泉一也の『日本人の取扱説明書』第88回「保険の国」

泉一也の『日本人の取扱説明書』第88回「保険の国」
著者:泉一也

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

“保険をかけておく”

失敗したとき、トラブルがあったときに大ごととなって困らないよう、前もって対策を講じておくこと。

その対策の一つがお金であり、これを商売としているのが保険業である。ちなみに日本の生命保険の収入保険料は米国についで世界第2位の38兆円。世帯普及率は8割を超えている(米国5割、英国4割)。

戦後の日本で保険業が飛躍的に成長した背景がある。それは夫が収入を得て妻は家事をするという分業体制であったので、夫が死ぬと生計を失うというリスクがあり、さらにそのリスクを説いて回った女性の保険外交員が数多くいた。保険外交員は、女性が個人事業主として仕事ができる数少ない職であったので成り手がたくさんいたのだ。

今は夫婦が共働きをし、女性の職も数多くある時代となり、このモデルは崩壊した。かんぽ生命が詐欺まがいの問題を起こし大問題となったのは、すでに終わったモデルの中でがんばっても成果が出ず、無理して営業をしたしわ寄せだろう。Lineほけんが「保険をプレゼントする」という保険の贈答市場を生み出したように改善ではなく変革が必要なのだ。

日本は台風、洪水、地震、津波、噴火、土砂崩れと世界屈指の天災大国であり、何万年もそこで暮らし続けたことで「備えよ常に」が日本人のDNAに刷り込まれている。“保険をかけておく”は日本では潜在意識の常識なのだ。

2月は受験シーズンであるが「滑り止め受験」も保険をかけることと同じで、滑り止め受験が多いので私立大学は儲かる。入学しないのに入学金を払わなければならないなど、ほとんど詐欺である。塾も予備校も大学も全て「保険業」といっていいぐらいだろう。学問の場ではなく、将来いい生活を得るという保険のためにちょっとでもプラスになる学校に行くのが目的なのだ。

同じような詐欺まがいで儲かっているビジネスが医療である。健康診断や人間ドッグがこれだけ普及しているにも関わらず、医療費は一向に削減されない。それどころか薬漬けになる人が増え、健康である意識のある人はたった3割。健康診断が普及していない米国では9割が「健康」と答えるのを見ると、健康診断は顧客(患者)発掘の営業としか見えてこない。(2013年OECD調査より)

このように日本人のDNAに当てはめてみてみると、「将来の収入のための資格、学歴」を得る教育ビジネス、「将来の健康のために」という医療ビジネスは保険業であり、マイホームを買うことで土地建物という資産を得るという住宅業界も、安定した会社にマッチングさせる就職ビジネスも、さらには自民党政権も保険業にみえてしまう。

“保険をかけておく”は日本人らしいが、かんぽ生命が詐欺まがいの行為で業務停止命令を受けたように、同じ構造を持つ業界はそのうち無理がたたり業務停止と同じ目にあうであろう。すでに過去の保険モデルが崩壊をしているからだ。

Lineほけんが贈答の保険市場を作っているように、これからの保険は、「関係」にある。お金でも健康でも学歴でも就職でも土地でもなく「関係性」が保険の時代になったのだ。この関係性の価値を発掘していく事業がこれから伸びるビジネスなのである。

 

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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