ルールに隠された意図を読め!
第14回「雇わない経営?」

この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第14回「雇わない経営?」


安田

最近、「雇わない経営」という、組織改革のお手伝いをやってまして。

久野

いいですね。

安田

今、この手の相談がすごく多いんですよ。「雇うことに、すごく疲れてる」経営者が増えてます。

久野

同じ経営者として、その気持ちはよく分かりますね。

安田

採用してもすぐ辞めちゃうし、飲みに連れってたら嫌がるし。

久野

休みも取らせないといけないし、すぐにパワハラだとか言われるし。

安田

とは言え、社員がいないと会社は回らないじゃないですか?

久野

ですね。頭の痛いところです。

安田

もうやめたいって経営者さん、近くにいませんか?

久野

たくさんいます。会社をたたむか、M&Aするか、悩まれてますね。

安田

ですよね。でも仕事自体が嫌なわけじゃないんですよ。雇用することに疲れてるだけ。

久野

分かります。ここ数年は、ホントそんな感じですね。

安田

だから新しい経営のカタチとして、「雇用しない経営」っていうのを本気で考えてるんですよ。

久野

社長がひとりでやるってことですか?

安田

いや、それでは成り立たないので、「新しい契約形態の組織」を作り出す。

久野

なるほど。興味深いですね。

安田

そういう会社が増えていく実感って、ないですか?

久野

そういう発想の経営者は、まだまだ少ないですね。けど、これだけ厳しい労働法改正を見てると、そうならざるを得ないと思います。

安田

大企業なんて、もう既に、45歳以上の社員を手放し始めてますよ。

久野

手放しているというか、手を切っているというか。

安田

まあ、そっちですよね。東証一部上場企業でも「45歳過ぎたら辞めてくれ」って動きが、当たり前になってきました。

久野

一気に動き出しましたね。

安田

はい。ただ、優秀な人が一緒に辞めちゃうのは、困るみたいです。

久野

退職金を積めば、優秀な人から辞めていきますからね。

安田

そうなんですよ。優秀な人って、どこに行っても食えるので。

久野

そういう人が大量に辞めたら、さすがに困りますよね。

安田

はい。だから「辞めた後も繋がっておこう」という動きが出て来てます。

久野

どうやって繋がるんですか?

安田

独立する人に出資したり、外注として仕事を依頼したり。

久野

なるほど。ちょっと前には、考えられなかったパターンですね。

安田

そうなんですよ。社員として「ずっと囲い込むこと」の限界を、大企業も感じ始めてるんでしょう。

久野

そういう意味では、中小企業はちょっと出遅れてますね。

安田

本当は中小企業ほど、そうならないといけないんですけど。

久野

まだまだ、囲い込むのが好きな人が多いですね。

安田

でも、囲い込めば囲い込むほど、辞めちゃうんですよ。優秀な人って。

久野

確かに、そういう傾向はあります。

安田

「好きな場所で、好きな時間に」働けるようにしてあげたほうが、優秀な人は集まって来ます。

久野

ガチガチに管理しないほうがいいってことですか?

安田

「決められた場所で、決められたことを、決められた通りにやる」という方向にもっていくほど、人材の質が下がる。

久野

優秀な人は選択肢が多いので、ちょっと嫌なことがあったら辞めますもんね。

安田

はい。優秀な人ほど自分で時間をコントロールしたがりますね。で、自身のスキルアップにしっかりと時間を使う。

久野

結果的に時給が上がって、より短い時間で稼げるようになる。

安田

その通りです。できる人材ほど労働時間が短い。だから優秀な人材を巻き込みたいのであれば、拘束時間を減らすべきです。

久野

スポーツと似てますね。めちゃくちゃサッカーがうまい人に「試合の時だけ来てもらう」みたいなイメージですよね。

安田

そうです。できる人は自分で勝手に練習しますので。

久野

雇ってると、すべてを管理しなくちゃいけないですもんね。ロッカールームにいる時間、着替える時間、ランニングする時間。

安田

練習時間にまで金払ってるわけですから。練習プログラムまでこっちが用意して。なのに、練習しないみたいな。

久野

で、やる気ないやつを詰めて。点入れなくても、お金払わなきゃいけないし。

安田

中小企業の場合は、すぐ辞めちゃうし、育てる仕組みもない。だから雇い方を根本的に変えるのが、最も効果的な方法なんですよ。

久野

できない社員の人件費を、できる社員にカバーさせる仕組みって、もう限界ですよね。

安田

はい。優秀な人がどんどん疲弊していきますから。

久野

そのひとつの答えが、雇わない経営だと?

安田

個人的には「雇わない経営」を、どんどん増やしたいです。中小企業の方が、切り替えやすいと思いますけど。

久野

業種的に難しいところもあるでしょうけどね。

安田

たとえば?

久野

メーカーさんの工場とか。どうしても人を雇う必要がありますよね。

安田

スキルの高い職人さんは、フリーランス化できると思いますよ。

久野

ラインの組み立て作業とかはどうですか?

安田

そういう仕事は自動化して、無人化していくと思います。

久野

中小企業も無人化しますか?

安田

するしかないですよね。採用コストと時給が上がり続けるし、残業はさせられないし、休ませなくちゃいけないし。

久野

確かにそうですね。これまでずっと耐え凌いできたのが、もう限界にきてる。

安田

耐え凌ぎ過ぎたんですよ。本当は、もっと早く手を打つべきだった。

久野

今の日本って、非常に中途半端な状態ですよね。日本だけ賃金がぜんぜん上がってない。

安田

逆に下がってますよね。

久野

下がってますね。ただ、これからは単価が上がって「労働法もきっちり守れ」みたいな話になれば、変わっていかざるを得ない。

安田

なんで、こんなに我慢しちゃったんでしょうね。みんな工夫して、安い給料でも生活しちゃうじゃないですか、日本って。

久野

しちゃいますね。こづかい少なくても、頑張っちゃう。

安田

条件聞いたらびっくりするような会社で、辞めずに働いてる人っているじゃないですか?

久野

います、います。

安田

あれ、どうしてなんでしょう。国民性ですかね?

久野

国民性もありますけど、家買っちゃったとか、子どもを塾に入れたいとか。

安田

でも、転職したら給料増えるかもしれないですよ。

久野

今までは、そういう情報がなかったからだと思います。でもIndeedとかが出てきて、簡単に比較できるようになりました。

安田

ですよね。もう隠し通せない。「やってられるか!」みたいな離職が、全国的に起こるんじゃないですか。

久野

そう思いますね。とくに若い人は車も持っていないし、家も買わないので。

安田

縛り付けておくものがないと?

久野

はい。だから簡単に辞めちゃいます。

安田

やっぱり目指すべきは「雇わない経営」じゃないですか?

久野

そこまで吹っ切れるかどうかは分かりませんけど。経営者が試される時は近づいてます。


久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は地元である岐阜県多治見市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/

 

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

中小企業が抱える
三重苦(採れない、辞める、生産性が低い)を、
三重丸(採れる、辞めない、生産性が高い)へ。
6つのステップで支えます。

感想・著者への質問はこちらから