ルールに隠された意図を読め!
第59回「Xデーに備えよ!」

この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第59回「Xデーに備えよ!」

安田

未払い残業って時効が何年になるんでしたっけ?

久野

2年から3年に変わります。

安田

もうこれは決定ですよね?

久野

もう決定です。

安田

で、さらに3年から5年になるんじゃないかって。

久野

そうですね。おそらく2025年ぐらいには。

安田

2025年?じゃあ、まだ多少の猶予はある。

久野

ちょっと猶予がある。でも5年になったらかなり厳しいですよ。

安田

3年まではもうあっという間ですよね。

久野

この4月からスタートします。

安田

それは中小企業も同時ですか。

久野

中小企業も同時にスタートします。

安田

中小企業にも猶予なしですか?今回は。

久野

猶予なしですね。

安田

ということは「3年前に辞めた子が訴えてくる」可能性があるってことですか。

久野

2020年の4月からスタートなので、3年分を訴えてくるのは2023年からですね。

安田

じゃあ2020年以前は訴えられない?

久野

いや、2年分は訴えられます。ただ一気に増えるのは恐らく2023年の4月1日。

安田

そこがXデー?

久野

はい。3年分さかのぼれるので。まとめて全員が来たら恐ろしいです。

安田

来るんですかね、実際。

久野

来ると思います。恐らく10倍ぐらい「弁護士が参入してくるだろう」と言われてますから。

安田

いわゆる過払金請求の次にくるブームってことですよね。弁護士さんがみんなそこを狙って。

久野

そうです。時効が3年になると生産性がすごく上がりますから。

安田

報酬が一気に増えるので、どんどん弁護士さんが参入してくる。

久野

はい。間違いないです。

安田

テレビCMとかも出てきますかね。過払金の時みたいに。

久野

出てくるでしょうね。「あなたの未払い残業代、取り返せます」みたいな。

安田

今まで知らなかった人たちも、それで火をつけられて。

久野

そうです。残業請求アプリってのがあるんですよ。

安田

残業請求アプリ?

久野

ザンレコっていうんですけど。「これだけ請求できますよ」みたいなアプリを弁護士事務所がつくってる。

安田

すごいですね!もう完全にやる気ですね。弁護士さんたちは。

久野

はい。アプリの右下に「弁護士に相談する」っていうボタンが付いてるんです。

安田

弁護士にいつでも相談できちゃう(笑)

久野

そうです。「退職代行アプリ」も付いてて、残業とセットで請求する。

安田

私が行ってるジムのトレーナーさん、ものすごく時間外労働が多いんですよ。でも「残業をつけるとインセンティブが減るから」って、つけないようにしてるそうです。

久野

それ、絶対訴えられますね。

安田

でも本人が選べるみたいですよ。インセンティブを取るか残業代を取るか。

久野

それは、むしろ二重取りできます。

安田

そうなんですか!じゃあ「インセンティブ出すから残業はつけない」みたいなのはダメ?

久野

「インセンティブとしての支払い」としか認められない。だから逆に残業代は払われてないことになる。後で請求されちゃう可能性大です。

安田

トレーナーとしての仕事が終わってからも、在庫チェックとか、全体ミーティングとか、あるらしいんです。これも労働ですよね、当然。

久野

スポーツクラブって結構、闇が深いんですよ。テニスコーチとかも無理やり業務委託にされてたり。

安田

そういう場合はどうなるんですか?

久野

実態が雇用と変わらなかったら残業請求できます。片付けの時間とか。

安田

「1レッスンいくら」みたいな委託だったら、片付けはさせちゃいけない?

久野

片付けも含めて、ちゃんとお金を払っていればいいんですけど。

安田

レッスン料しか払ってないとアウト。

久野

片付けの指示を出してたらアウトですね。

安田

なるほど。

久野

スポーツクラブってお客さんが勝手に来るので、それに対応しなきゃいけない。そうなるともう雇用なんですよ。

安田

業務委託では通らないと。

久野

「私は従業員です」って残業請求してくるケースが、めちゃくちゃ出てくる。

安田

でも雑用って絶対あるじゃないですか、スポーツジムって。

久野

そうですね。スポーツクラブはたぶん、サービス残業がかなり多いと思います。

安田

ですよね。

久野

トレーナーさんとの関係性がいいときは、問題が表面化しないんですけど。

安田

でも後から請求されるわけでしょ?

久野

退職と同時に請求してくる。「あいつに訴えられたら死んでもいい」って経営者は言うんですけど。後から訴えられてめっちゃ凹んでる。

安田

辞めるときって、少なからず揉めますもんね。

久野

ですね。辞めさせてもらえないとか。「もう明日から来るな!」って罵らたりとか。

安田

ありそう。

久野

あと多いのは「言われてた条件と違う」ってのを、辞めるときまで言えずにいて、やめた瞬間に請求してくる人。

安田

会社が負けるんですか?そういう場合は。

久野

負けますね。

安田

ちなみに賞与はどうなんですか。賞与がまったくないのは労働法的にOK?

久野

賞与がないのはOKです。

安田

0でもいいんですか?

久野

就業規則に「賞与あり」って書いてあったらダメですけど。「会社業績による」とか「賞与はありません」って書いとけば、払う必要は全くない。

安田

そうなんですか。

久野

はい。賞与は自由なんで。「必ず1カ月分払います」って書いてあったら駄目ですけど。「1カ月分が目安で業績悪いときは払いません」と書いておけば大丈夫。

安田

給料に関してはえらく厳しいのに。賞与はゆるいんですね。

久野

「月給は生活給」という考え方が明確なんですよ。賞与はあふれた利益を還元してるだけ。

安田

だから経営者は給料を増やさずに賞与を出したがるんですね。

久野

そうです。月給は労働契約法で下げられないようになってるので。

安田

絶対に下げられないとなると、上げるのは怖いですよね。

久野

それが足かせになって「本当は給与を上げたいんだけど、上げられない」という状況になってます。

安田

本末転倒ですよ。

久野

はい。でもこれはなかなか変えられない。ここに触れると選挙で大敗するので。



久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/

 

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

社労士にご相談ください!

感想・著者への質問はこちらから