ディズニーランドも、超高層マンションも、
フェラーリも、ロレックスも、ルイヴィトンも、
すべては欲の塊である。
嫌らしい意味で言っているのではない。
欲が無ければ誕生しなかった、
ということが言いたいのである。
見たい、知りたい、体験したい、手に入れたい、という欲。
欲こそが人間のベースであり、
エネルギーの源泉であり、人類発展の礎でもあるのだ。
人間の欲は図抜けている。
もし人間がこれほどの欲を持たなければ、
自動車を発明することも、飛行機を飛ばすことも、
宇宙に行くことも、なかっただろう。
そしてもうひとつ、お金というツールが誕生しなければ、
これほどまでに欲を具現化することは出来なかっただろう。
お金の誕生によって、人間の欲は数値化された。
数値化されることによって、欲は具現化され、
流動化され、売買されるようになった。
売買されることで、欲とお金は増殖し続けてきたのである。
超高層マンションを建てて、そこに住んでみたい。
その欲を実現するためにはお金が必要だ。
お金を払って土地を買い、設計図を描いてもらい、
建築工事をやってもらう。
土地にも、設計図にも、建築工事にも、値段がついている。
だから金さえあれば買える。
つまり、金さえあれば超高層マンションを建てることも、
そこに住むことも、可能なのである。
当たり前じゃないかと、思われるだろうか。
もしそうだとしたら、あなたはこの社会の構造に、
完全に取り込まれている。
これは異常なことなのだ。
あらゆる欲が数値化され、
お金というツールと交換可能である状態。
それは、全ての人間がお金を信じることによってのみ、
実現する奇跡。
言い換えるならば、社会の秩序と発展のために施された、
必要不可欠な洗脳。
それを受け入れることによってのみ、
この状態は奇跡的に保たれているのである。
お金を信じることによって、人は自分の土地を売る。
図面を描く。工事をする。
お金というイリュージョンを信じていなければ、
この奇跡は起きない。
ただの紙切れを、あらゆるものと交換可能な
万能ツールであると信じる。
信じることによって、奇跡は起こり、
高層マンションが誕生する。
出来上がったマンションは、その瞬間から数値化され、
お金と交換可能なものとなる。
つまり、お金によって人が動き、
人が動くことによって価値が創造され、
その価値がまたお金に変わり、増殖していくのだ。
増えたお金は、更に多くの人を動かし、
更なる大きな価値を生み出していく。
お金が増える分だけ、この地球上には価値が増え、
その価値を手に入れたいという欲が増え、
欲によってまたお金が増えていく。
尽きぬ欲望と、完璧に信じ込まれたイリュージョン。
その相乗効果によって、
地球上には新しい価値が生まれ続けるのである。
私たちはいつまで、
このイリュージョンを信じ続けることが出来るのだろうか。
人間の欲望が尽きる日は来るのか。
その時このイリュージョンは、どういう結末を迎えるのだろう。
尚、メールマガジンでは、コラムと同じテーマで、
より安田の人柄がにじみ出たエッセイ「ところで話は変わりますが…」や、
ミニコラム「本日の境目」を配信しています。
毎週水曜日配信の安田佳生メールマガジンは、以下よりご登録ください。