おバカな経営のすすめ

バカな経営ではない。私が勧めるのは「おバカ」な経営。言い換えるならそれは人間の愚かな部分にフォーカスした商売のこと。多くの人は人間が他の動物より賢いことになんの疑問も抱いていない。だが知能が高いことと賢いこととは意味が違う。知能が高くても愚かの行為ばかりするのが人間なのだ。

人間同士の殺し合いである戦争はその最たるもの。国家という幻想を守るためにその国境には膨大な予算が投入されている。なぜ国境には軍隊が必要なのか。なぜ新宿区と文京区の間には軍隊がいないのか。それは信用の問題である。人間は人間を信用できない。だからそこに膨大な予算が必要なのである。

他の動物や宇宙人に襲われる心配をしているのではない。自分と同種の生き物に襲われることのみを想定して守っているのだ。莫大な時間と予算をかけて、人類を何度も滅ぼせる武器を開発して、不安に備えているのだ。この労力を他のことに費やせば人類はどれほど豊かになるのだろう。

戦争だけではない。人間がやっていることは愚かなことばかりだ。ストレスをためまくって稼いだお金を酒や旅行やファッションに費やす。他の動物からは「なんと愚かな行動」と見えるだろう。必要以上に殺さない、食べない、動かない、欲しがらない。それが人間以外の動物の賢さである。

人間は確かに知能が高い。ちゃんと計算できる。だから「安くて、早くて、便利」なものしか売れない。と思い込んでいる経営者が多い。だがそれは人間の半分しか見ていない経営だ。人間はとても愚かである。行動するときに感情に任せてしまう。だから「高くて、遅くて、不便」なものでも売れるのである。

人間の賢さにフォーカスした経営は単純だ。多くの人が得だと思うものを大量に売ることが基本。だがこのビジネスは単純であるがゆえに競争が激しい。人間の愚かさにフォーカスしたビジネスは複雑だ。感情は人によって違うので計算通りには行かない。だから小さな会社にとってのチャンスとなり得る。

人間の賢さにフォーカスした仕事はAIにとって代わられるだろう。そこには正解があるから。だが人間の愚かさにフォーカスした仕事には正解がない。必要がないのに買ってしまう。なぜなら欲しいから。買った私が嬉しいから。人間に残される仕事はこの領域だけになっていくのではないだろうか。
 

 

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