ブランドとは何か?
それを考え続けるのが私の仕事である。
そこにはいくつもの答えがあり、
その答えによってブランドづくりのやり方は根底から変化する。
損得を越えて、ある特定のターゲットの心を、
強烈に引きつける力。
それが手に入れば、
熾烈な価格競争からも抜け出すことが出来る。
ではその力は、どこから生まれて来るのだろうか。
新しい商品やサービスを展開するとき、
ブランドに直結する重要な要素として、
私は三つのことに徹底的にこだわる。
それは、ネーミング、キャッチコピー、
そしてロゴを含めたデザインである。
大企業では当たり前と言える戦略だが、
中小企業でここに投資出来る会社は驚くほど少ない。
商品名もキャッチコピーも日本語なので、
お金をかけなくても自分たちで考えることが出来るし、
ロゴやデザインもネットで探せば、
格安のデザイナーがすぐに見つかるからだ。
お金をかける必要のないものには、極力お金をかけない。
それが資金力に乏しい、
多くの中小企業経営者の常識ではないだろうか。
だが商品は、作っただけでは売れていかない。
当然のことながら、販売には労力もコストもかかる。
トータルで考えた時、一番高いのが人件費、
そして宣伝広告費なのである。
マンパワーで売るか、あるいは広告で売るか。
いずれにしても、その戦場は激戦区である。
なぜなら、同業他社も同じように、
そこに労力とコストをかけて来るからだ。
他社が投資をしないところに、投資をする。
それが最も効率のいいやり方だ。
故に私は、先述の三点に徹底的にこだわるし、コストもかける。
だがこの三点は、ブランドづくりの必要条件ではあるが、
十分条件ではない。
強力な求心力を生み出すブランドコアは、
もっと目には見えないところに存在するのである。
ロゴでもネーミングでも、
キャッチコピーでもない、目には見えない何か。
それは「コンセプト」と呼ばれるものである。
コンセプトとは、言い換えれば「企み」である。
誰かをあっと言わせたり、とんでもなく喜ばせたり、
笑わせたりする企み。
それは、マーケットではなく、人間の頭の中からスタートする。
こんな面白いことをやってみたい。
世の中をあっと驚かせてみたい。
その想いから全てはスタートする。
もちろん、人を惹きつけるためには、
ただ面白いだけでは不十分だ。
それは、善意ある企みでなくてはならない。
善意ある企みや、規格外の冗談、
あるいは損得を越えた、壮大な遊び。
それを本気でやろうとする時、
そこには理解を超えた不思議な求心力が発生する。
面白い遊びを思いついた子供の周りに、
どんどん子供が集まって来るように、
面白い企みの周りにはどんどん人が集まって来る。
その企みを言語化したものがコンセプトである。
ネーミングも、キャッチコピーも、ロゴデザインも、
コンセプトを表現するための道具に過ぎない。
面白く、壮大な、誰かの企み。
それこそがブランドの正体なのである。
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