。これからますます増える高齢者にとっても、生きづらい世の中になりそうです。

安田

本当にね。円安がさらに進めば外国人労働者もなかなか来てくれなくなるでしょうし、企業としても「社員に無駄な仕事はさせられない」という状況になってくると思うんです。


渡邉

確かに。ただでさえ足りない人手を、余計なことには使えませんもんね。視点を変えれば、本当に必要な仕事だけが残っていくのかもしれない。

安田

そうそう。特に中小企業では、「なくても困らない」仕事はどんどん淘汰されるでしょう。大企業が若い人を囲い込んでしまって、ただでさえ人手不足なわけで。


渡邉

ふーむ、そう考えると今後は「大企業で働く人」の割合が増えてくるっていうことなんですかね。

安田

そう思います。今は中小企業で働く人が7割くらいですけど、今後はもっと少なくなるでしょう。どちらでも働けるなら大企業にいきたい、と考える人が大半でしょうから。


渡邉

確かになぁ。つまり中小企業で働く人が減っていく未来は避けられないと。その時にどう対応するかが重要ですよね。

安田

それで言うと、中小企業には「社外に出してもいいような仕事」も結構あると思うんです。よく役所が「1人でできる仕事を3人がかりでやっている」なんて揶揄されることがありますけど、中小企業にもそういう部分はあって。


渡邉

これからはそういう仕事は外注するようになっていくと。でも確かに、もはや採用の上手い下手の問題じゃないですもんね。そもそも日本全体で労働力が足りていないわけで。

安田

ええ。意図的に人員を減らすという話じゃなく、そもそも配置できる人員が集められないわけなので、これはしょうがない。

渡邉

その分、先ほど出た宅配便やタクシーにしても、ドローンや自動運転などの技術革新が進んでますね。建築業界でも「3Dプリンタで家が建つようになる」なんて言われてますし。

安田

必要は発明の母、ということなんでしょう。結果として、中小企業も新しい技術を取り入れざるを得なってくる。例えば飲食業界だったら、調理から接客まで無人化したりとか。


渡邉

ああ、既に大手チェーンでは取り入れているところもありますからね。

安田

介護もどんどん無人化が進むでしょうし、物流も自動化、小売も事前にクレジットカードを登録しておいて商品を持ち出す形になるんじゃないでしょうか。


渡邉

ははぁ、なるほど。でもそう考えると、付加価値の高い仕事にしか人は従事できないということですよね。

安田

そうなんですよ。私は最近「日本人の平均年収を1000万円にしよう」と公言しているわけですが、これはどちらかというと、「それだけの価値を発揮できる仕事以外は人を配置できなくなるんじゃないか」という話でして。


渡邉

うーむ。でも再三話しているように、もう人が余っていないわけですからね。採用のやり方を工夫するとかいうレベルの話ではない。

安田

そうそう。現実的に、必要な労働量よりも少ない労働力しか用意できないんです。先日も大きなニュースがありましたが、陥没した道路を直せる人がいない、なんていう状況があちこちで起こってくるはずですよ。


渡邉

恐ろしい未来ですよね。根本的な構造を変えていかないといけない気がします。でもどこから手を付けたらいいんでしょう。

安田

例えば10階建てのビルにいろんな中小企業が入っていたとしたら、今ってそれぞれの各フロアに経理や総務がいるような状態でしょう? マクロで見るとすごく無駄じゃないですか。

渡邉

ああ、確かに。ビル全体で経理1人、総務1人というくらいに効率化すべきなのかもしれませんね。

安田

そうですね。もっともそれは「効率化」というより、「人間が直接提供するサービス」の価格が上がっていくってことです。ポジティブに言えば「人間の価値が上がる」。結果、「うちは調理も接客も人間がやりますよ」というのが強みになる時代が来るかもしれません。

渡邉

ああ、なるほどなるほど。「この人が作ったものだから買いたい」と思われるデザイナーや、「この人の接客が素晴らしいから通いたい」と思われる接客の達人がいる会社とかもそうですよね。

安田

仰るとおりです。例えば焼肉店なら、肉を仕込む専門の職人と、その人の技術を動画配信して集客する社長、みたいな組み合わせが流行るかもしれませんね。

渡邉

ははぁ、まるで「タレントとマネージャー」みたいな関係ですね。そうなると、社長の役割も大きく変わっていくのかもしれませんね。

 


対談している二人

渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役

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1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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