小さなブルーオーシャンに出会う旅 第6回「店主がこだわり抜いた商品。だから土日しか販売しない。」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

第6回「店主がこだわり抜いた商品。だから土日しか販売しない。


モノがない時代。モノを作れば売れる時代でした。とにかく作ることに必死だったと思います。さまざまなモノが作られるようになり、徐々にモノが溢れるようになると、大量生産、大量消費の時代になっていきます。工場は24時間365日のフル稼働。需要が供給を上回れば、値段が下がり、売る方にとってはもっと作らないと売上を確保できないということが起こっていたでしょうね。
そんな大量生産、大量消費の時代から、いまは「こだわり」のある人や会社、お店が注目されている気がします。

皆さんの身近にある商品。1つ1,000円以上するとしたら…。

皆さんは、「マグロのオイル漬け」と聞いて、何を想像しますか?缶詰のフタをパッカと開けて、中の油を捨て(最近では油も一緒に料理してしまうのもありますね)、サラダに入れたり、マヨネーズとあえてサンドイッチの具にしたり…。皆さんが想像しているのは、「マグロ」又は「カツオ」の「油漬け」又は「水煮」の缶詰の商品名です(マグロが海の鶏肉と呼ばれているため)。3缶とか4缶で、いまは手頃な金額で売られていますね。さて、この「マグロのオイル漬け」。もし、皆さんが1つ1,000円以上で売るとしたら、どうやって売りますか?あるいは、どんな「マグロのオイル漬け」だったら、1,000円以上出して買いますか?

こだわりから土日しか開けない専門店

今回、ご紹介するのは1つ1,000円以上する「マグロのオイル漬け」を販売しているお店「おつな」さんです。この「おつな」を運営している株式会社JINの代表 関根さんは10年以上、小料理屋を営むいわゆる料理人だったようです。

ところが…

“その日残ったマグロで「ツナのオイル漬け」を作ってみたのが誕生のきっかけ。結構おいしいけど、次は違うマグロで作ってみよう。オイルの種類を変えてみようと、凝り性の性格から探求の日々がスタートしました。日本全国のツナのオイル漬けを調べ始め、海外のツナまで食べまくって日夜研究しました。自分のこだわりのオイルを追求し、ソミュールの研究をし、保存の仕方もイチから勉強しました。けれども思ったようには、そう簡単にはいかず、何度諦めかけたことか・・・。夢にまでツナが表れて、おいしさのヒントがひらめいて、また作ってみる。を繰り返すこと4年。”

※「ソミュール」とは味付けのことだそうです。
〈「おつな」さんHPより抜粋〉

どうしても多くの人に本当においしい「マグロのオイル漬け」を食べて欲しいという情熱が止められずに、とうとう「おつな」を立ち上げるようになってしまったというのです。

現在でも、「マグロのオイル漬け」は一つひとつ手作り。そのため、お店を開くの土日のみ。平日は日々、マグロのオイル漬けを作り、研究をしているのだとか…。

小さなブルーオーシャンを生み出しているものは何なのか?

まずは、「こだわり」の部分ではないでしょうか?「マグロのオイル漬け」は、ありふれたもの、安く手に入るもの、ではありますが、それでもなお「もっと美味しくなるのではないか?」と、素材(マグロ)やオイル、味付けにいたるまで研究に研究を重ね、一つひとつ手作りで、こだわりの「マグロのオイル漬け」を作る。手作りだから土日しかお店は開かない(開けない?)という徹底ぶり。毎日、食べられるわけではないけれど、特別な日に開けるこだわりの一品。昨今の消費者は、この「特別感」を求めているのではないでしょうか?(まぁ、そもそもマグロのオイル漬けを毎日食べているという人に出会ったこともないのですが…)また、HPを見ていると、商品の使い方や食べ方、レシピまで掲載されています。これは、モノを手に入れる満足ではなく、気持ち的満足までも生み出している気がします。もともと高級品を一般にも手に入れられるようにするというのは今までたくさんありました。

しかし、庶民の「マグロのオイル漬け」を、高級食品に変えてしまう。これが小さなブルーオーシャンを生み出しているのではないかと思うのです。

 


佐藤洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。
中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

 

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