泉一也の『日本人の取扱説明書』第6回「陰の国、日本」

泉一也の『日本人の取扱説明書』第6回「陰の国、日本」
著者:泉一也

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

 

 

「めちゃめちゃ陰気やでぇ〜」

知っているだろうか。これは、一世を風靡した漫才コンビB&Bの島田洋七さんのギャグ。陰気を強調して爆笑を呼んだ。にもかかわらず、ここ最近はポジティブがもてはやされている。前向きな性格やプラス思考が主流である。さらに変な学問が出てきた。ポジティブ心理学である。この言葉は吐きそうなぐらい気色悪い。

冒頭からネガティブな入りをしたが、このスタイルが日本人らしさ。

人と出会った最初の言葉。「今日は死にそうに暑いな」とか「ほんま景気悪うて破産やわ」「忙しいてバタバタや」と日本人の出会いは陰から入る。グッドモーニングやファインサンキューなど陽な挨拶はほとんどない。逆に陰からスタートすることで、陽に変わる過程を共にできる。つまり陽転関係になりやすいのだ。嫌なことや問題があっても陽に変えられる関係性とはすごい価値だ。

話をB&Bに戻すと、日本のお笑いは陰である。そのトップを走るビートたけしさんは、映画監督としてヴェネティア国際映画祭の金獅子賞を受賞した。その映画とは全員悪人の極道話「アウトレイジ」。たけしさんの落語の師匠でもある立川談志さんは「落語とは人間の業の肯定」と喝破した。

まさに日本の文化は「陰極めれば陽となす」なのである。

陽の商品やサービスは日本ではすぐに飽きられる。深みがないからだ。そして陽を強調する会社は嘘くさい。「はれの○」などと陽な名前をつけた晴れ着のレンタル会社をはじめ、「大富豪・・」といった楽にお金を得ようといったセミナーなど数々ある。こういった陽のセミナーは、歌ったり踊ったりと陽気なショーを演出する。

日本は「お元気ですか?」とプラスなことを問われても「お陰様で」と陰を強調する国。だから陰(かげ)で技術を磨いてモノを作るのが得意である。見えないところでサービスするのが得意である。自分はすごいでしょ、と表出てアピールするのは毛嫌われる。一方、陽の国である米国は、アピールが標準である。トランプ大統領のオレ様節を見ればわかるだろう。

時代劇のワンシーン。

「あなたのお陰で皆が助かりました。有難うございます。ところで、あなたのお名前は?」

「いや、名を名乗るほどのもんじゃあございあせん。通りすがりの場活師ってしがない野郎でござんす。」

うん、カッコいい。陰のアピールである。

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