ヒトとAIの棲み分け

アナログ、非効率、無駄、無意味、おバカ。これが儲かるスモールビジネスの共通点になっていくだろう。デジタル、効率化、無駄の排除、意味のある作業、賢い選択。これらはAIによって劇的に価格が下落していくからである。人間はとても賢い動物だが時におバカな選択をする。だから人間とAIは両立できると私は考えている。重要なのは自分の立ち位置を間違えないことである。

無駄なものが商売になるのか?と疑いたくなるかもしれない。しかし冷静に観察してみれば人間社会は無駄なものだらけである。たとえば世界で一番のお金持ちであるイーロンマスクは月に行くために莫大な費用を使う。そのお金があればどれだけ地球上の人々の暮らしが便利になるか。無駄としか思えない。

そもそも月に行くことはすごいことなのだろうか。太陽系の広さを考えると地球と月の距離は家と玄関ほどの距離でしかない。しかも太陽系は大宇宙の中ではチリのような存在である。玄関まで行くのに全財産を使うような男に家族はついて来るだろうか。だが我々はイーロンマスクを笑うことはできない。

人間とは無駄で無意味なことにお金と情熱を捧げる動物なのである。地球の裏側まで旅行に行ったり。花火を打ち上げて喜んだり。色褪せたジーンズを有難がったり。初物ウニの軍艦巻ひとつに40万円も払ったり。ファッション、飲食、娯楽、スポーツと、どの分野を見ても無駄なもののオンパレードである。

私は決して人間を見下しているのではない。私自身もおバカな人間の典型であるし、これこそが人間の人間たる所以であると信じている。私が言いたいのはAIとの棲み分けである。AI時代に商売をするなら、とくにスモールビジネスで儲けたいと思うなら、自分の立ち位置を決して間違えないことが重要だ。

人間はバカである。だから計算が立たない。明らかに損なのに、明らかに不必要なのに、明らかに効率が悪いのに、そちらを選択する。なぜならそれが人間だから。それ以外の理由は必要ない。好奇心を抑えられず、アフリカから世界の果てまで徒歩で移動し尽くした動物。それが我々ヒトの先祖なのである。

いいものを、安く、速く、便利に、提供する。素晴らしいことだ。だが儲からない。自ら生み出したテクノロジーによってその価値は暴落していく。自分がどんな生き物を相手に商売しているのか。それを決して忘れてはいけない。
 

 

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