当然のことながら、働き方は自由である。
法律に触れず、人に迷惑をかけないのであれば、
何をやってもいい。
何を売ってもいいし、どこで売ってもいいし、
誰に売ってもいい。
これだけ自由であるにもかかわらず、
多くの日本人にとって、働くとは会社に勤めることである。
安定した会社に就職し、毎日きちんと出社し、
毎月決まった給料を受け取る。
それが働くということ。
国家なり、会社なりの、きちんとした組織に所属すること。
それを就職というのである。
実際、NEET(ニート)はNot in education,employment or
trainingの略で、15〜34歳で、学校に行っていない、
雇われていない、職業訓練もしていない、人たち。
ということになる。
この定義によると、私がニートでない理由は
「年を食っているから」でしかない。
学校も、職業訓練も、雇われるための準備、という捉え方。
つまり、雇われていない15〜34歳は
ニートであるという事だ。
なかなか強引な、そして無茶苦茶な、定義である。
無茶な定義であるにもかかわらず、
私たちはそれをごく自然に受け入れている。
フィギュアを作ったり、動画を投稿したりして、
小銭を(時には大金も)稼いでいるような人たちは、
この国では立派な社会人とは思われない。
そんなものは、ただのあぶく銭。
そんな仕事が続くわけがない。
いや、そんなものは、仕事とは言わない。
まともな社会人とは、きちんと会社に勤めている人である。
というのが、大方の日本人の意見ではなかろうか。
だがその強固な常識も、ついに変わる時を迎えている。
ひとつの会社に所属し、
その会社から受け取る給料だけで生活する。
そういう生き方が、終わりを迎えつつあるのだ。
この先、私たちは、会社ではなく、
メディアに所属することになる。
もちろん、メディア業界に就職する、という意味ではない。
インターネットとSNSの出現により、
世の中はメディアで埋め尽くされるようになった。
ブログ、ホームページ、Facebook、Twitter、
インスタグラム、ポッドキャスト、などなど。
これらは全てメディアである。
少し前までは、自前のメディアを持つことなど、
夢のまた夢であった。
だが今では、誰でも、ほとんど瞬時に、
メディアを持つことが出来る。
そのメディアで、ニッチで面白い情報を発信すると、
ニッチな人たちがどんどん集まって来る。
人が集まれば、そこには市場が出来る。
それは一部の、ニッチな人たちだけの現象である、
と思われるかもしれない。
だがこの先、驚くほど多くの市場が、
ニッチな媒体によって、切り取られていくだろう。
今、顧客は会社ではなく、メディアに集まりつつある。
数あるメディアの中から、自分と相性の良いメディアを見つけ、
そこにコンテンツを提供し、そこで商品やサービスを販売する。
それが、メディア時代の新しい働き方である。
会社に所属するのではなく、メディアに所属する時代。
株式ではなく、メディアとコンテンツを持つものが、
次の社会を制するのである。
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