金儲け主義の終焉

お金を稼ぐにはスキルや努力に加えて割り切りが必要である。他のすべてを犠牲にしてでも大金を稼ぐ。金持ちになるためなら何でもやる。お金儲けが優先順位の第一位だと断言できる。これくらい割り切れる人は間違いなくお金儲けに成功するだろう。

もちろん違法なことはダメだが、逆に言えば違法でなければ何でもOKというスタンス。顧客の期待を裏切っても、多くの友人を失っても、親戚と疎遠になったとしても、お金が稼げればいい。

「そんな悪いことをしなくても、お金は稼げるぞ」という人もいるだろう。もちろんすべてのお金持ちが悪いことをしているわけではないし、長期的に見れば利他的な人が豊かになっていく。だが割り切ることが金儲けの近道であることは事実である。

人から嫌われないか。人からどう思われるか。嫌らしいやつだと思われないか。と、普通の人間は考える。しかしお金第一の人はこれを考えない。そして感じない。むしろ相手のためにやっているのだ。感謝こそされ恨まれる筋合いなどない。それが分からない人は離れていってくれて結構。そう信じ込んで割り切っている。

社員が傷ついていようが、疲れ果てていようが、気にならない。結果が出ないのは努力が足りないからだ。折れるのは心が弱いからだ。顧客に迷惑などかかるはずがない。心からそう信じられる人は強い。金儲けに悪気がない。気持ちが揺るがない。そうやって財を成した人はたくさんいる。

だがその時代はもう終わろうとしている。「そんなやり方は長続きがしない」と昔から言われているが、長続きの期間がどんどん短くなっていく。その最大の理由は社員をコントロールできないことである。内部告発は当たり前。ビジョンという名の数値目標など追いかけてもくれない。

お金でついてくる社員だけだとサービスは劣化する。お金ではついていけない社員は会社を去っていく。去っていくだけではなくSNS に投稿する。一旦信頼を失えば顧客は離れていくし、集客や採用には莫大なコストがかかる。割り切って金儲けを優先する経営は最も効率の悪い経営になりつつあるのだ。

築き上げたビジネスモデルが一瞬で崩れ去り、お金でつながっていた組織も一瞬で崩壊し、資金力で手に入れた知名度は一瞬でマイナスブランドへと変わる。金儲けの何が悪いのかと割り切った経営は、まともな社員から見放され、最終的にはお金からも見放されるのである。

 

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1件のコメントがあります

  1. 『だがその時代はもう終わろうとしている。「そんなやり方は長続きがしない」と昔から言われているが、長続きの期間がどんどん短くなっていく。その最大の理由は社員をコントロールできないことである。内部告発は当たり前。ビジョンという名の数値目標など追いかけてもくれない』は、内部告発を受けた体験がないので、「なるほど~」と思いました。それ以外の理由では、ある程度の少ない所得でも男女問わず生活できるため、↑のコラムの経営者に同調する社員自体も少なくなっている印象を受けました。コラム作成と配信、ありがとうございます。

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