原因はいつも後付け 第35回 「仕組み化したサービスの行き着く先」

// 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

《第35回》仕組み化したサービスの行き着く先

「自分なら売れる」と「誰でも売れる」。

この2つを比べた時、店舗オーナーが目指すべき商売のモデルは後者の「誰でも売れる」モデルだと言われてきました。

確かに「自分なら売れる」モデルは、自分が仕事を休んだら売れないし、誰かに営業をお願いすることもできません。

一方、「誰でも売れる」モデルは、自分が休んでいる間も売れ続けるし、誰かに営業をお願いしたって売ることができます。

オーナーの視点から2つを見比べれば、どちらが理想的かは明らか。
だからこそ、多くの飲食店や店舗ビジネスを展開するオーナーは、誰でも売れる仕組みを作ることに力を注いできた訳です。

でも私、最近思うんですよね。
「この流れが逆転し始めているんじゃないか」って。


「誰でも売れる仕組み」を作れる人が、デキる人。
これが、これまで信じられてきた店舗オーナーの理想型。

個人力に頼らず、誰でも簡単に苦労しないで売れる仕組みを作って稼ぐ。
確かにこれは一見、正しいように思えます。

皆さんの中にもこんな思いで商売の仕組み化を考えている方がいるかも知れません。

それでも私が、この流れが逆転し始めていると感じている理由。
それは、仕組み化されたサービスは、他社の仕組み化されたサービスと比較されてしまうから。

比較の対象となってしまった仕組み化されたサービスの行き着く先。
それは価格競争でしかないのだと思います。

では、「自分なら売れる」という個人力に依存したサービスはどうでしょう?
これまで、仕組み化できない、非効率、だと思われてきた「個人力」。

確かに仕組み化されたサービスに比べれば効率は悪いかも知れません。
でも、この「効率の悪さ」こそが、実は個人力で売ることの武器であると同時に「儲けの源泉」になっていると思うのです。

だって、個人についているお客さんにとって、その人と比較する対象なんていないのですから。
比較の対象がいないという事は、価格競争が起きないという事。

今や、誰もが個人で情報を発信できる時代になりました。
そして、どんな仕組み化されたサービスも検索すれば一瞬で比較できる時代になりました。

つまり、個人力はより力を発揮できる環境になる一方、仕組み化されたサービスはより価格競争が激しくなる環境ということ。

事業を始める時、私たちはどんな結果を期待して「誰でも売れる仕組み」を目指してきたのでしょうか?
その答えは「儲けを増やすため」だったはず。

にも関わらず、儲けを増やすという結果を期待して取り組んだはずの仕組み化こそが、儲けを減らす原因となっているのだとしたら、こんな皮肉なことはありません。

期待した結果にならないのは、その原因となる自分の行動が間違っているから。

私たちは一度立ち止まって、考える時期に来ているのではないでしょうか?
「誰でも売れる仕組み化が本当の正解なのか?」と。

そして数年後、新たな考え方を手に入れた私たちは、何の疑問も持たずに仕組み化を続けているオーナーに、こう言ってるような気がするのです。

「まだ誰でも売れる仕組みなんかで商売やってるの?」って。

 

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計28店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。

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