もしやこの人は商売に興味がないのではないか。そう感じる経営者を見かけることがある。彼らが興味を持っているのは売上と利益だけ。売上や利益を生み出すには人が必要なので採用や定着のことは考える。しかし人間そのものには興味がない。社員も外注先もビジネスの一部としか見ていない。
人としてどうなのか、ということを問いたいのではない。人間に興味があろうがなかろうがそんなものは本人の自由である。だが経営者としては問題であると言わざるを得ない。なぜなら商売は人間相手の心理戦だからである。人間とはどのような生き物なのか。これを考えずして商売することはできない。
商売に興味がない経営者でも自社の業績には興味がある。自分の生活に直結しているのだから当然である。数値経営、マーケティング、合理化・効率化などには真剣に取り組む。だが商品作りや価値の創出には興味がない。儲かりそうなビジネスがあれば手を出し、儲からなければやめる。その繰り返し。
それの何が悪いのかと言われそうだが、もはやこのような経営は成り立たないのである。まず人が集まらない。集まった人が離れていく。これは社員やスタッフに限った話ではない。顧客を含めたすべての人が離れていく。なぜなら価値の基準が損得しかないから。人は損得で動くものだと信じているのだろう。
人間はとても複雑な生き物だ。必要なものには極力お金を出さない。そのくせ欲しいものには大枚を叩く。明らかに得な取引でも嫌いな営業マンから買わない。好きになった相手からは怪しい商品でも買ってしまう。賢くもあり、おバカでもあり、冷静でもあり、とんでもなく感情的でもある。それが人間。
とても面倒で、鬱陶しく、時に愛らしく、嫌いだけど好きにならずにはいられない生き物。商売とはこの複雑怪奇な生物を相手にした営みである。どうやったらこの生き物が喜んでくれるのか。幸せを感じてくれるのか。人間に興味を持ち人間研究の第一人者になること。それが経営者の役割である。
「こんな事をしたら、めちゃくちゃ喜ぶんじゃないか。ふふふ」と妄想を巡らせる。それが価値創造であり商品開発である。もっと人に興味を持ち、もっと商売を楽しもう。人不足や円安が問題なのではない。経営者が人間という生き物に、そして人間相手の商いに興味を持っていないことが問題なのである。
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