【コラムvol.8】なぜその議論は噛み合わないか?
「単語が、言葉の最小単位だ」
と思い込んでいるからです。

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前回のテーマ、『セクショナリズム』という単語も同じだ。2つに分解するならば、『排他的利己型』と、『価値共創型』に分けて、1部署のその主張が本当に悪しきセクショナリズムなのかどうか、見きわめる軸におくのもいいだろう。たとえば、こんな具合だ。

 

「顧客サポート部として、営業部に1つ要求がある。これからは、お客さん本人の情報だけではなく、お客さんのご家族情報も管理リストに書き込んで欲しい。」

「ええっ!? やぶから棒に無茶いうなよ。業務量が増えるじゃないか。営業部の負担が重くなるのがわからないのか。こんな手前勝手な要求をぶつけてくるなんて、セクショナリズムにも程がある。」

「いや、違う。逆だよ。この要求は、営業の負担を減らすためでもあるんだ。数に追われて雑な仕事になるのを防ぎ、営業活動の品質アップにもつながる話なんだよ。」

役員「ふむ。サポート部の主張を聞いてみよう。“排他的利己型の主張”であれば即却下だが、“価値共創型”なら受け入れて実践したいからな。説明してくれ。」

「はい。サポート部としては、せっかく既存顧客のリストも持っていて、話す機会も多いのだから、購入後のフォローだけじゃなく、追加受注ができるように他商品のご案内もしていきたい。大学生の娘さんがいるなら、若い女性向けの商品DMをお送りして反応をうかがう、とかですね。」

役員「ふむふむ。営業が開拓した1人のお客さんを、そのご家族全員へと育てていく、というわけか。既存マーケットがぐっと広がるねえ。」

「確かに瞬間的には、営業部の業務負担が増えるので申し訳ないが、うまくいけば新規顧客の開拓負担は軽減することができる。営業部にとっても全社的にも、プラス効果のほうが多いと思うんです。」

役員「いいかもな。どうだい?営業部。これは、排他的利己型の悪しきセクショナリズムなんかじゃないぞ。“価値共創型”の提案だ。2部署の共同でやってみようじゃないか。」

 

と、このように、部署ごとの主張の是非を、見きわめやすくなるのです。

 

他にも、『マネジメント』という単語や『リーダー』という単語も、ちょっと危ないですね。次回は引き続いて、そこをテーマにお話ししたいと思います。

 

(次回へ続く)


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【ハッテンボール・グループ 代表取締役 伊藤英紀】
企業表現コンサル/コピーライター 1961年生 広告学校と大学をダブルスクール。㈱リクルートで、バイトなのに制作チーフを務めたのち、同社契約コピーライターに。1990年 前身 伊藤英紀事務所を創業。※元ワイキューブ取締役
 

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