小さなブルーオーシャンに出会う旅 第15回「社長が一人だけ。個人経営の会社がレッドオーシャンの業界で目立つわけとは?」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

第15回「社長が一人だけ。個人経営の会社がレッドオーシャンの業界で目立つわけとは?」


新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、自粛要請が延長されました。
いつになったら収束するのでしょうか…。
いま、私はこの原稿を自宅で書いていますが、毎日、家で仕事をしているとさすがに身体がおかしくなってしまうので、最近では必ず1〜2時間は外出して身体を動かすようにしています。
現状では、多くのスポーツが自粛のために開催出来ず、私たちも見ることが出来ません。なんだかつまらないですね。これほどまでに、スポーツは私たちの身近なものだったんだなぁと思い知らされます。
さて、今回はそのスポーツ、特に道具、もっと言うと野球のグローブに関する「小さなブルーオーシャン」です。

後発メーカーにも関わらず、口コミだけで評判になりつつある会社。

スポーツ関連業界の市場は、スポーツ用品だけでも約1兆6,000億円という大きな市場です。その中でも今回は野球のグローブに注目してみます。(野球に興味のない方は申し訳ありません…)

日本で野球は人気のあるスポーツの一つです。そのため、野球用品のメーカーはたくさんあり、さらに言えば有名企業ばかりです。
ミズノ、SSK、ZETT、海外メーカーでもナイキ、アディダス、ウイルソンなどの大手メーカーがひしめいています。その中で異彩を放っているのが、大阪にある「株式会社ドナイヤ」さん。2009年に設立をした後発メーカーで、野球のグローブのみを製造している会社です。このドナイヤさんは、工場への発注から営業・販売・検品・発送まで、社長の村田裕信氏が一人だけですべて行なっている個人経営の会社です。
前述した通り、大手メーカーがひしめく業界の中で、宣伝は一切していないのに、品質の良さと使いやすさが評判になり、プロ野球選手の間でも愛用者が広がっていったドナイヤのグローブ。特に、有名なのは、東京ヤクルトスワローズの山田哲人選手。山田選手ほどの実績ある選手であれば、それこそ大手有名メーカーと独占契約を結んでいてもおかしくありません。ところが、山田選手は、この小さな、無名のドナイヤさんと独占契約を結びました。
使いやすいからというだけで、大手メーカーがひしめく業界に食い込んでいけるものなのでしょうか?

小さなブルーオーシャンを生み出しているものは何なのか?

ドナイヤさんの考え方は、大手メーカーとは逆の発想です。
大手メーカーは、プロ選手用の道具を先に開発して、その技術を市販品に下ろしてきます。いわゆる川上から川下へという感じです。しかしドナイヤさんにはプロとか、アマチュアとか、上、下という考え方はなく、すべて平等。

「うちは大手と違って、無償提供はしませんし、プロ用の特注品も作りません。ドナイヤを使っている選手は、皆さん、市販品を自費で買っていただいています」(村田社長談)

大手メーカーというのは、道具をプロ選手に「無償提供」して使ってもらい、その代わりにアドバイスをもらうことで商品開発等に活かしていきます。有名な選手、人気のある選手などは、学生時代から道具は大手メーカーより無償提供されるのです。
しかし、有名なプロ選手が使う道具を市販品として売り出したとしても、私たち一般人は誰も使うことが出来ません。なぜならば、汎用性を考えていないその人だけのモデルだからです。現によく店頭で見かける「◯◯モデル」というのは、形は似ていたとしても、素材も作り方も違うのです。
ドナイヤさんは「市販品をプロ選手が使っている」という形を取っているそうです。
そのため、プロ選手への無償提供はせず、プロ選手だとしても、ドナイヤさんのグローブを使いたければ自腹で購入しなければなりません。それでも、前述した山田哲人選手を筆頭に多くのプロ選手がドナイヤさんのグローブを買い求めるわけですから、市販品であっても、それだけのクオリティを保っているということなのでしょう。

私たちのビジネスでも、特に中小企業であれば実績や信頼の面から大手有名企業さんに顧客になってもらいたいと考えると思います。そのために無償で仕事を請け負うこともあるでしょう。あるいは「オリジナル」や顧客ごとの「カスタマイズ」といったことを掲げている企業も少なくありません。レッドオーシャンの中でのブルーオーシャン戦略として掲げている手法ですが、みんながみんな、同じ手法を取れば、それはたちまちレッドオーシャンです。周りを見て、逆張りをする。これが小さなブルーオーシャンを生み出す鍵ではないかと思います。

 


佐藤洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。
中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

 

ブルー・オーシャン戦略は、未知の新大陸を探しだす作業ではありません。
新たなブルー・オーシャンは今いるレッド・オーシャンの中に無数に存在するのです。

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