パートナーシップ型雇用というものが崩壊しつつある。新卒入社した会社でゼロから育ててもらう。生涯にわたりこの会社で働くことを決める。求められればどこにでも異動し、どんな仕事でもこなしていく。長く働くほど給料が増え、まとまった退職金が受け取れて、終身安泰な生活が約束される。
ジョブ型雇用というものが増えつつある。新卒入社した会社はあくまでも基礎となる仕事を身につける場所。基礎が身に付いたら次なるスキル取得を求めて転職する。やるべき仕事と働く場所が決まっていて転勤や職種転換は受け付けない。収入はスキルに比例するので生涯スキルを磨き続ける必要がある。
働く人にとってはパートナーシップ型雇用の方が安心である。だがそれは会社が約束を守り続けた場合。実際には年功序列ではなくスキルによって報酬が決まる。スキルがなければ役職定年で年収が下がる。それでも報酬に見合わない人には退職金を割増して退社を促す。終身安泰な生活は約束されない。
こうなると働く側の意識も変わる。言われた通りに異動し、言われた通りの仕事をしても、スキルが付かなければお払い箱になる。だったら自分の意思で身に付けるべきスキルを選び、スキルが磨かれる環境で働く。身につくものが無くなれば次の職場を探し、さらなるスキルアップを貪欲に目指していく。
すると今度は会社側の対応が変わる。ゼロから育て上げてもスキルが付いたら辞めてしまう。これでは育成投資が回収できない。ならば最初からスキルを身に付けた人材を採用しよう。異動にも職種転換にも応じてくれなくていい。給料に見合う仕事をしっかりこなしてくれればいい。とにかく即戦力を採れ。
これが大企業の現場で起きていることの実態である。新卒学生の8割近くが10年以内の転職を考えている。新卒採用が減り20〜30代の中途採用組が過半数を超えている。双方の思惑が一致しているのでこの動きがどんどん加速していく。いずれ新卒一括採用は終わりを迎えることになるだろう。
いかにスキルが磨かれる職場を用意するか。いかにスキルに見合った報酬を支払うか。この二つに経営資源を集中させる。それ以外に有能な人材を確保する術はない。自前で育てた人材はどんどん他社へキャリアアップしていく。ジョブ型思考の若者は社内でのキャリアアップなど望んでいないのである。
尚、同日配信のメールマガジンでは、コラムと同じテーマで、より安田の人柄がにじみ出たエッセイ「ところで話は変わりますが…」と、
ミニコラム「本日の境目」を配信しています。安田佳生メールマガジンは、以下よりご登録ください。全て無料でご覧いただけます。
※今すぐ続きを読みたい方は、メールアドレスとコラムタイトルをお送りください。
宛先:info●brand-farmers.jp (●を@にご変更ください。)