流れに乗るか、乗らないか

日本社会には、大きな一本の「流れ」が存在する。
多くの人が同じ方向に動くことによって生まれる、
日本社会の本流とも言うべきもの。
たとえば学校に行き、勉強するという流れ。
テストで良い点を取り、
出来るだけレベルの高い学校に進学するという流れ。

もちろん、テストの点数など気にしない、
進学などしない、という生き方もある。
だがそれは、日本社会の本流ではない。
本流とは、大多数の人が乗っている流れ。
すなわち、受験→就職→会社員、という流れである。
この流れに乗ることによって、
人はふたつの安心感を手に入れることが出来る。

ひとつ目は、多くの人と同じ行動をしている、という安心感。
そしてふたつ目は、やるべき事とゴールが決まっている、
という安心感である。
だがその安心感と引き換えに、
多くのストレスを抱えていることも事実だ。
それは、競争や混雑によって持たらされるストレスである。

日本社会で生活している私たちには、
大きく分けてふたつの選択肢が用意されている。
それは、本流に乗るという生き方と、
本流に乗らないという生き方である。
どちらを選ぶかによって、人生は大きく変わる。

本流に乗れば、やるべき事とゴールが明確になり、
皆と同じという安心感もある。
だが、多くの人と同じゴールを目指す、という事は、
激しい競争に巻き込まれるという事でもある。
学校での評価で競い、受験勉強で競い、
就職活動で競い、社内評価でも競う。

同じ流れに乗っているので、出社時間も、休日や休暇も同じ。
すなわち、みんなで満員電車に乗り、みんなで同じ日に休み、
みんなで同じ高速に乗って、渋滞に巻き込まれる。
競争、評価、混雑、渋滞、勝ち負け、格差、などなど、
多くの人間と居ることによるストレスは計り知れない。
これは個人の人生に限ったことではない。
企業経営でも、まったく同じなのである。

同業他社と同じような商品、
同じようなサービス、同じような戦略。
そこには不思議な安心感があり、
ストレスを抱えながらも、皆同じような努力をする。
少しでも安く、より早く、より丁寧に。
やるべき事は明確であり、ゴールも明確である。
だからこそ、競争は激しい。
勝ち負けが生まれる。

なぜ、これほどのストレスを抱えながら、
人は同じ流れに乗ろうとするのか。
それは、楽だからである。
流れから降りると、ゴールを自分で決めなくてはならない。
やるべき事も、自分の評価も、
自分自身で考えなくてはならない。

私たちは、あまりにも長い間、流れに身を任せ過ぎたのだ。
だからゴールが見えないこと、
やるべき事が決まっていないこと、
皆と同じではないことが、不安で耐えられない。
安心を求めて大きな流れに乗る。
その結果、大きなストレスを抱え、
大きな不安に苛まれることになるのだ。

大きな流れに乗ることは、必ずしも悪い選択ではない。
だがそこには、競争と混雑と格差があることを、
忘れてはならない。
競争に勝ち抜くのか。
あるいは、自分自身で道をつくるのか。
どちらの覚悟も持たないことが、最も大きなリスクなのである。


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